ロシアはどこへ行く 週のはじめに考える
朝日新聞 社說. 2017. 11. 5
ロシア革命から七日で百年。史上初の社会主義国家・ソ連はとうの昔についえましたが、ロシアの復権は目覚ましい。大国はどこへ行くのでしょうか。
ミネラルウオーターと腐りかけたジャガ芋-。ソ連末期のモスクワで暮らしていた時に立ち寄った食料品店は空の陳列棚が並び、売られていたのはこれだけでした。
国民生活の犠牲の上に立っていた軍事偏重のソ連は、慢性的なモノ不足でした。たまに入荷した商品を求めて店の前には長い行列ができました。
ユートピアのはずが…
ソ連時代は、見つけたらその機会を逃さずに買うのが鉄則。不要な物を買っても知人と物々交換すればいい。人々は買い物袋を常に携帯していました。
お目当ての商品を見つけたとしても、手に入れるまでが大変でした。まず、店員に頼んで品物を見せてもらい、買う意思を告げて品物を取り置いてもらう。次は、これも長蛇の列ができたレジに並んで代金を支払い、もらった伝票を売り場の店員に見せて品物を受け取る-という手順でした。
非効率極まりないシステムですが、店員には現金を扱わせずレジ係だけに限ったのは、人間不信によるものでしょう。
働いても働かなくても給料は同じという悪平等のせいで、店員にやる気はない。客が呼んでも聞こえないふりをして、ふてくされた顔でたばこを吸っている光景をよく目にしました。
共働きが普通のソ連社会にあって、買い物は重い負担でしかありませんでした。
ただし、よくしたもので、同僚に仕事を押し付けられる気の弱い店員が一人ぐらいはいて、たばこを吹かす同僚の傍らでコマネズミのように働いていました。ソ連社会はそんな人たちのおかげで回っていたのでしょう。
革命は不可避だったか
一八六一年の農奴解放後も、国民の八割を占める農民の大半が小作人や都市労働者として苦しい生活を送っていました。彼らがユートピアを求めて参画した革命。その到達点にはこんな荒廃した光景が広がっていました。
「米国に追いつけ、追い越せ」
スターリン後の雪解けを主導した指導者のフルシチョフがハッパをかけた時、「追い越したらパンツをはいていないのがバレてしまう」というモノ不足をネタにしたアネクドート(小噺(こばなし))がはやりました。
ソ連はついに米国を凌駕(りょうが)することなく、逆に自分の重みに耐えかねて崩壊。平等、公正な国造りの理想を追った革命から七十四年が過ぎた一九九一年末のことです。
ロシアの世論調査機関「レバダセンター」が三月に行った調査では、48%がロシア革命を肯定的に評価し、否定的な評価の31%を上回りました。革命は「避けられなかった」と見なす人は48%。逆に「避けられた」は32%でした。
プーチン大統領も最近、ロシア革命について「その結果は否定的な面と肯定的な面が絡み合っている」と述べました。
同時に「(ロシアは)革命を経ずに発展することはできなかったのか。国家崩壊や数百万の人命を犠牲にすることなく着実に進化を遂げる道はなかったのか」と語り、複雑な心境をのぞかせました。
隣国のウクライナや中東のシリアに軍事介入したり、アフガニスタンでは旧敵だった反政府武装勢力のタリバンの支援に乗り出したり、ロシアのこわもてぶりが目立ちます。
そこには、ソ連崩壊でなめた屈辱をばねに大国として復権した今、影響力を行使しようという意思が見て取れます。
ですが、ロシアの実情を冷静に見れば、経済規模は日本の四分の一ほどで、石油・天然ガスの資源頼みの経済構造は相変わらず。欧米の経済制裁もあって、7%を超えたひところの高成長は望めそうもありません。
国連の推計では、ロシアの人口は二〇五〇年には今より一千万人以上減少して約一億三千二百万人になります。ロシアの将来は決してバラ色ではないのです。
そんな厳しさを見据えて、世界の中で自分の居場所を確保しようとしているのが、今のロシア。プーチン氏はそれを戦略的に進めています。
ただ、プーチン氏を頂点としてその取り巻きへの権力集中は十七年も続き、社会に閉塞(へいそく)感を呼び込みました。これに反発する若者の抑え込みに政権は躍起です。
プーチン体制の閉塞感
プーチン体制が社会の活力をそいでは、石油依存からの脱却という構造改革が実現できるか心もとない。プーチン氏は返り血覚悟で国家改造に踏み出すべきです。さもないとロシアは停滞期にはまり込むでしょう。
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