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いよいよ臨戦態勢…プーチンはなぜウクライナ侵攻を目論むのか? その「経済的な理由」

이강기 2022. 2. 9. 14:16
 

いよいよ臨戦態勢…プーチンはなぜウクライナ侵攻を目論むのか? その「経済的な理由」

 
加谷 珪一
 

現代 Business, 2022.02.09

 

 

ウクライナ情勢が緊迫の度合いを増している。米国が3000人規模の部隊を東欧とドイツに派遣するなど現地は臨戦態勢に入った。ロシアのプーチン大統領は、本当にウクライナに侵攻するのか、そしてウクライナ侵攻には、どの程度の勝算があるのか、経済面から分析する。本稿はあくまで経済的な分析なので、軍事オペレーションに関する論考ではないことついて留意の上、読み進めて欲しい。

〔PHOTO〕Gettyimages

プーチン大統領の野望

日本は地政学への関心が低く、国家がなぜ戦争をするのかをよく理解できていない人が多い。中国や北朝鮮による各種の挑発行為についても、「中国は日本を侵略しようとしている」「金正恩は狂っている」といった単純かつ感情的な反発がほとんどであり、両国の行動原理に関する分析や議論は驚くほど少ない。

 

「戦争は他の手段を持ってする政治の継続である」というのは、クラウゼヴィッツの『戦争論』における有名な一説だが、現代における戦争の本質を見事に表わしている。一部の読者の方は不快に感じるかもしれないが、戦争というのは基本的に政治や外交の延長線上に存在するものである。

 

そして、内政・外交と経済は常にセットになっており、最終的に戦争は経済との兼ね合いで決断される(この原理原則を守らなかったのが太平洋戦争であり、結果として日本は国家滅亡寸前まで追い込まれた)。

 

ロシアや北朝鮮、あるいは中国といった独裁国家は、ごく一握りの指導者が物事を決断するので、(決して道徳的ではないが)行動原理は極めてロジカルである。「雰囲気に流されて」「やむにやまれず」といった日本でよくありがちな意思決定はほとんど行われない。したがって、ロシアがウクライナ侵攻を企てていることには明確な理由があると考えた方がよい。

 

政治的に見れば、ロシアがウクライナ侵攻を試みるのは、同国の欧米化を防ぐためであることは明白だ。

 

ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)加盟を目指しており、最終的にはEU(欧州連合)への参画も視野に入れている。以前は、ウクライナ国民の中でNATO加盟を支持する声はそれほど多くなかったと言われるが、2014年のロシアによるクリミア侵攻以後、NATO加盟を支持する声が高まっている。ロシアにとっては、ウクライナを失うと、東欧における影響力を大きく削がれ、欧州との力学バランスが崩れてしまう。

 

かつてのロシアは、東アジアでも相応のプレゼンスを保っていたが、中国の台頭という現実を前に、事実上、東アジアでの覇権は放棄せざるを得ない状況に追い込まれている。ロシア経済の規模は中国の10分の1しかなく、ここまで来ると、もはや大人と子どもの違いといってよい。

 

 

プーチン大統領は、強権的な政治スタンスで反対派を弾圧しており、東アジアに続いて東欧でのプレゼンスも失えば、国内権力基盤が揺らぐリスクがある。プーチン氏にとってウクライナの欧米化だけは何としても避けたいところだろう。

 

経済面に目を転じると、今回の事案には原油価格の動向が密接に関わっている。ロシアは米国、サウジアラビアに次ぐ世界3番目の石油産出国であり、天然ガスについては2番目の産出量を誇る。エネルギー利権を握っていることはロシアにとって最大の強みだが、逆にこれがロシア経済の脆弱性の原因にもなっている。

 

米国を除く産油国にありがちだが、豊富なエネルギー資源を持つ国は、どうしても経済運営や国家財政が石油依存型になってしまう。ロシアも例外ではなく、基本的にロシア経済は原油価格に大きく左右される。ロシアのGDP(国内総生産)の約12%がエネルギー関連で占められており、輸出品目やロシア連邦政府の歳入についても半分がエネルギー関連だ。

 

ロシアの実質成長率と原油価格の動きはほぼ連動しており、原油価格が上がればロシア経済が好調になり、価格が下がると低迷するという関係が見て取れる。国家財政も同様で、原油価格が上昇すると財政黒字になり、原油価格が下がれば財政赤字が増える。

2015年には米国でシェールガスの開発が進んだことから原油価格が暴落し、ロシア経済は一気にマイナス成長に転落した。原油価格の下落はロシアにとって致命的な打撃を与えると考えてよい。

ロシアの原油採掘現場〔PHOTO〕Gettyimages
 

ロシアの国内経済は脆弱であり、通貨ルーブルの金融市場での地位は低く、通貨安とインフレのリスクを常に抱えている。ロシアの2021年における名目GDPは173兆円と、米国の14分の1、中国の10分の1、日本の3分の1しかなく、その点からするとロシアはもはや小国でしかない。規模の小さい国が他国を相手に戦争あるいは準戦争行為に及ぶというのは、危険極まりないことだが、ロシアのような独裁国家の場合、必ずしもそうとは言い切れない部分がある。

 

 

国家が軍事費として捻出できる金額は基本的にGDPに依存するので、経済規模の小さい国は軍事大国にはなれない。だが、国民生活を犠牲にしてもよいのであれば、税負担を重くすることで、ある程度までなら軍事費を拡大できる。ロシアの軍事費(2020年)は6.5兆円であり、米国(81.7兆円)、中国(26.5兆円)と比較すると圧倒的に少ない。だがロシアにおける軍事費の対GDP比は4.2%と、米国(3.7%)、中国(1.7%)よりも高く、経済力の多くを軍事費に割いている。

 

ロシア政府は徹底した緊縮財政主義

軍事費を確実に捻出するためには財政の安定化も必須となる。ロシアの財政は特殊であり、原油価格が一定水準を上回った場合、余剰の歳入は国民福祉基金(ロシアの政府系ファンド)に充当され、原油価格が下がった時には同基金から補填される。ロシア経済が石油依存型であることから、財政(特に軍事費)が安定するよう、政府系ファンドを通じた調整が行われているのだ。

 

 

加えてロシア政府は国民に高い税負担を求めている。日本の消費税に相当する付加価値税の税率は20%もあり、所得税にも累進課税が導入されているほか、年金保険料は原則として給与の22%が徴収される。同一基準の統計がないので厳密な比較はできないが、ロシアはかなりの重税国家といってよいだろう。

 

 

プーチン政権は徹底した緊縮財政路線を貫いており、財政赤字を回避するスタンスが明白である。その理由は、限られた経済力の中から、一定水準の軍事費を常に確保し、これを効果的に外交に応用したいとの意図があるからである。

 

 

つまりロシアという国は、一定の軍事費を捻出するため、国内の消費経済はあえて犠牲にし、政府は徹底した財政の健全化を推し進めていると見なすことができる。そして、歳入の多くを原油に依存している以上、政府としては原油価格を高く維持しておきたいとのインセンティブが働く。

 

 

以上について総合的に考えると、ロシアはウクライナ侵攻を企てることで、政治的には欧州を牽制し、ウクライナの欧米化阻止を狙う可能性が高い。経済的に見れば、地政学的リスクを高めておくことで原油価格の高値維持が可能となり、国家財政基盤の強化につながる。

 

もっとも、現実にウクライナに侵攻してしまった場合には、軍事行動に多額の支出が必要となるほか、米国から制裁を受ければ、脆弱なロシア経済は大打撃を受けてしまうだろう。

 

プーチン氏にとっては、各国がロシアはウクライナに侵攻するのではないかと戦々恐々とし、原油価格にも上昇圧力が加わる状態がベストということになる。したがって合理的に考えた場合、ロシアはある程度のところで妥協点を探った方が得策である。

 

 

しかしながら、戦争というのは予想もしなかったアクシデントが引き金となることもあり、先を予想するのは難しい。次回は、ロシアが現実にウクライナに侵攻した場合、経済的にどの程度、耐えられるのか、ロシア経済全体にどのような影響が及ぶのか考察する。