ついにマティス辞任でトランプがますます暴走の懸念
「同盟国に敬意を」受け入れられなかったマティス国防長官の進言
Japan Business Press
トランプ政権発足時より国防長官としてトランプ大統領を支えてきたジェームズ・マティス国防長官が2019年2月28日をもって辞任する旨を表明した。直接的な引き金となったのは、シリアからの米軍撤退というトランプ大統領の決定だった。
マティス国防長官に引き続き、ブレット・マクガーク対IS(いわゆる「イスラム国」)グローバル連合大統領特使も2018年12月31日付での辞任を表明した。
アメリカはシリアにおける多国籍軍の対IS軍事作戦を主導してきた。その作戦からの米軍撤退に関しては、マティス国防長官やマクガーク大統領特使だけでなく、多くの大統領顧問たちや軍首脳たち、さらには連邦議会(共和党、民主党双方)からも強い批判が湧き上がっている。
また、マティス国防長官がトランプ大統領に提出した辞任に関する書簡からは、マティス元海兵隊大将と大統領の間には、シリアからの撤退という問題にとどまらず、国防政策に関する幅広い意見の相違が生じていたことが明確に読み取れる。
後任はボーイング出身のシャナハン氏
マティス氏は2カ月間程度の移行期間が必要と考え、自身の辞任を2月28日と表明した。連邦議会での公聴会や、NATOの大臣級会合などすでに予定されている重要行事、国防長官の交代に伴う米軍内部の調整がスムーズに運ぶことなどを勘案した結果である。
しかし、トランプ大統領は、マティス長官をはじめとするシリア撤退に批判する勢力への強固な姿勢を示すために(また、マティス長官が書簡に記した大統領に対する批判に対して我慢ならなかったためという感情も働いたと思われるが)、これまでマティス長官の下で国防副長官を務めてきたパトリック・シャナハン氏が2019年1月1日には国防長官代行に就任することをツイッターで表明した。
シャナハン氏は軍務の経験はない。トランプ大統領によって国防副長官に任命されるまでは、政府関係機関での経験も全くない企業エグゼクティブであった。ビジネスマンとしてはボーイング社で787ドリームライナープロジェクトなどの民間航空機部門、軍用ヘリコプター部門(オスプレイも含む)、弾道ミサイル防衛部門などの要職を歴任した。
マティス長官の下での国防副長官としては、国防総省内での非効率性の改善、とりわけ煩雑な官僚的手続きにメスを入れて兵器調達スピードの高速化を図る業務作業や、宇宙軍の創設といった組織改革などを推進していた。それらはともにトランプ大統領自身が固執しているアイデアであった。そのためシャナハン氏はホワイトハウス、とりわけトランプ大統領とペンス副大統領とは極めて親密な関係を維持している。