就任4年の文在寅、経済失政・外交崩壊続きも「自画自賛」の厚顔
4年間で韓国にもたらしたのは「国民の分断」
JB Press
2021.5.12(水)
5月10日、大統領就任4年の特別演説をする文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
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5月10日、文在寅大統領は就任4周年を迎えた。文大統領は同日、青瓦台で特別演説を行い、国民経済、新型コロナ、南北関係について語った。ただし日韓関係に関する言及はなかった。
客観的に見れば、文在寅政権のこの4年間は国内の分断を広げ、北朝鮮外交でも失敗を繰り返してきたが、その反省は一向にない。この日の特別演説も、就任式の演説同様、実現性のない美辞麗句を並べたものであったと断じざるを得ない。
文政権の4年間は「自画自賛」と「言い逃れ」、「ネロナンブル」の繰り返し
世論調査会社リアルメーターが5月3日から7日にかけて実施した世論調査では、肯定的評価が前週より3ポイント上がって36.0%、否定的評価は2.3ポイント下がって60.3%であった。就任4年目の時点での評価としては歴代政権で最も高い支持率だそうで、政権の実績からすれば不思議なことである。
しかし、よく見ると肯定的評価が上がったのは文在寅氏のもともとの支持層である中高年層だけの現象のようだ。40代の支持率が9.5ポイント上がって50.4%、50代が8.6ポイント上昇して42.4%となっている。ソウル・釜山市長選挙の「悪材料出尽くし」ということか。その半面20代、60代、70代の肯定的評価はいずれも20%台である。高齢層はもともと保守的であったが、以前は支持層が多かった20代が離反したところに、文政権に対する現実的な評価が現れている。
文政権の国内政治は、「自画自賛」と「言い逃れ」、「ネロナンブル」(「私がすればロマンス、他人がすれば不倫」=ダブルスタンダード)の繰り返しであった。そのため数々のスキャンダルに見舞われながらも一切反省はない。失政のしわ寄せは、もともとは文在寅大統領を支持してきた20代に集中しており、若年層の文政権離れが加速している。反対に40代、50代の一部は職を失っているが、多くは既得権者となり、不動産や株などの資産価値の高騰で潤っている。こうした世代間格差による社会の分断が加速している。
企画財政部は7日、経済報告書「文在寅政府4周年、その間の経済政策推進成果及び課題」を発表した。その中身は「韓国企業は政府の規制撤廃でいつもより経営環境が改善され、国民も高まった所得に支出負担は低くなり、いつもより質の高い暮らしを営んでいる」といった、お得意の自画自賛の連発だ。しかし、政府の状況認識と国民目線には大きなギャップがあると言わざるを得ない。
良質の雇用は減り、特に青年の体感失業率は過去最高の27%に達している。不動産価格の高騰で持ち家は夢と化している。支持獲得のための放漫財政で、国家債務も急増している。
南北関係では、プライドを捨てて北朝鮮に譲歩を重ねているが、北朝鮮の核武装は強化され、北朝鮮側からは対話の窓口さえも閉じられた状況にある。傍から見れば、自画自賛できる要素を探すのが難しい。
空疎に響く大統領の特別演説
では文在寅大統領は、4周年を迎えての特別演説で政権の締めくくりについてどのような展望を語ったのか。
国民経済については、「4%以上の成長率を達成する」と強調し、「果敢な消費てこ入れ策と内需拡大策を準備する」「企業の投資を積極的に支援し、輸出で過去最高を達成する」と述べた。
ただ、「経済指標が改善しても国民の生活が直ちに向上するわけではない。危機が不平等を深化させている」「質の良い民間の雇用創出に政策の主眼を置く」と述べ、経済は良くなっているが危機のため国民生活の向上が遅れていると責任を転嫁する一方、生活が苦しくなっている大きな理由が政策の失敗であることは認めなかった。同時に、文政権の経済政策の柱は財政バラマキによるテコ入れでしかないことを露呈した。
コロナ対策については、「コロナとの戦争で終わりが見え始めた」「ワクチン接種に速度を出し、集団免疫に近づいている」「集団免疫はコロナを終息させることはできず、それほど危険でない病気にすることで我々は日常を回復することになるだろう」として国民にもう少し我慢するよう求めている。
ワクチン需給・接種過程で各種論争が広がったことに関連しては、「もう少し接種が速ければという残念な思いがあるのは事実」として国民の批判を和らげようとした。
その一方で、これまで「ワクチン確保」「ワクチン・スワップ(交換)」などと政権による成果を誇示してきたわけだが、その多くが“フェイクニュース”に終わったことは認めなかったし、文在寅政権がコロナ対策の成果をアピールした直後に感染状況が一層悪化してきた経緯についても言及しなかった。いま韓国国民は米韓首脳会談を通じたワクチン確保に期待を寄せているが、客観的に見れば、決して楽観できるような状態にはない。
北朝鮮関連では、「バイデン政権も対北朝鮮政策の検討を完了した。我々と緊密に協議した結果」であるとして、シンガポール宣言の土台の上に柔軟かつ漸進的・実用的な接近で進めていくことを歓迎した。さらに「我々は外交を通じて問題を解決できるという明確な可能性を見た。国民も対話の雰囲気作りに力を合わせてほしい」としつつ、「南北関係に冷水を浴びせる」行為には「厳正な法施行せざるを得ない」としてビラ散布を処罰する意向を述べた。
だが現実はどうか。米国が北朝鮮に対話を呼びかけたにもかかわらず、北朝鮮からは返答がないと言われている。韓国が北朝鮮と対話する窓口もなくなっている現実について文在統領の口からは何ら言及がなく、北朝鮮との関係改善は全く見通せていない。これが偽らざる現状だ。
自画自賛では韓国経済は良くならない
前述の企画財政部の報告書は、文在寅政権の4年間の経済実績を総括している。報告書はマクロ経済・革新成長・包容成長という3大軸で10の成果を上げたと誇っている。政権発足当時、成長が鈍化して分配は悪化する状態だったが、文政権が所得主導成長と革新成長の構築に注力したおかげで急速に強い経済回復と共に家計所得は増え、企業には革新の雰囲気が作られるなどの改善が始まったと評価した。
文政権が発足後に掲げた経済キーワードは「所得主導成長」だった。「最低賃金引き上げ→所得増大→経済活性化→雇用拡大」となるはずだった。そして実際17年、18年の2年間で最低賃金は27.3%引き上げられた。その結果、どうなったか。
コロナ感染症が拡大する前の19年の韓国の経済成長率は2.0%であったが、それも年末に向けての財政出動でかろうじて2%としたものだった。経済成長率が一貫して高かった韓国で、成長率が1%台という事態は、アジア通貨危機やリーマンショックなどの世界的不況の時代くらいにしかなかった。しかし、文政権下の韓国は世界景気が好調の時代に実質1%台の成長となっていた。その原因を作ったのが所得主導成長政策の失敗である。
急速な最低賃金の引き上げと週52時間勤務制などの無理な政策で雇用は消えていった。本年1~3月期の雇用率は58.6%と文政権発足時の17年1~3月期の59.6%より1ポイント低い。しかも経済の要となる30代、40代の雇用は減少している。良質の雇用である製造業の就業者は減少し、雇用が不安定な日雇い・臨時職は増加傾向にある。青年の体感失業率は17年1~3月期の23.6%から今年1~3月期は26.5%と3.2ポイントも上昇した。最低賃金の急激な引き上げに負担を感じた企業と自営業者が採用を減らした影響が大きかった。
文政権は最低賃金の引き上げで分配率を改善しようとしたのだが、むしろ失業の増大で分配率を悪化させてしまった。
ソウル市のマンション価格、文政権で82%も高騰
不動産政策も国民に失望を与えている。文大統領は「不動産政策には自信がある」(19年1月)、「急騰した住宅価格を戻す」(20年1月)と約束したが、25回も不動産政策を改定したにもかかわらず、住宅価格は高騰し、中間層の税負担は増大、賃貸価格も上昇するという大失敗に終わっている。
ソウル市の25坪のマンションの価格は文政権になって6億6000万ウォンから11億9000万ウォン(約1億1600万円)へと82%も急騰した。文政権下4年間の上昇幅5億3000万ウォンは、過去18年間の上昇幅8億8000万ウォンの60%を占める。
韓国経済は、サムスンなどの財閥系輸出企業がけん引して数字的にはそれほど悪くない。しかし、規制で経済の足を引っ張っていることは否定できない。
韓国第1号のユニコーン企業「クーパン」が韓国市場ではなくニューヨーク市場での上場を選んだのはなぜか。クーパンは今年3月、米国証券取引委員会(SEC)に提出した申告書の中で、韓国の各種規制に言及している。文政権は、政府の規制撤廃で第2のベンチャーブームが広がっている、としているが、これも毎度おなじみの実態の伴わない「自画自賛」だ。
財閥企業に対する締め付けも相変わらずである。サムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は投獄されたままである。また、別のサムソンの幹部はサムソン労組の設立を妨害したとして実刑判決を受けている。このような過度の財閥たたきを続ければ韓国経済の柱となっているサムスンの新規投資は抑え込まれていくだろう。
南北関係、大失敗どころか大きな危機に
南北関係に関しては、文政権がスタートして間もない頃は平昌オリンピックをきっかけに和平ムードが盛り上がり、2018年4月の南北首脳会談、6月の米朝首脳会談に結び付いた。しかし、19年2月の米朝ベトナム会談決裂後、米朝関係、南北関係が同時に冷え込み、18年9月の平壌共同宣言も北朝鮮の数回の挑発で有名無実になった。
そうした中、北朝鮮外交の総括を求められた鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官(前国家安保室長)は記者クラブの基調演説で「残りの任期中、これまで推進してきた外交政策をうまく終え、次の政権にうまく続くよう準備するのが役目」「(過去4年間の南北関係と外交安保分野について成績をつけてほしいとの質問に対し)過去の政権と比較するとA単位だ」とやはり自画自賛し、参加者からの批判的な評価を否定した。
しかし、国家情報院長の朴智元(パク・ジウォン)氏が親しい周辺に漏らしたという言葉は真反対のものだった。「対話チャンネルがすべて断たれている。南北関係が2000年6・15共同宣言以前の状態に戻った」と苦衷を訴えたという。
外交部長と国家情報院長とで北朝鮮外交についての評価が180度違っている。だが国家情報院長は北朝鮮との窓口役だ。ならば朴院長の言葉こそが現在の南北関係の状況を率直に表したものと言えるだろう。ただ朴氏は太陽政策を進めた金大中元大統領の側近であった。6・15共同宣言は金大中大統領と金正日国防委員長との間で締結された合意文書である。そのためこのような発言になったのであろう。
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「対話チャンネルがすべて断たれている」という朴院長の言葉は重い意味を持っている。南北対話と対北朝鮮問題に詳しい専門家は「北が事実上核兵器を保有した状況でホットラインさえ断たれたとすれば、それだけ国家安保が危機に露出したという意味」と懸念を示している。
それでも文在寅大統領は、金正恩総書記へのすり寄りをやめようとしてはいない。米韓合同実戦訓練を中断し、軍事境界線の偵察飛行をやめ、対北朝鮮ビラ散布を禁止している。これでいったいどのようにして韓国の安全保障に責任を取るつもりなのだろうか。北朝鮮に対し現実的な政策を取らない文在寅政権を韓国国民はより厳しい姿勢で批判すべきだろう。
文在寅政権の4年間は韓国の将来に不安を与えるものである。1年後、韓国の安保・経済を回復に導いていける指導者が現れることを期待したい。
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