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米THAADミサイルの韓国配備-中国の懸念と韓国の苦悩

이강기 2015. 10. 31. 17:48

米THAADミサイルの韓国配備-中国の懸念と韓国の苦悩

 

 

 


 

 

韓国海軍退役大佐で韓国海洋戦略研究所上席研究員の尹碩俊(ユン・スクジュン)が、Diplomat誌ウェブサイトに2月20日付で掲載された論説において、THAAD(終末段階高々度地域防衛)ミサイルの韓国配備問題に対する中国の懸念は当てはまらず、THAADは米軍が運用するものであるから、懸念は韓国ではなく直接米国に言うべきである、と主張しています。

 

 すなわち、中国は、米国のTHAADミサイルの韓国配備問題につき、韓国に対して強い圧力をかけている。

 中国は、この問題は中国に対する「挑発」とみる。THAAD配備により韓国は米主導のミサイル防衛(BMD)システムの一部に組み込まれる。他方、韓国が独自に開発中のミサイル防衛システム(KAMD)は、米国のミサイル防衛網に統合されるものではないので、中国に敵対する性格は小さい。

 

 中国が抱く恐怖は正当か。中国の軍事関係者は、THAADが北朝鮮のミサイル防衛だけではなく、米国のアジア・リバランス政策の軍事戦略になっていると警戒している。中国の最大の懸念は、アジア太平洋総合統合ミサイル防衛システムが中国国防空域に浸透し、中国の防空力を阻害することである。中国指導部は、THAADとイージス・システムの日本、韓国での配備運用は、短中距離ミサイルで米国の前方展開基地を叩く、中国のA2/AD戦略を無効化し得ると、懸念している。

 

 しかし、韓国に配備されたとしても、THAADは在韓米軍を守るために米軍が運用するシステムであるから、中国が考えるような「ゲームチェンジャー」ではない。中国は、懸念を持つのであれば、韓国ではなく米国に直接言うべきである。

 

 さらに、中国は、韓国が、中朝関係が悪化する中、中国の核心的な戦略パートナーであることを忘れてはならない。韓国には中国挑発の意図はなく、中国の立場を理解している。

 

 中国は、THAADは北朝鮮の脅威に対処するものだとの米国の説明を受け入れるべきである。中国は、韓国には米国のBMDシステムに統合される意思はないことを認めるべきである。中国は弾道ミサイル能力を向上させるであろうから、THAADが韓国に配備されても中国は防衛力を維持し得る。

 

韓国は、中国の国防戦略と米のアジア・リバランス政策の間の楔を成す。在韓米軍は3万人に満たない。中国は、韓国に圧力をかけることを慎むべきである。韓国には戦略的独立性を許しつつ、韓国と北朝鮮の間でヘッジ政策をとることが、中国のより大きな利益になる、と述べています。

 

出典:Sukjoon Yoon,‘Are China’s THAAD Fears Justified?’(Diplomat, February 20, 2015)
http://thediplomat.com/2015/02/are-chinas-thaad-fears-justified/

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 THAAD配備問題は、韓国で大きな問題になっています。米中間で苦悩している韓国の元軍人のこの記事は、中国の懸念と韓国の苦悩を理解する上で、興味深く、有益です。著者は、THAADの韓国配備は中国が考えるような「ゲームチェンジャー」ではなく、文句があれば、ワシントンと談判すべきだ、「中国の核心的戦略パートナー」である韓国に圧力をかけないで欲しい、と懇願します。今日の韓国においては、中国の国力増大を背景に、中国と米・日の間でうまく均衡をとって行こうとする所謂バランサー政策的な考えが強いので、論説は、今日の韓国のムードを表していると言えます。しかし、国際政治の厳しい現実は、韓国に明確な選択を迫っています。

 

 少なくとも安全保障に関する限り、中国の戦略は、自らの軍事力を強化し、同時に、日米韓の協力体制を出来るだけ中立化することにあります。その観点から見れば、中国にとって当然の政策は、韓国との関係を緊密にしていくことでしょう。尹も自ら韓国は米中の間の「楔」だと述べています。その意味で、中国の外交戦略の中で、韓国は重要な優先事項になっていると思われます。昨年7月には習近平が自ら訪韓するなど対韓重視外交を展開しています。同時に、アジア・インフラ投資銀行への参加で韓国に強い圧力を掛け、今THAAD問題で強い圧力をかけています。

 

 韓国は、大変気を使いながら、対日、対米関係に当たっています。勿論、韓国にとって、今や貿易の4分の1が対中貿易となっていることや、対日・対米均衡効果が期待できることにメリットを見出していることは容易に理解できます。しかし、今、韓国外交は対中外交のスタンスの取り方という基本問題につき正念場にあります。安保と経済は違う次元の問題です。

 

 THAAD配備問題は、米韓関係にも影を落としています。米側は苛立ちを強めているでしょう。今日、米韓関係は、THAADの配備問題の他、戦時作戦統制権の韓国移譲問題(2015年12月移譲予定を昨年再度延期、2020年代半ばに移譲することになっている)、基地移設問題、米韓原子力協定改定問題など種々の重要課題を抱えています。しかし、何よりも注視されているのは、韓国の対中国基本姿勢という構造的問題です。