2019年1月20日、亡くなったロッテグループの創業者で名誉会長・辛格浩(重光武夫)氏の弔問に訪れたハリー・ハリス駐韓米国大使(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)



 韓国駐在のハリー・ハリス米国大使が事実上の辞意をもらしたことがワシントンで複雑な波紋を広げている。


 ハリス氏は米海軍の軍人として太平洋軍の最高司令官までを務め、トランプ大統領の高い評価を得て、駐韓大使に任命された。だが、日本人の母を持つことを韓国や中国から再三批判されてきた。もちろん不当な批判であるが、本国の米国でも、そうした批判に賛同するような論調が出てきたのだ。


 そのハリス大使が「今年(2020年)11月以降は、たとえトランプ大統領が再選されても辞任する」という意向を周辺に述べたという。


ソウルでの勤務継続に意欲を失う?

 ハリス駐韓大使の“退任”の意向は4月上旬、ロイター通信によって報じられた。

 ハリス大使はトランプ大統領によって駐韓大使ポストに任命され、議会の承認を経て、2018年6月に正式に就任した。ソウルでの勤務はまだ1年10カ月ほどである。通常ならば任期は3年か4年、とくにトランプ大統領が再選されれば継続の在勤は当然とされてきた。


 ところがロイター通信の報道によると、ハリス大使は今年11月の大統領選挙の結果にかかわらず、11月までに辞任するという意向を側近の人たちに非公式にもらしたという。ハリス大使は韓国の同大使に対する誹謗に近い非難を不当だと感じ、ソウルでの勤務継続に意欲を失ってきた要素も大きいとされている。


 米国の外交官にとって、日本とのつながりは韓国や中国と接するうえでやはり大きな負の要因となる、ということのようである。とくに韓国では、最近の総選挙の結果、反日の勢いがさらに増すと予測され、ハリス大使叩きはさらに燃え上がることとなりかねない。


口ひげまでもが攻撃の対象に

 ハリス氏は1956年、米海軍の横須賀基地勤務の軍人を父に、日本人の女性を母に日本で生まれた。米海軍士官学校を卒業して以来、主に海軍パイロットとして軍務に就いてきた。後に太平洋艦隊司令官、太平洋軍(現在のインド太平洋軍)最高司令官などを歴任、その間に海軍大将となった。


 現役軍人としてのハリス氏は、米国では党派を問わずきわめて高い敬意を表されてきた。ところが太平洋軍司令官として議会の公聴会などで中国の軍事的な膨張への警告を発するようになると、中国政府内外から「ハリス氏が反中の姿勢をとるのは日本人の血が流れているからだ」というような民族差別丸出しの糾弾を受けるようになった。


 退役すると、トランプ大統領からオーストラリア大使に任命され、その後、韓国駐在のポストを与えられた。韓国に駐在してからは「日本人の血」を理由にさらにひどい攻撃を受けるようになる。


 昨年後半から、韓国駐留の米軍経費負担問題や、韓国政府の日本との軍事情報保護包括協定(GSOMIA)離脱の動きをめぐって、米国が韓国に激しい要求や批判をぶつけるようになった。米国大使としてのハリス氏は、当然、本国政府の意向を韓国政府に繰り返し伝えることとなった。


 しかし、その大使の言動に、韓国側の官民から感情的な反発が浴びせられた。韓国の民間の各種活動団体は、ハリス大使の言動に対して「ハリス氏の口ひげは韓国を弾圧した日本の歴代の朝鮮総督を連想させる」「ハリス氏は母親が日本人なので韓国に対して特殊な反感を持っている」といった非難を広げるようになった。国会議員までがその非難に同調した。


 こうしたハリス大使叩きは米国の報道機関によって大きく伝えられ、米韓関係での新たな摩擦の1つとなった。


 ハリス大使はこうした展開についてソウル駐在の外国記者団らに以下のような反論を述べた。


 米国の外交官にとって、日本とのつながりは韓国や中国と接するうえでやはり大きな負の要因となる、ということのようである。とくに韓国では、最近の総選挙の結果、反日の勢いがさらに増すと予測され、ハリス大使叩きはさらに燃え上がることとなりかねない。


口ひげまでもが攻撃の対象に

 ハリス氏は1956年、米海軍の横須賀基地勤務の軍人を父に、日本人の女性を母に日本で生まれた。米海軍士官学校を卒業して以来、主に海軍パイロットとして軍務に就いてきた。後に太平洋艦隊司令官、太平洋軍(現在のインド太平洋軍)最高司令官などを歴任、その間に海軍大将となった。


 現役軍人としてのハリス氏は、米国では党派を問わずきわめて高い敬意を表されてきた。ところが太平洋軍司令官として議会の公聴会などで中国の軍事的な膨張への警告を発するようになると、中国政府内外から「ハリス氏が反中の姿勢をとるのは日本人の血が流れているからだ」というような民族差別丸出しの糾弾を受けるようになった。


 退役すると、トランプ大統領からオーストラリア大使に任命され、その後、韓国駐在のポストを与えられた。韓国に駐在してからは「日本人の血」を理由にさらにひどい攻撃を受けるようになる。


 昨年後半から、韓国駐留の米軍経費負担問題や、韓国政府の日本との軍事情報保護包括協定(GSOMIA)離脱の動きをめぐって、米国が韓国に激しい要求や批判をぶつけるようになった。米国大使としてのハリス氏は、当然、本国政府の意向を韓国政府に繰り返し伝えることとなった。


 しかし、その大使の言動に、韓国側の官民から感情的な反発が浴びせられた。韓国の民間の各種活動団体は、ハリス大使の言動に対して「ハリス氏の口ひげは韓国を弾圧した日本の歴代の朝鮮総督を連想させる」「ハリス氏は母親が日本人なので韓国に対して特殊な反感を持っている」といった非難を広げるようになった。国会議員までがその非難に同調した。


 こうしたハリス大使叩きは米国の報道機関によって大きく伝えられ、米韓関係での新たな摩擦の1つとなった。


 ハリス大使はこうした展開についてソウル駐在の外国記者団らに以下のような反論を述べた。



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