5億年前の「行進」 化石発見、最古の集団行動か
【パリAFP=時事】モロッコ・ザゴラの近くの砂漠で、一列になって移動する約4億8000万年前の生物の化石がみつかった。17日に発表された研究論文は、化石が、動物の集団行動を示す最古の例になったとしている。(写真は一列に並んだ三葉虫の一種「Ampyx priscus」の化石)
英科学誌ネイチャー系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された論文によると、化石は三葉虫のもので、海底を一列縦隊でゆっくりと移動していたと考えられるという。三葉虫はすでに絶滅した生物だ。
三葉虫もすべての節足動物と同様に、体節のある体と外骨格を持っていた。節足動物門には、昆虫、ムカデ、クモ、甲殻類などが属している。
今回発見された化石は、硬貨くらいの大きさの十数匹で、みな同じ方向を向いて一列に並んでいる様子を示している。列を成す個体の間隔は、頭部からのびる2本の先細りの突起の長さだけ離れており、突起の先端が列のすぐ後ろの個体に接していた。
論文の共同執筆者で、フランス国立科学研究センターの科学者、アブデルラザク・エル・アルバニ氏は、AFPの取材に対し「これは、しっかりとまとまった集団行動を取っていたことを示す最古の例だ」とコメントした。
魚や鳥、レイヨウ類などの群れを作る動物の集団行動に関しては、生物学者らによる綿密な研究が行われているが、集団行動がいつ、どのようにして始まったかについてはほとんど明らかになっていない。
研究チームによると、今回の発見は可能性のあるシナリオを二つ示唆しているという。
一つは、Ampyx priscusの学名で知られる三葉虫の一種であるこの原始的動物が、嵐など悪天候の影響を嫌って環境間を移動していた可能性があることだ。
■高度な神経系
論文の共同執筆者で、仏西ブルターニュ大学の古生物学者のミュリエル・ビダル氏は、「イセエビも嵐が始まる時に一列縦隊で移動する」と現存する生物を例に挙げた。
「これは、嵐による乱流や水温の変化に対するストレス反応の一種かもしれない」
イセエビに加えて、これも一列縦隊で移動する毛虫(チョウやガの幼虫)なども、今回の三葉虫の遠い仲間に当たる。
もう一つのシナリオとしては、海底の整然とした行進が、例えば性的に成熟した個体が産卵場所に移動するような、季節的な繁殖行動だった可能性もあると、論文の執筆者らは示唆している。
論文の主執筆者で、仏リヨン大学の研究者のジャン・バニエ氏はAFPの取材に対し、集団行動は捕食動物に狙い撃ちされるリスクを減らす効果もあると指摘している。
また、三葉虫が鼻先を前にして一列縦隊で海底を行進する行動は、それを促していた要因が何であれ、「ある程度高度な神経系」を持つことを示していると話す。
バニエ氏は、「集団行動を示すには、個体間で合図を交わし合うのに適した神経系が必要になる」とし、「それは、動物進化の物語の非常に初期に登場した」と述べた。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2019/10/21-09:10)
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