中國, 韓.中關係

中国富豪の夢砕くカナダの移民政策変更

이강기 2015. 10. 18. 11:05

中国富豪の夢砕くカナダの移民政策変更

 

 

 


 

 

弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)  早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

中国メディアは何を報じているか

 

中国の富裕層が大挙して海外に移民している。正確に言えば、金持ちの一族が海外で不動産購入や投資を通じて永住権を取得している。こうした富裕層には当然、中国政府高官も含まれる。贈収賄で貯めた財産を海外に貯金したり、不動産を買い漁るのだ。

 

 ただこうした状況はそろそろ転換期にさしかかっているといえそうだ。国内での「倹約令」など決まりが厳しくなり、綱紀粛正の徹底や家族の海外移住状況の報告義務化で移民が難しくなっているためだ。

なぜ中国人は金持ちであるほど移民したがるのか

 しかし、中国の金持ちにとって海外移住が難しくなりつつあるのは、中国国内の理由からだけではなさそうだ。移民受入国の事情もある。移民大国のカナダはこれまでの移民政策を変更しようとしている。そこでここではカナダの移民政策変更が中国富豪たちの移民に与える影響についての記事を紹介したい。

 

 『鳳凰衛視』テレビ局のサイト記事「中国の富豪4兆の資産を海外に隠す カナダは投資移民を廃止」と北京市の共産主義青年団の機関紙『北京青年報』の「カナダが移民政策取り消しについて回答:移民はカナダに貢献せず」である。

 

* * *

 

記事(1)【2014年2月15日『鳳凰衛視』ネット(抄訳)】

 

 カナダは2月12日に現在の移民政策を廃止することを公表した。この決定で5万人近くの中国富豪の移民する夢が砕かれた形になり、各界からの注目を浴びている。

 

 2013年末に胡潤百富(中国富豪ランキング:筆者)が公表した調査結果によると、2013年に移民した、あるいは移民を申請している富豪は合計で2012年よりも6.7ポイント増加し、64%に上ったという。富豪による富の流出(中国からの:筆者)は驚くべきものだ。ボストンコンサルティンググループの出したデータでは約4500億ドルに上り、同社によると中国の富豪による海外投資額は今後3年で倍増するとみられている。

 

 ロンドンのコンサルティング会社ウェルス・インサイト社によると、中国の富豪は現在約6580億ドル(65兆円超:筆者)の資産を海外に蓄財しており、これは4兆796億元相当で、中国の年間の財政収入の30%超に当たる額だという。なぜ中国人は金持ちであればあるほど移民したがるのだろうか。

 

中国の富裕層が海外にこぞって押しかけることで富と人材の二つの面で深刻な流出が起きている。中国では富の流出阻止が声高に言われるようになっており、2014年1月1日から中国では国民に海外資産の報告が求められるようになったが、こうした政策が富裕層の移民にどのような影響があるかについては引き続き見ていく必要があるだろう。

経済発展への貢献が比較的小さかった

記事(2)【2014年2月16日『北京青年報』ネット(抄訳)】

 

 カナダ政府が行ってきた「28年間実施し、13万人の移民に青信号を照らし、富裕層に最も歓迎されてきた」カナダの移民計画が終わりを告げることが明らかにされた。カナダ移民局責任者のソニア・ルサージュ女史に聞いた。

 

 「投資移民計画の廃止」という言い方は、カナダ政府が先日出した「2014年経済行動計画」において言及されたもので、カナダ政府は連邦投資移民計画と連邦企業家移民計画を終了させ、新しい試験計画に道を開き、カナダの労働市場と経済的需給を満たすことを目指している。

 

 まだ最終的な決定は下されていないが、カナダ政府では立法措置を通して投資移民申請を終わらせることにしており、すでに申請されたものは申請費を返却するという。具体的詳細は数カ月以内に公表される予定だ。

 

 目下、投資移民計画が受理された申請者は6万5000人を超えているが、もしこの項目が廃止されると、差し止められた申請を処理(申請手数料の払い戻し等を指すと見られる:筆者)するには6年かかると見込まれる。

 投資移民計画廃止に対して香港「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙は中国からの富裕層の申請がカナダの投資移民プロジェクトを崩壊させたとしている。そしてカナダの資料では1月8日までに香港から提出されて差し止められた移民証は5万3500部に上り、うち99%は中国大陸からだという。

 

 ルサージュ女史によると、投資移民プロジェクトを「崩壊」させたのは申請そのものではなく、移民がカナダ社会に社会的貢献をしていないことだという。「80万ドルの無利子借款によってカナダ経済の発展が図られたことを除き投資移民プロジェクトによる経済発展への貢献は比較的小さかった」、そして「彼らがカナダで稼ぐ収入は少なく、納税額もとても小さかった」のだ。投資移民が中長期的にカナダに留まる可能性は低く、他の移民よりも通常、言語レベルが低いことも判明している。

 

移民の減少が与える影響は?

 かつて外国人は少なくとも160万カナダドル(現在1カナダドルは約92円:筆者)の資産を持ち、5年間でカナダ政府に対して80万ドル分の無利子ローンを提供すれば永住権が得られることになっていた。過去7年の間にブリティッシュ・コロンビア州政府はこの投資移民から得た4億ドル余りの無利子ローンを社会サービスに投下し、2億6000万ドルを病院や学校施設の改修につぎ込んだ。これによって2500人分の雇用も生まれた。

 

 5年後には政府はローンを返済する必要があるが、毎年新移民がもたらす資金は、社会全体に富をもたらした。しかし、移民計画の中止によって州政府の投資計画に影響を与え、プロジェクトによってはキャンセルを余儀なくされ、地元経済に一定の影響を与えるであろう。

 

 またある不動産業者はバンクーバーのような移民が多い都市で移民の減少は当地の不動産価格の下落を引き起こし、建築、鋼材、セメント業界にも影響を与えるだろうと憂慮している。

 

* * *

【解説】

 中国の富豪たちが大挙して海外に押し寄せ、その国の永住権を獲得しようとするのは奇異である。中国は「改革開放」政策に舵を切って年成長率が10%を超える急成長を遂げ、日本を抜いて世界第2位の経済大国となり、「G2」(アメリカと中国の2超大国)といわれるまでになった。習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」、「中国の夢」というスローガンを掲げ、成長の行方は順風満帆はずではなかったか。

 

 ところが鄧小平が「富める者たちから富め」と金儲けを認め、そうした政策に則って成功した当の富豪たちは富を手にしたとたんにこぞって海外移住を始めている。「中国の夢」とは金持ちになって海外に移住することなのか。

話題になった薄熙来の海外豪邸

 高官たちが世界各地で高級不動産を買い漁り、その豪邸が華僑系ニュースで大々的に取り上げられるのは珍しいことではなくなった。汚職に手を染めた高官たちが中国国内で金儲けに精を出し、家族を海外に移住させて中国国内から仕送りをするという「裸官」という言葉も出現した。

 

汚職高官の代表格として薄熙来(元重慶市党委員会書記)が挙げられるが、彼が逮捕されてから、海外で購入したイギリスやフランスの豪邸が暴露され、その豪邸の贅沢さに多くの人が度肝を抜かれた。

 

 カナダに限らず、オーストラリアやアメリカに不動産を持つとされる高官もいるし、現役の指導者、引退した指導者たちやその家族も海外での不動産所有の噂が絶えない。中国富豪の海外移住と高官の汚職は切っても切り離せない表裏一体の関係なのだ。

 

 良くも悪くも中国の急成長は、移民先でも経済に大きな影響を及ぼすまでになっているのは記事のとおりである。カナダでは不動産価格の高騰を引き起こし、バンクーバーやトロント等の都市で住宅価格は過熱気味でバブルの様相さえ呈している。

新たな移民先として注目を浴びるカリブ海諸国

 しかし、記事で紹介したようにカナダは投資移民制度の廃止を検討し始め、現在申請済み部分を棚上げにしている。カナダやアメリカなど欧米の移民の門戸は閉じられつつあるようだ。こうした中で代わりに一躍注目を浴びるようになったのがカリブ海諸国だ。昨年、習近平国家主席が訪問したカリブ海の小国トリニダード・トバゴもそのうちの一つだ。

 

 移民先のカリブ海の国として注目を集めるのがセントクリストファー・ネイビスである。2012年に中国からの移民はたった20人だったがこの数年で数倍になったという。人口5万2000人超しかない小国が移民の選択先になったのは、国籍取得の条件が緩く、海外収入の課税もなく、ここからステップアップで別の国に移民も可能だからだという。ある弁護士によれば多くの企業家の中には中国政府の制限をかいくぐり、香港で上場し資金集めをするという目的を持つものもいるという。

 

 このようなビジネス目的でどこの国でもいいから利便性を追求して移民する様は日本人にはなじみにくい。利便性を追求し、ある国の永住権取得を目指し、駄目なら別の国というような刹那的生き方はどうも受け入れ難い。

 もし「中国の夢」実現を本気で目指すなら、そのような刹那的に移住するのではなく、国に止まって政治の改革推進を後押しし、環境保全を進めて大気汚染を改善し、貧富の格差を是正して多くの人が発展の恩恵を享受できるようにすべきなのだ。富裕層が国から逃げ出すような社会が理想的である訳がない。

 

 毛沢東の功績を賛美したばかりの習近平政権だが、富を手にした「紅二代」たちが大挙して海外に移民しようとする様を、もし命を懸けて国を作った「革命世代」が見たらどう思うだろうか。「中国の夢」、「中華民族の偉大な復興」と大言壮語に浮かれず、自分の生まれ育った土地、国で地道に持続可能な発展を目指すことこそが真の「偉大な復興」であろう。