韓国大統領選挙の主要候補者が出そろった。今月中旬の告示を経て、5月9日の投開票に向けた選挙戦が本格化する。誰が当選するかによって日韓関係を含めた国政のかじ取りが大きく振れる可能性があるだけに、大統領選の行方を注視していく必要がある。
今回の大統領選は、保守系の朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免を受けて実施される。異例の短期決戦のなか、優勢とされるのはやはり革新系の野党候補だ。
とくに支持率でトップを独走する最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は党内の予備選でも圧勝し、公認候補に選出された。その文氏を中道系の野党第2党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)前共同代表が追う展開となっている。
半面、保守系は「自由韓国党」(旧セヌリ党)の公認候補の洪準杓(ホン・ジュンピョ)慶尚南道知事を始め、いずれも人気が低迷する。選挙戦は安氏が保守・中道層の支持をどこまで取り込み、文氏との事実上の一騎打ちに持ち込めるかが焦点となりそうだ。
韓国は前大統領の醜聞で政治混乱を極め、保守と革新勢力による社会の亀裂も深刻になっている。次期大統領は政財界の癒着を含めた政治不信の解消、社会の融和に取り組む重責を負う。
外交・安全保障面では軍事挑発を重ねる北朝鮮への対応が最大の課題となる。北朝鮮は昨日も弾道ミサイルを発射した。なにより重要なのは日米韓の連携だろう。
その点で気がかりなのは、とくに文氏が北朝鮮に融和的な姿勢を示し、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備に後ろ向きなことだ。
慰安婦問題をめぐる日韓合意には文、安両氏とも否定的だが、国際的な約束をほごにするようでは信頼関係は築けない。合意の履行を未来志向の関係を築く一歩と位置づけるべきだ。各候補には現実を直視し、真の国益を踏まえた冷静な政策論争を求めたい。
日本政府は、釜山の日本総領事館前に少女像が設置されたことへの対抗措置として一時帰国させていた駐韓大使らを帰任させた。
少女像撤去の見通しは全く立っていないが、韓国の現政権はすでに統率能力を失っている。次期政権との間で仕切り直しをするしかあるまい。次期政権とのパイプづくりを進めるうえで、駐韓大使の帰任はやむを得ぬ選択だろう。