北韓, 南北關係

【地球コラム】長期戦覚悟の北朝鮮、「次の一手」見えず

이강기 2021. 1. 22. 22:36

【地球コラム】長期戦覚悟の北朝鮮、「次の一手」見えず

時事通信. 2021年 1月 22日

「核保有」既成事実化、乏しい外交意

朝鮮労働党第8回大会の閉会に先立ち演説する金正恩党総書記=2021年1月12日、平壌【朝鮮通信=時事】

 

 1月5日から12日まで開かれた北朝鮮の第8回朝鮮労働党大会で、党総書記に就任した金正恩氏は原子力潜水艦や極超音速兵器などの最新鋭戦略兵器開発を掲げ、核抑止力をさらに強化する意向を表明した。米国に対する対決姿勢を明確にする一方で、外交への意欲はうかがえなかった。

 

 制裁の長期化、新型コロナ対応といった苦境の中、当面は国内対応に力を注ぎつつ、核保有国を既成事実化して核軍縮交渉を行うべく、バイデン政権の動きを待つ構え。伝統的友好国である中ロとの関係を強化し米韓と対決する「『新冷戦』志向」(専門家)との声が上がる。(時事通信社外信部編集委員・前ソウル特派員 萩原大輔)

 

兵器羅列

軍事パレードに登場した新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星5」=2021年1月14日、平壌【朝鮮通信=時事】

 

 金正恩氏は活動報告で、射程1万5000キロの大陸間弾道ミサイル(ICBM)、原子力潜水艦や多弾頭、極超音速ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を指すとみられる水中発射式核戦略兵器、軍事偵察衛星、無人偵察機など戦略兵器を列挙。「対外政治活動を、最大の主敵である米国を制圧し、屈服させることに焦点を合わせ、進めなければならない」と宣言した。

 

 さらに「新たな朝米関係樹立のカギは米国の敵視政策撤回にある」「米国で誰が政権に就こうと米国という実体と対朝鮮政策の本心は変わらない」と、米国の態度が変わらなければ北朝鮮からは動かないという原則的な立場に終始。党大会後には軍事パレードを行い、最新のSLBM「北極星5」も披露した。

 

 こうした北朝鮮の対決姿勢から、オバマ政権初期に北朝鮮が核実験や長距離弾道ミサイル実験を行ったように、米国の関心を引くために同様の「瀬戸際戦術」に走るのではないかという懸念の声も一部にある。

 

 しかし、正恩氏が言及した最新鋭兵器は、多くがまだ開発初期段階にある。正恩氏自ら、多弾頭ミサイルは研究の最終段階、極超音速ミサイルなどは研究を終え試作への準備段階、原子力潜水艦は設計を終え最終審査段階、無人機や軍事偵察衛星などは設計を終えた段階と説明している。また、既に米本土を射程に収めるICBMを保有している中で、1万5000キロのミサイルの軍事的意味は乏しい。

 

 ICBM発射や核実験など制裁強化を招く挑発を当面控えることを念頭に、先端兵器を挙げて「言葉」で米国を刺激する意味合いが濃いとみられる。

 

 北朝鮮は対米強硬姿勢を示す一方で、党大会開催中に習近平中国共産党総書記(国家主席)と正恩氏の祝電のやりとりを公表し、中国との密接な関係をアピールした。「中朝両国は山河がつながる親密な社会主義の隣国」(習氏)、「共同の偉業である社会主義のたゆみない前進のためあらゆる努力を果たす」(正恩氏)と通常の国家と国家の外交関係ではなく、「唇と歯の関係」と言われた冷戦時代の特殊な同盟関係を彷彿とさせる文言が並んだ。当面中国に依存するしかない北朝鮮としては、新たな国連安保理制裁決議に至りかねず、朝鮮半島情勢の安定を望む中国に不快感を与えるような行為には踏み切りにくい。

 

 また、報道によると、北朝鮮は世界保健機関(WHO)が主導する低所得国向けの共同調達の枠組み「COVAX」や欧州諸国を通じて新型コロナウイルスワクチンの入手を模索しているもようだ。コロナ危機の早期収束は北朝鮮にとって最優先の死活的課題。そのためには、挑発行為で国際社会の非難を浴び、ワクチン入手に不利になるような事態は避けたいだろう。

 

 既に「国家核武力の完成」を宣言している中で、過去に実験を行っているICBMやSLBMの発射実験などを行うのは、国威発揚という国内的な側面から見ても、意味は大きくない。

 

 韓国国防省出身の金東葉・慶南大極東問題研究所教授は「核と軍事力強化に言及したのは、基本的には人民に安全保障上の安心感を与え、経済発展に専念できる安定的な環境にあるということを示すため」と分析。同氏は軍事パレードで披露した最新のSLBMについても「まだ開発初期段階の可能性が高く、披露したのは模型だろう」と指摘している。

 

 正恩氏は核抑止力の強化を強調しながらも「われわれが最強の戦争抑止力を備え常に強化しているのは、われわれ自身を守るためで、永遠に戦争がない真の平和の時代を開くためだ」「責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力がわれわれを狙って核を使用しようとしない限り、核兵器を乱用しない」と自衛的手段であると繰り返した。

 

外交ライン降格

首脳会談に臨む北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領=2018年6月12日、シンガポール【AFP時事】

 

 正恩氏は「強力な国家防衛力は決して外交を排除するものではなく、正しい方向に推し進め、その成果を担保する威力ある手段だ」と対話の余地を残した。「強対強、善対善の原則で米国に対応する」と、米国が軟化すれば自らも軟化するという立場も示している。

 

 ただ、北朝鮮問題はトランプ氏との差別化を図りたいバイデン政権にとって優先順位が低いとの見方がもっぱら。北朝鮮も早期に新型コロナ対応を終わらせ、国境封鎖を解除して経済再建に取り組むことが最優先課題で、当面、外交に力を注ぐ余力は乏しいとみられる。

 

 正恩氏は「輸入依存度を下げなければならない」として、制裁を前提とした経済政策を示しており、制裁解除に期待を抱いていないことを示唆している。金東葉教授は「トランプ氏もできなかったことはバイデン氏になってもできないという現実的な認識を示した」と語り、北朝鮮は対米交渉への熱意を持っていないという見方を示す。

 

 正恩氏は活動報告でトランプ氏との首脳会談について「朝米間の力関係を劇的に変え、わが国家の尊厳と地位を立派に誇示した。超大国に対して自らの自主的利益と平和と正義を守る共和国の戦略的地位を満天下に示す世界政治史の特大事件」と誇ったものの、実際にはハノイでの首脳会談決裂でトランプ外交に「だまされた」形になり、権威は大きく傷ついた。2度と同じ失敗を繰り返すことはできず、「勝算」を確信できない限り、容易に対米交渉には踏み切れない。「金正恩氏はハノイでの決裂以降、未来に向けた突破口を見いだせていない」(専門家)と、正恩氏の「迷い」を指摘する声もある。

 

 党大会の人事で、国際部長と対南政策を担う統一戦線部長はいずれも書記には選出されず、対米交渉を担ってきた崔善姫外務第1次官は中央委員から中央委員候補に格下げ。韓国の鄭成長・世宗研究所統一戦略研究室首席研究委員は「外交・対南エリートのきわめて低い地位を見ると、少なくともコロナ危機が収まるまでは外交や南北関係より内政に集中する」と予想している。

 

 正恩氏は「非核化」に一切言及しなかった。シンガポールの米朝首脳の共同宣言をバイデン政権が継承するかどうか、核廃棄に向けた一括妥結ではなく、核開発凍結と米朝関係改善や制裁緩和をセットにする段階的交渉、事実上の核軍縮交渉にバイデン政権が応じるかどうかを見極めるとみられる。特に体面を重視する北朝鮮にとり、最高指導者自ら署名した共同宣言をバイデン政権が受け入れるかどうかは、交渉の可否を判断する最優先の基準だ。

 

 これに対し、米国務長官候補に指名されたブリンケン氏は19日の公聴会で、北朝鮮問題をめぐり、非核化交渉の意向を示す一方で、圧力強化の方向で北朝鮮政策を全面的に再検討すると表明。北朝鮮との立場の違いは大きい。

 

 一方、ただちに実用化しないとしても、原子力潜水艦は、長時間潜航できるため、気付かれずに相手に接近して攻撃することが可能になるきわめて大きな脅威だ。北朝鮮のミサイル開発に携わった脱北者は「北朝鮮もICBMはほぼ迎撃されると考えている。現在のディーゼル潜水艦は一定時間ごとに海上に浮上する必要があり、位置を容易に捕捉される。究極の目標は原子力潜水艦だ」と指摘。今後、建造などの開発状況を小出しに公表して、米国を揺さぶることも考えられる。

 

 

文政権の「平和プロセス」拒否

昼食会で談笑する金正恩朝鮮労働党委員長(右)と南朝鮮(韓国)の文在寅大統領=2018年09月20日、両江道・三池淵【朝鮮通信=時事】

 

 南北関係は厳しい情勢が続く見通しだ。正恩氏は活動報告で「現時点で南朝鮮当局に以前のような一方的な善意を示す必要はなく、(南側が)われわれの正当な要求に応じる範囲で、北南合意を履行するために動く範囲で、対応しなければならない」と述べ、韓国が米国の顔色をうかがうことなく南北首脳会談などの合意を履行しない限り、関係改善は望めないという認識を示した。

 

 さらに「(韓国は)貿易協力、人道主義的協力、個人観光のような本質的でない問題を引っ張り出して北南関係改善に関心があるような印象を与えている」とも語り、「小さなことから南北交流を進める」文在寅政権のアプローチを受け入れない考えを示唆した。

 

 もう一度南北首脳会談を実現させて政権浮揚を図りたい文政権の足元を見るように、正恩氏は「南朝鮮当局の態度次第で、いくらでも近いうちに北南関係が再び3年前の春のように、平和と繁栄の新たな出発点に戻ることもありうる」と言及したが、2022年3月に次期大統領選を控え、任期終盤にさしかかる文政権が、バイデン政権を動かせるような主導力を発揮するのは難しい。

 

 むしろ、対米挑発行為を自制する代わりに、南北関係の緊張を高めることで米国の関心を引き寄せるシナリオも取りざたされる。韓国への挑発行為なら国連安保理制裁が強化される可能性は小さく、北朝鮮への融和政策を取る文政権が安保理制裁決議を求めること自体考えにくいためだ。

 

 正恩氏は「先端軍事装備の搬入と米国との合同軍事演習を中止すべきだというわれわれの再三の警告を無視し続け、武力現代化に一層狂奔している」と文政権を非難しており、例年春に行われる米韓合同軍事演習などを口実に、韓国への強硬姿勢を強める可能性がある。軍事的側面から見ても、制裁強化の懸念が小さく、より実戦向けの兵器である中短距離ミサイルなどは発射実験を通じて性能改良を図る必要がある。

 

 党大会で改正された党規約では、南北統一に関し、従来の「わが民族同士力を合わせ、自主、平和統一、民族大団結の原則で祖国を統一し、国と民族の統一的発展を成し遂げるため闘う」という文言が削除されたもようで、新たに「強力な国防力で根源的な軍事的脅威を制圧し、朝鮮半島の安定と平和的環境を守る」「これは強力な国防力に依拠し、朝鮮半島の永遠の平和的安定を保障し、祖国統一の歴史的偉業を前倒ししようとするわが党の確固不動の立場の反映である」と記された。

 

 これは、「民族」に依拠した南北の特殊な関係ではなく、国家と国家の関係として、核抑止力を中心とした軍事的優位の下で南北の共存を図る路線を打ち出したことを意味する。

 

 昨年6月の南北共同連絡事務所の爆破や、同8月に水害で甚大な被害が出たにもかかわらず「外部の支援を受けない」と韓国からの支援を拒否したのは、こうした政策修正の「予告」だったのかもしれない。

 

 金大中・盧武鉉政権の太陽・包容政策、その延長線上にある文政権の「平和プロセス」構想は、同じ民族として、韓国に比べて経済状況などが厳しい同胞に対し支援・協力するという考え方が根底にある。こうした考え方はもはや北朝鮮に通用しなくなる可能性が高く、文政権は対北朝鮮政策の抜本的な見直しを迫られている。(2020年1月22日配信)