【産経抄】
『苦海浄土』は「戦後日本文学第一の傑作」
熊本県水俣市に住む石牟礼(いしむれ)道子さんは、文学好きの主婦だった。水俣病と関わるきっかけとなったのは、小学生の息子が患った結核である。入院していた市立病院の結核病棟の隣には、「奇病」の患者のための病棟が建てられた。うめき声が聞こえ、壁には、患者がつけたとみられる爪痕が残されていた。
▼当時すでに病気は公式確認されていながら、原因となる有機水銀の流出は続いていた。石牟礼さんは、お見舞いのかたちで、患者を訪ねるようになった。「うちは、こげん体になってしもうてから、いっそうじいちゃん(夫のこと)がもぞか(いとしい)とばい」。
▼漁師の夫とともに海に出ていた女性患者の聞き書きは「奇病」と題して、昭和35年頃まとめられた。後に、多くの人々の目を水俣病に向けさせる、石牟礼さんの代表作『苦海浄土(くがいじょうど)』の一部となる。
▼作家の石牟礼さんが、90歳で亡くなった。小学校に上がって、文字を覚え世界が一挙に広がった、と自伝で振り返っている。一番好きなのは、綴(つづ)り方の時間だった。ただ、書きたいことがありすぎて時間内に書き終わらない。「遅筆」は作家になっても変わらなかった。石牟礼さんは、水俣病患者の救済活動に奔走しつつ、『苦海浄土』を書き続けた。3部作が完結したのは平成16年、初稿から40年以上が経過している。
▼「道子の書いた品物は、水俣の目ではなか、日本の目から見れば、どういう物でござすか」。小学4年までしか通わなかった石牟礼さんの父親は、編集者に娘の作品の出来栄えを尋ねたという。
▼作家の池澤夏樹さんは、自身が編纂(へんさん)した「世界文学全集」に唯一の日本の作品として『苦海浄土』を収録した。「戦後日本文学第一の傑作」の太鼓判を押す。
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