韓国大統領選のウラで「文在寅が逮捕される日」への危ないカウントダウン
自分がやってきたことが「しっぺ返し」
現代 Business, 2022.02.13
文在寅の「大きな不安」
韓国で尹錫悦氏の文在寅政権批判が本格化し、これに文在寅氏が反論して、両者が正面衝突の様相を呈してきた。
韓国では現職大統領は、次期大統領選挙で政治的中立を保つ義務があるが、尹錫悦氏の文在寅政権批判が本丸に迫り、文在寅氏側に大統領退任後の自身の運命について不安が高まったことで、今後尹錫悦氏追い落としに参戦しかねない状況になっている。
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今回の大統領選挙は極めて異例な様相を呈している。
李在明氏、尹錫悦氏はともに本人及び妻のスキャンダルを抱え不人気な候補であり、大統領選挙の焦点は、両候補のどちらが良いかや候補者のビジョン・政策よりも文在寅氏の5年間に対する信任投票の様相を呈している。
文在寅氏の支持率は依然として約40%を維持しており、与党の中では大統領候補の李在明氏よりも高い。それでも文在寅氏の政策に対する若者層の不満から、与党候補の李在明氏でさえ文在寅氏の政策からは一定の距離を置こうとしている。
国民世論は左翼政権の維持よりも政権交代を支持しているが、野党候補の尹錫悦氏の支持率はそれほど伸びていない。
文在寅「大統領を辞めた後に…」問題が浮上
主要候補の李在明氏、尹錫悦氏はいずれも国政の経験がない。わけても尹錫悦氏はこれまで検事一筋であり、政治の経験すらない。
こうした中で出た、中央日報インタビューでの尹錫悦氏の「積弊清算」発言は、文在寅政権関係者が退任後の身の安全を図ろうとしてきたこれまでの5年間の努力を水泡に帰す結果となりかねない事態を予言している。
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さらに尹錫悦氏は、文在寅氏が最重要課題としてきた北朝鮮政策を根本から覆す考えを示している。
今後文在寅政権は、尹錫悦氏が大統領になることを阻止する道を探ってくるであろう。
それは文在寅氏支持者の結束を強めることになっていこう。反面、それは保守層の結束も固めることになる。今回の選挙を通じ、韓国における保革の分断は一層強まる結果となりそうである。
尹錫悦「積弊清算」発言の”意味”
尹錫悦氏は、中央日報とのインタビューで「執権すれば前政権の積弊清算捜査をするのか」という質問を受け、「しなければいけない。(捜査が)行われなければいけない」とし「文在寅政権で不法と不正を犯した人たちも法、システムに基づいて相応の処罰を受けなければならない」と述べた。
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大統領選挙戦が佳境に入る時期に、政治的に最も機微な問題に踏み込むことが有利に働くかどうか見極める前に本音を発言したことは、尹錫悦氏が政治家であるよりはいまだに検事の頭でいることを示すものであろう。
それでも尹氏は大統領として捜査に関与する立場は否定している。
同氏は「(過去の保守政権に対する)現政権初期の捜査は憲法、原則に則ったもので、次の政権が自分たち(文政権)の不正と違法を捜査すれば『報復』になるのか」と強調、「政治報復」の意図はなく、「捜査は適正に実施される」と説明した。
韓国では過去の政権交代時にも退任後の大統領や家族、側近の不正が相次いで摘発されている。
こうしたことから、尹錫悦氏の発言を、文在寅政権側は、今回の大統領選挙後も新大統領の意向でこうした事態が繰り返されるとの予言と受け止め、強い反発に出ている。
あんたがやってきたことだろ、と…
文在寅大統領は2月10日、秘書官との会議で「根拠なく政府を『積弊清算』の対象に仕立てたことに、強い憤慨を表す」と述べた。
韓国のメディアは「肉声で野党候補を正面から批判するのは極めて異例」と注目している。
尹錫悦氏、文在寅氏の発言を受け、共に民主党は9日だけでも、5回の記者会見を行い反発を強めている。
ウ・サンホ民主党選挙対策委総括本部長は、尹候補の発言を「政治報復宣言」と規定し、「生涯、特権ばかり享受してきた検察権力者の傲慢な本性が現れた妄言」と非難した。
与党の大統領候補の李在明氏も「(尹候補の発言は)政治報復をすると見ることができる言葉だ。非常に当惑する。遺憾だ」と指摘した。
民主党陣営が一様に政治報復と規定する中、野党国民の力も反撃に出ている。
尹候補は「新政権が樹立された後、時間が経過しながら前政権の問題が摘発されれば、正常な司法システムに基づき捜査が行われるのだという原則的な話をしたに過ぎない」「自分がしたことは正当な積弊の清算であり、他人がすれば報復というフレームにするのは正しくない」と与党の姿勢を攻撃した。
緊急の「記者会見」
国民の力も「泥棒が自分の罪に不安を感じているのでは」と述べた。
ウォン・イルヒ報道官は論評で「尹候補は政権交代が実現すれば検察の人事に直接関与したり捜査の指示をしないと明らかにした」「極めて常識的で原則的な発言を政治報復フレームにする勢力は李在明候補と民主党しかない」と反撃した。
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国民党の重鎮議員は「与党が『政治報復』と話すほど、現政権の積弊清算捜査を自ら否定する姿になるのではないか」「正常な『大庄洞捜査』を望む大多数の国民感情を考慮しても『積弊捜査』イシューが膨らむのは決して悪いことではない」と述べた。
一方、与党の激しい反発には李在明候補夫人(金恵景氏)関連の悪材料を突破しよういう意図が背景にあるとの見方も出ている。
民主党の一部では「金恵景氏問題を覆う適切なカードがなく悩んでいたが、尹候補が良い匙を投げてくれた」という反応を見せている。金氏はこの動きに合わせ緊急の記者会見を行った。
文在寅が「ずっと恐れてきたこと」
文在寅氏は、政権をあげて自ら朴槿恵氏とその政権に対して行った「積弊の清算」と同様な報復の対象とならないよう周到な対策を講じてきた。
国家情報院や検察の権力を取り上げ、政権幹部や議員などに対する捜査権を高位公職者犯罪捜査処に移し、同処の検事には政権に近い「民主社会のための弁護士会」所属の弁護士などを任命し、政権に対する捜査の妨害と保守系に対する捜査を進めてきた。
さらに尹錫悦検事総長を職から追いやった。
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新政権になれば、文在寅氏の長年の知人が出馬した慶尚南道蔚山(ウルサン)市長選に大統領府が介入した事件などから捜査が展開されるとする予測が出ている。
そればかりか、月城(ウォルソン)原発1号機の経済性を過小評価し、早期閉鎖に持ち込むのに政権幹部が関与した事件、文在寅氏が退任後の住居購入にあたって土地の用途を変更し巨額の利益を得た事件など様々な疑惑が取りざたされている。
「ネロナンブル」のツケ
そもそも文在寅政権は常にネロナンブル(自分がやればロマンス、他人がやれば不倫という二重基準)を実践してきている。
政権幹部で不動産から不当な利益を得ていた人が多くいるとの指摘も出ている。しかし、こうした政権幹部が関与する疑惑に対する捜査は遅々として進んでいない。
与党の大統領候補李在明氏が城南市長時代に進めた大庄洞都市開発疑惑では、主要な実務者が3人も自殺し疑惑が深まっているにも関わらず、捜査は李在明氏に行き着く前にストップした。
李在明氏夫人が夫の京畿道知事時代、公務員に私的な雑用をさせたり、公のクレジットカードを不正に使用した疑惑も持ち上がっている。
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こうした政権絡みの不正をこれまで隠し続けてきたため、文在寅政権幹部はわが身の問題として新政権による「積弊の清算」に神経質になっている。
新政権が樹立されれば、現政権が行ってきたような不正の隠ぺいや保護がなくなることは避けられない(文在寅政権のスキャンダル隠蔽工作については拙書『さまよえる韓国人』をご参照願いたい)。
「でっち上げ」はもう通用しない
いずれにせよ、現政権の不正の噂は多岐に亘っており、尹錫悦氏による新政権になれば、「政治報復」云々に関わらず、文政権幹部の不正追及は避けられないだろう。
このため文在寅氏としては尹錫氏が大統領となるのは是非としても避けたいだろう。
これまでの政権の対応は、尹錫悦氏や野党幹部の不正をでっち上げることで局面の打開を図ってきた。
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しかし、ここに来て尹錫悦氏関連のスキャンダルよりも李在明氏に絡んだスキャンダルの影響の方が大きくなってきた。
また、李在明氏が城南市長、京畿道知事としてあげた肯定的評価よりも、その時期におきた不正問題が大きく取り上げられるようになっている。
文在寅政権としてどのような動きがあり得るか、有効な手段はどんどん少なくなっているようである。
文在寅のレガシーを否定する尹錫悦の対北朝鮮政策
尹錫悦氏は同じ中央日報とのインタビューで、「北朝鮮が査察を受け入れ国際原子力機関(IAEA)査察団が(北朝鮮の核施設に)入り(検証が)ある程度進行すれば、それに見合った段階別ロードマップに基づいて国連安保理で経済制裁緩和にも限定的に出られるだろう」と述べた。
尹氏は文在寅氏が「『北朝鮮が非核化するから(制裁を)解除しよう』というのは呆れた話で全く受け入れられない」と批判した。
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尹錫悦氏は北朝鮮が望む制裁緩和をという相応措置は核申告、査察、検証まで本軌道に上がってこそ可能という立場だ。
一方で尹錫悦氏は「北朝鮮住民が望むのは開城(ケソン)工業団地で消耗品を作ることではなく、高度化された産業投資だと考える。現実的に北朝鮮が望むのは何で、(韓国が)受け入れられる線は何処までなのかなどは交渉が本格化しながら議論できる。そうなると雰囲気自体が変わるだろう」と指摘した。
また、尹錫悦氏は北朝鮮の非核化を実現するための方策として、強力な対北朝鮮制裁をあげた。
北朝鮮、中国との「関係は変わる」
尹錫悦氏は、故金大中元大統領の太陽政策を否定しているわけではない。
ただ、「太陽政策とともにバランスが取れたグローバル外交をしながら北朝鮮非核化問題を解決し、韓半島(朝鮮半島)の持続可能な平和を構築すべきだが、政府はこうした均衡感を喪失した。一方的な屈従と偏狭性で外交が失踪した」と文在寅氏の対北外交を非難した。
さらにTHAAD配備については、在韓米軍が持ち込んで運用するのではなく直接購入する道を選択するとした。
それは米軍が運用するのではないため、「対中リスク」を軽減できるというのである。
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対北朝鮮外交は文在寅氏が政権のレガシーにしようと躍起となっている部分である。その正当性を非難することで、文政権の対北朝鮮アプローチを一層困難なものとするだろう。
北朝鮮に対する制裁の解除を今行えば北朝鮮の核ミサイル開発を正当化する。現実に北朝鮮との対立を回避できたとしても、韓国にとって一層危険な北朝鮮となることは時間の問題である。
議論は深まる…のか?
北朝鮮が制裁の緩和で期待していることは開城の開発に留まらず、より高度化された産業投資である。
その産業投資を視野に入れた、ロードマップが北朝鮮にとっては魅力的なことは間違いない。
他方北朝鮮の核ミサイル開発は容認できない。こうした問題の原点に立ち返って交渉すべきである。文在寅氏の行っていることは短期の危機回避であり、韓国を北朝鮮の脅威から解放するものではない。
文在寅政権の対北朝鮮アプローチの失敗が明らかになった時だけに文在寅氏としては腹立たしいことだろう。
今後対北朝鮮問題でも候補者間で真摯な議論が行われることを期待する。
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