(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「韓国の文在寅大統領は、北朝鮮の非核化を目指す米国の取り組みを妨げており、米国の法律に違反している疑いさえある」──こんな重大な非難が、米国上院の超党派有力議員2人から表明された。文政権への不信や不満が米国議会にも満ちてきたことの例証として注目される。
米国上院外交委員会の民主党筆頭メンバーであるロバート・メネンデス議員と、共和党有力メンバーのテッド・クルーズ議員は2月11日、連名でトランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官に書簡を送った。2人はそのなかで、文在寅大統領の北朝鮮に関する最近の言動を厳しく非難し、トランプ政権として抗議することを要求していた。
この書簡の内容は、2月15日付のワシントン・ポストの報道などで明らかにされた。ワシントン・ポストの外交コラムニスト、ジョシュ・ロギン記者は、メネンデス、クルーズ両議員から直接得た情報を基に記事を執筆し、米国議会で文在寅大統領を批判する声が高まっている状況を伝えた。
「断固たる意思」を文政権に示せ
ロギン記者の記事によると、メネンデス、クルーズ両議員がポンペオ国務長官に送った書簡の骨子は以下のとおりである。
・北朝鮮が本格的な非核化に着手する前に、韓国の文在寅大統領は金正恩政権に経済的な利益を与えている。この一方的な譲歩に対して米国議会では超党派の広範な懸念が広まっている。文政権に対して圧力をかけて、この種の動きを止めさせるよう、ポンペオ国務長官に求める。
・2回目の米朝首脳会談が近づいた今、文政権が北朝鮮への圧力を弱めることは、トランプ政権が誓約した「CVID」(完全、検証可能、不可逆的な非核化)の実現を阻害し、米国政府を過去の歴代政権が冒してきた先の見えない不毛な交渉へと引き込むことになる。
・文政権は、北朝鮮領内での南北合同の工業施設の再開や、南北共同の鉄道の建設、欧州連合(EU)や他の国際的な北朝鮮に対する制裁の解除を目指す言動をとってきた。この種の動きはすべて、北朝鮮に完全な非核化を実行しないで済む動機を与え、米韓同盟を離反させることにつながる。
・北朝鮮に対する現在の経済制裁は、国連安保理の一連の決議と米国の法律に基づいて実施されている。韓国の金在寅大統領が独自の措置をとってそれらの制裁の効果を緩めることは、国連や米国の法規に違反する可能性がある。
このようにメネンデス、クルーズ両上院議員はポンペオ国務長官あての書簡で、このままだと文在寅政権はトランプ政権の「北の非核化」という最終目標の達成を阻むことになるとして、文政権に断固たる意思を示すことをトランプ政権に求めていた。
文政権に向けられるに厳しい視線
ロギン記者はワシントン・ポストの記事のなかで、文大統領が北朝鮮への融和政策を取る限り、トランプ政権が北朝鮮の完全非核化を達成することは難しくなり、金正恩政権の長年の思惑通り米韓が離反することになる、と警告していた。同時に、米国議会において、文政権に対して厳しい視線を向ける傾向がますます高まったことも指摘していた。
2回目の米朝首脳会談が近くに迫った段階で、「米国の2人の有力議員による文大統領批判」がこのように詳しく報じられたのは、文政権の北朝鮮との融和がそれだけ米国で深刻な問題とされていることの表れと言えよう。
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