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 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は、高度経済成長を成し遂げつつも側近に暗殺された朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の娘だ。「悲劇の主人公」「韓国と結婚した女性」などと呼ばれてきた。任期途中で辞意表明する事態に至った背景には、特異な体験や環境が大きく影響している。

 今回、朴氏が最も批判を浴びたのは、「不通(意思疎通の不在)」といわれる特殊な政治手法だった。

 朴氏は、政策遂行に必要な側近たちとの対面すら避けた。ある国家情報院長経験者は在職中、一度も単独で面会できなかった。政権のナンバー2とされる秘書室長の経験者も、単独で面会したのはわずか2回だった。大統領府で働く人々は、主に書類と携帯電話で朴氏に報告した。

 代わりにそばに置いたのが、長年の支援者チェ・スンシル被告だった。

 なぜ、「不通政治」に陥ったのか。元閣僚の一人は「原点は1974年8月だった」と語る。母親の陸英修(ユクヨンス)氏が、父親の朴元大統領を狙った狙撃犯の流れ弾に当たり、死亡した。22歳だった朴氏は深く悲しみ、父のためにファーストレディーを務めた。