科學, 技術

小惑星から大量のプラチナ(Platinum)採掘、夢は実現するか

이강기 2018. 10. 26. 21:25

小惑星から大量のプラチナ(Platinum)採掘、夢は実現するか

あまりにも夢が大きすぎるレアメタルのスペースマイニング


渡邊 光太郎 
JB Press
2018.10.26(金)

写真1 金属から成るM型小惑星プシケの想像図(出所:NASAウエブサイト)


小惑星イトカワの破片を地球に持ち帰った「はやぶさ」の帰還成功から8年。今年は、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに送り込まれ、観測装置の投下に成功した。

 本体の着陸は延期になったものの、現在のところ、順調に進んでいる。


 太陽系の形成について、多くの情報を与えてくれる可能性のあるリュウグウにおいて、はやぶさが着実に行程をこなしていることは、大きな科学的成果を期待させる。


 かつて、日本の航空宇宙産業にいた筆者としても、日本がこのような探査計画を進めていることは非常にうれしい。


 科学的な成果は置いておいて、小惑星はレアメタルの宝庫であるので、資源採掘の対象にするスペースマイニングという構想がある。はやぶさ計画はその一歩との声もある。


 スペースマイニングは、小惑星のカケラを地球に持ち帰る「はやぶさ計画」を、産業的に利用できるほど大規模にやろうというものである。


 なお、水の採掘を目指すというものもあり、既に設立されているスペースマイニングの企業は水を目指しているらしい。こちらについては別の機会に譲る。


 スペースマイニングが目指すレアメタルの代表はプラチナらしい。プラチナは宝飾・資産用の貴金属であるだけでなく、自動車産業などが利用する触媒の材料にも用いられる大変重要な金属である。


 その一方、プラチナは希少性が高く高価である。また、南アフリカとロシアという少し安心できない国に偏在しているため、常に供給安定性に不安がつきまとう。


 宇宙のプラチナが手には入ればとてもありがたい話である。果たしてそんなことができるのだろうか。


なぜプラチナのスペースマイニングなのか

 宇宙のプラチナが注目される理由は、地球の石より宇宙の石の方がプラチナなどの白金族元素の含有率が濃いからである。


 大地のプラチナの平均含有率は0.0005ppm。2000トンに1グラムほどである。


 一方、最も多く存在する普通の隕石(普通コンドライト)には、プラチナが1ppm程度含まれる。隕石1トンに1グラムほどとなる。


 さらに、隕鉄とよばれる鉄質隕石では、7~10ppm、1トンあたり7~10グラムにも達するプラチナが含まれる。

写真2 ウィラメット隕石 鉄質隕石(隕鉄)であり、成分は鉄とニッケル。地球の岩石ではppbにも達しない白金族元素を、ppm単位で含んでいる。

 

隕鉄のプラチナ品位は、南アフリカやロシアの地球上で最良のプラチナ鉱山で採掘される鉱石に匹敵する。


 余談だが、隕石に含まれる白金族元素は、恐竜絶滅が隕石によることの証拠とされた。


 恐竜が絶滅した白亜紀末と古第三紀の地層の間の地層には、隕石に含まれていた白金族元素イリジウムが他の地層よりも豊富に含まれる(とはいえ、200トンに1グラムとかいう濃度)。


 ここで、地球も元々は隕石が集まってできたのではないかという疑問を感じられる方もいよう。


 それはそのとおりで、はるか昔は地球にも宇宙と同レベルのプラチナがあった。混乱させて申し訳ないが、地球全体で見れば現在でもプラチナの含有率は宇宙と同じである。


 しかし、現実的に採掘が可能な地表に近い部分では、先ほど紹介したとおり0.0005ppm、2000トンに1グラムしかプラチナは含まれない。


その理由は、地球ができていく過程でプラチナが地表から地球内部に沈んでいってしまったからである。


 地球の構造は、中心部に鉄から成るコアがあり、周囲を岩石から成るマントルが囲い、その上をマントルとは若干組成の違う岩石から成る地殻が囲んだものである。


 できたての地球は、このような構造になっておらず、地表も宇宙の石の平均の組成と近いものだった。


 しかし、ドロドロに溶けた初期の地球の内部で、徐々に比重の大きい鉄を中心とする金属が中心部に沈みコアになった。比重の軽い岩石質は表面近くに浮かび上がり、マントルと地殻になった。


 こうした過程で、プラチナは地球化学的挙動が鉄に近いため、コアの方に取り込まれていった。これは、成り立ちが地球と似た、水星、金星、火星でも事情は同じである。


 コアは地面からは数千キロ先である一方、人間が掘った一番深い穴は10キロ程度に過ぎない。


 仮に、コアに達することができれば、高濃度のプラチナを含む金属が採り放題なのだが、現時点の技術では不可能である。


 現状、深さ10キロ程度の穴しか掘れていないのに対し、はやぶさは小惑星に到達している。地球のコアより小惑星の方が到達しやすいのである。


 幸い、宇宙には惑星のコアのようなものがむき出しで存在する。小さいものが隕鉄であり、大きいものがM型小惑星である。


 太陽系ができた頃、一定以上のサイズの原始惑星でも、地球で起こったようなコアと地殻・マントルの分化が起こっていた。


当然、原始惑星でもプラチナはコアに濃縮していく。当時の太陽系は、多くの原始惑星や隕石が衝突を繰り返し、原始惑星が破壊されることも多かった。


 こうして破壊された原始惑星のコアの部分の破片が、金属質のM型小惑星になった。隕鉄も原始惑星のコアの部分の破片の極小さいものが、地球に降ってきたものである。


 NASA(米航空宇宙局)がM型小惑星プシケに探査機を送り込む予定であり、2022年打ち上げ、2026年到達予定である。近い将来、その姿は明らかになっていくだろう。


 このM型小惑星は隕鉄のような組成であるので、地球の表面の2000倍の含有率でプラチナを含んでいるはずである。


 この2000倍に濃縮されているはずのプラチナをM型小惑星で採掘するというのが、プラチナのスペースマイニングの構想である。


 なお、はやぶさ1が破片を持ち帰ったイトカワは普通の隕石の巨大版であるS型小惑星、はやぶさ2が探査しているリュウグウは炭素や含水鉱物に富む岩石からなるC型小惑星である。双方ともプラチナの採掘の対象にはならない。


では実際に可能なのか

 M型小惑星でプラチナを採掘するような、スペースマイニングを成功させるには、月より遠い場所にあるプラチナの採掘に適した小惑星を見つけ、プラチナを回収し、何らかの形で地球まで運んでくる必要がある。


 金属質のM型小惑星は、隕鉄が巨大化したものすると、1トンあたり7~10グラムのプラチナが含まれることになる。


 M型小惑星や隕鉄は、だいたい6~15%程度のニッケルを含む鉄であり、それそのものが有用金属の塊である。


 実際、人類が最初に利用した鉄は隕鉄であったとも聞く(もっとも希少性から現在は産業的な資源としては用いられない)。M型小惑星は、丸ごと金属資源となり得る存在である。


問題はそのようなものを、地球に持ってくることができるかということである。


 宇宙にまで回収に行きたくなるような量のプラチナを含む小惑星の重量は、膨大なものとなる。


 はやぶさ2の費用は約300億円。2008年10月現在、1グラムのプラチナはだいたい3000円程度。


 300億円分のプラチナは10トンになる。M型小惑星が1トンあたり10グラムのプラチナを含むとすると、10トンのプラチナを得るには100万トンの質量のM型小惑星を見つけなければならない。


 100万トンの質量のものを地球に持ち帰ることは不可能である。それどころか、その100分の1の量でも難しい。


 それを示す実例がある。2013年、ロシアにチェリャビンスク隕石が落下した。落下時、隕石が燃えながら落下する様子とともに、隕石の大気圏突入により発生した衝撃波が地上に損害をもたらし、建物を破壊したことが報道された。


 チェリャビンスク隕石は空中で爆発し、粉々になって降り注いだが、もともとは1万トンあったと推定されている。


 その1万トンの隕石が大気圏に突入し、落下してきた時に発生させたエネルギーは、TNT火薬換算で約500キロトンあったという。


 小型水爆並みの破壊力であり、広島型原爆25発分の威力である。


 はるか上空で爆発したのだが、周囲では建物を破壊し、ガラスを割り、多数のけが人が出るような破壊力が地上にまで及んだ。


隕石落下時、1万トンという重量のあるものが、地球との膨大な速度差を持ち、さらに地球に近づくと重力で加速され、秒速数十キロのスピードになる。


 そうすると、核爆弾の破壊力に匹敵する運動エネルギーを持つことになる。そんなものをどうやって減速し、地球に軟着陸させるのか。


 1万トンの隕石ですら核爆弾なみのエネルギーでなければ受け止められないのだ。100万トンものM型小惑星を現在の技術で地球に持ってくることなどということは、全くあり得ない。


 では、金属質の小惑星から宇宙で高価なプラチナだけを取り出すことができるだろうか。


 残念ながら、地球上の岩石の2万倍の濃さでプラチナが含まれているとはいえ、1トンのM型小惑星にプラチナは7~10グラムしか含まれない。


 M型小惑星からプラチナを取り出し、プラチナのみ地球に持ち帰るのであれば、金属の精錬工場のようなものを宇宙に作る必要がある。


 リュウグウやイトカワといった地球近傍小惑星でも月より遠く、小惑星の大多数が存在するのは火星と木星の間である。


 月よりも遠い場所、場合によっては火星より遠い場所に何万トンもの金属を処理できる宇宙工場を作るのだ。


 火星の有人探査すら実現していない現状、そんなのSFの世界でしかない。そうしたことが実現できるのは、22世紀か、23世紀か、もっと先であろうか。


 恐らく、スペースマイニングという発想は、“宇宙は地球と比べプラチナが豊富である”ということを、“宇宙にプラチナの塊が存在する”と短絡して思いついたのだろう。



プラチナが豊富に存在するといっても、プラチナの塊が宇宙に浮いているわけではない。プラチナがM型小惑星にppmレベルで含まれているに過ぎないという事実は、スペースマイニング構想を決定的に破綻させるのである。


 スペースマイニングは、小惑星帯にどのようにプラチナが存在するかを踏まえたうえで、プラチナを地球に持ってくることを考えると、技術的にとてもできそうにはない夢物語となる。


仮にプラチナが宇宙に浮いていてもやっぱりムリ

 さらに、経済性を考えると、仮に宇宙にプラチナの塊が浮かんでいたとしても厳しいのではないか。


 地球上ですら、大量に安価なものを輸送するものに航空輸送は向かない。宇宙間輸送になれば、地球上の航空輸送とは比べものにならないほどのエネルギーを要する。


 ロケットを見れば、宇宙で仕事をする衛星は先端のほんの限られた部分で、大半は燃料タンクである。これは、宇宙で何かを飛ばすのには大きなエネルギーを要することを示す。


 宇宙で採掘したものを地球に持ち帰って成立するには、よっぽど高価で重量が小さいものでないと成り立たない。


 はやぶさ2を打ち上げたH2Aロケットの打ち上げコストはだいたい100億円、はやぶさ2の予算は300億円近い。100億円のプラチナはだいたい3トン、300億円では10トン。


 しかし、小惑星帯より近いリュウグウに送り込めたはやぶさ2の重量は600キロ、回収してくるリュウグウのサンプルは数グラムである。


 米国でははやぶさ2よりも大きな予算規模で、小惑星サンプル回収を目指すオシリスレックス計画を進める。


 こちらは900億円かけ、最大2キログラムのサンプルを回収するそうだ(もっとも2キログラムは最大値で、NASAの資料では60グラムから2キログラムとなっている)。


もちろん、はやぶさ2は科学的観測を目的とし、限界まで小惑星のサンプルを持ってくる仕様とはなっていない。オシリスレックスも資源回収を目的としたものではない。


 資源回収を目的に回収量を最大にすれば、多少は、回収見込みが増えるだろう。


 しかし、かかる費用と回収できるサンプルの量が、プラチナを回収した際にペイする量と全く合っていない。


 数十パーセントコストダウンをすれば成り立つという世界ではない。回収量あたりコストを見る限り、最低でも何十万分の1というあり得ないコストダウンが必要になる。


 小惑星からプラチナを持ち帰りペイすることなど到底不可能であることは明らかである。

月よりも遠い場所まで採掘に行ってもペイするような高価な金属など、そもそも存在しないのが現実だろう。


スペースマイニング実現のための未来技術

 スペースマイニングが実現しそうにない根本原因は、現在のロケットがあまりに低効率・高コストだからである。


 化学反応を利用したロケットは、物理的に大量になる燃料が必要である。この大量の燃料は燃料を運ぶための燃料と、燃料を運ぶための大きなタンクを必要とし、コストアップの悪循環を生む。


 地球の重力圏外への飛行において、すでに化学反応を利用するロケットでは限界が見えている。


 スペースマイニングとまでいかなくても、火星やそれより遠い天体への有人探査では、より効率のよいロケットが必要とされる。これまでも、そうしたことが構想されてきた。


 中には実用化されたものもある。はやぶさ、はやぶさ2は、燃費の良いイオンロケットによる長期間の加速が可能になったことで実現した。


しかし、イオンロケットは、長期間の加速を続けることで高速に達するエンジンであり、非力である。


 NASAは有人火星探査などに用いるため、核熱推進ロケットの開発を行う。核熱推進とは、原子炉で過熱した水素を後方に噴射することで、推力を得るエンジンである。


 化学反応を利用したロケットより効率が良いが、原子炉の一次冷却材を放出するようなものなので、宇宙限定での使用となる。


 原理的には、現在の技術でもなんとかなりそうであるが、運転すると大量の放射能が放出されるものであり、開発を進めるうえでの課題は多いだろう。それでも、ひょっとしたら、生きている間に実用化を見ることができるかもしれない。


 現在、実現のメドは全くないが、さらなる強力なロケットもいくつか構想されている。核パルスロケット、星間ラムジェット、光子ロケットなどである。


 これらは、核融合エンジンや反物質(加速機で作る実験がされているし、β+崩壊をする放射性物質から出てくる陽電子も反物質である)を燃料とすることが前提となっているなど、実現性は全く見えていないものである。


 現在、存在すら予想されていない技術も含め、化学反応を利用するロケットを圧倒的にしのぐ効率のロケットが生まれれば、スペースマイニングの現実性も再検討される日も来るかもしれない。


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