文在寅の大誤算、バイデンのアメリカから見放され「韓国経済」は大ピンチへ…!
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
2/15(月) 6:31配信
失業率が急上昇
写真:現代ビジネス
足元で、韓国経済が厳しい局面に差し掛かりつつあるようだ。 新型コロナウイルスの感染再拡大や経済運営の行き詰まりで、韓国の雇用・所得環境の悪化に拍車がかかっている。 【写真】日本人は知らない…いま韓国で本当に起きている「ヤバすぎる現実」 1月の完全失業率は、前月の4.1%から大きく上昇し5.7%だった(季節調整値では4.5%から5.4%に上昇)。 業種別にみると、小売や飲食、宿泊などサービス業で失業者が増加している。 感染の再拡大が雇用に与える影響は深刻だ。 文在寅大統領の経済政策が行き詰っていることは間違いない。 重要なポイントは、今のところ雇用環境の安定を回復する有効な政策が見当たらないことだ。 それに加えて、国際社会における韓国の立場も一段と不安定感を増している。 米国は車載を中心とする半導体の確保を目指して、これまで以上に台湾との関係を重視し始めた。 バイデン政権は同盟国であるわが国との関係も重視している。 その一方で、韓国の文大統領は、バイデン氏との会談の前に中国の習近平国家主席と電話会談した。 中国としては、国際社会での孤立を防ぐために韓国との関係を強化したいと考えているのだろう。 文大統領は、米中のはざまで両国との適切な距離感を見いだせずにいるように見える。 それは、日米にとって軽視できないリスクだ。
ここへ来て加速する韓国の雇用悪化
〔PHOTO〕Gettyimages
韓国統計庁が発表した1月の失業率を見ると韓国の雇用・所得環境はこれまで経験したことのない状況に足を踏み入れつつある。 足許、韓国の大手製造業の業績はよい。 コロナショック以前の韓国であれば、大手財閥系企業の輸出収益の増加は、雇用環境の持ち直しを支える大きな原動力だった。 しかし、足許の韓国では製造業でも非製造業でも就業者が減少している。 コロナショックを境に、大手財閥に属する製造業の輸出増加が内需を支えるという韓国の景気回復のメカニズムは機能しづらくなっているようだ。 製造業の分野では、生産の現場に産業用ロボットなど省人化技術の導入が進んでいる。 労働争議のリスクなどを避けるために海外進出を重視する企業も多い。 そのため、企業が設備投資を積み増したとしても、雇用は生み出されづらい。 その一方、飲食や宿泊などの非製造業の分野では、ソーシャルディスタンスの実施によって需要が蒸発している。 今後、サムスン電子などの業績が拡大したとしても、過去のように韓国の雇用環境が上向く可能性は低下していると考えられる。 それに加えて、感染が収束したとしても、飲食や宿泊などを中心に、需要がコロナショック以前の水準に戻らない恐れもある。 そうした展開を念頭に置くと、当面の間、韓国若年層の失業率は高止まりするだろう。 それに加えて、文政権が失業率の悪化を防ぐために重視してきた高齢者の短期雇用策も限界を迎えつつある。 1月は60歳以上の世代の失業率が前月の5.3%から10.8%に上昇した。 その要因として、公共部門での短期雇用契約の終了や、国内の需要低迷が考えられる。 2月に入り文大統領の支持率が低下した一因として、先行きの雇用・所得環境への懸念上昇は軽視できない。
国際社会における韓国の孤立懸念
雇用環境の悪化をはじめ経済格差が拡大すると、社会の不満は高まり、外需依存度の高い韓国が経済の安定を目指すことは難しくなる恐れがある。 特に、韓国が日米とどう連携するか、先行きの不透明感は高まっている。 米バイデン政権は、自動車関連などの半導体確保を目指して、台湾やわが国との関係をより重視し始めている。 2月5日、バイデン政権は台湾と半導体のサプライチェーンの強化に関する協議を行った。 その後、世界最大手の半導体受託生産企業(ファウンドリー)である台湾積体電路製造(TSMC)は次世代の半導体生産技術の確立を目指してわが国に研究拠点を設けることを発表した。 また、アップルが次世代の有機ELディスプレイをTSMCと共同開発するなど、米国にとって台湾の重要性は高まっている。 他方、世界貿易機関(WTO)の次期事務局長選挙に関して、トランプ前政権とは反対に、バイデン政権はナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏の支持を表明した。 一連の米国の姿勢は、バイデン政権が韓国と距離をとり、文政権に自国の立場を明確にするよう求めているように見える。 米国は北朝鮮への追加制裁も示唆している。 韓国を取り巻く国際世論は厳しさを増しているといえる。 文政権は、国内の経済運営に加えて、安全保障面では米国に頼りつつ、経済面で中国を、外交面では北朝鮮を重視する政策の限界を迎えているように映る。 ただし、自らの政権基盤を安定させたい文氏にとって、これまでの政策スタンスを変えることは口で言うほど容易なことはないはずだ。 今後、雇用喪失への不安の高まりなど韓国の社会心理は追加的に悪化し、経済運営は一段と難しい局面を迎える恐れがある。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)