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ドイツが80年育てた「ナチス土下座戦略」が終わる? ウクライナ戦争で“敗戦国”が失いつつあるものとは

이강기 2022. 6. 13. 12:52

ドイツが80年育てた「ナチス土下座戦略」が終わる? ウクライナ戦争で“敗戦国”が失いつつあるものとは

 

「文春オンライン」特集班 2022年06月05日

 

 

 ロシアのウクライナ侵攻で、国際的な評価を最も下げた国がロシア自身なことは間違いない。では2位はどの国か……と考えるとドイツの名前が浮上してくる。

 

 侵攻が始まった2日後にウクライナに5000個のヘルメットを送ると発表して「失望した」「ひどい裏切り」と非難されたかと思えば、ゼレンスキー大統領はドイツ下院で「あなた方はまたしても『壁』の向こう側にいる」とお叱りの演説。さらにはドイツのシュタインマイヤー大統領のキーウ訪問が、ウクライナ側から“断られる”事態まで発生した。

                                                                                                マライ・メントラインさん 本人提供

 

「職業はドイツ人」と名乗りドイツの公共放送の日本地域プロデューサーであり、ミステリーや日本アニメを愛するオタクでもあるマライ・メントラインさん。4月に2年半ぶりにドイツで2週間過ごす中で、日本とドイツではウクライナ侵攻への態度に大きな温度差があることに気がついたという。

 

 ドイツはなぜ叱られ続けているのか、国内からの反発はないのか、そして「ナチス」という言葉が飛び交うことについて当のドイツ人たちはどう思っているのだろうか――。

 

 

◆◆◆

 

――日本ではウクライナ報道が徐々に減りつつありますが、ドイツはいかがですか?

 

マライ ドイツにとってはウクライナもロシアも“ご近所さん”なので、今でも毎日のように報道が続いています。ただ侵攻直後の「ロシアを徹底的に叩くんだ!」という雰囲気は一段落して、ドイツにとってベストな戦争の終わらせ方を考える人が増えているように感じました。

 

「徹底的にロシアをやっつけようという雰囲気はない」

――どういうことでしょう?

 

マライ たとえば「ロシアをどのくらい弱体化させるのがいいか」という点が議論されています。日本は割と「ロシアには徹底的に弱体化してもらいたい」という空気が強いですよね。

 

 

――そう思います。

 

マライ その日本の感覚はアメリカの希望に沿ったものだと思うんですけど、ドイツ人の中で、ロシアが無くなればいいとか、何もできないくらい弱体化してほしいと思っている人はほとんどいません。侵攻前の境界線くらいまでロシアを押し返す必要はあるけれど、そこからさらに徹底的にロシアをやっつけようという雰囲気はないんです。

 

 

――ロシアに強烈な制裁を、という声は大きくないのですか?

 

マライ この戦争の悪役はどう見てもロシアで、その感覚はドイツでも同じです。ただ、ウクライナやロシアはやっぱり近すぎるんですよ。国内に多くのウクライナ人やロシア人が住んでるし、知り合いもいる。歴史的な関係性も深い。だからウクライナはウクライナのまま、ロシアもロシアのままで存続するのが落ち着くというか、そのバランスを大きく変えることに抵抗がある人が多いんだと思います。

 

 

 

――ロシアから天然ガスを輸入しているなど、経済的な結びつきが強いことも影響しているんでしょうか?

 

マライ 影響はあると思います。1991年にソ連が崩壊して以来、ドイツの基本的なロシア対策は「経済的にも人的にも交流してお互いズブズブに依存しちゃえば戦争も起きないよね」というものでした。実際に交流を強めて、天然ガスをロシアから運ぶパイプラインも作って、相互依存をどんどん深めてきました。2000年代までは、その方法で結構うまくいっているように見えていたんです。結果的にその見通しは甘かったわけですが……。

 

ドイツ人は「アメリカへの依存度をこれ以上高めたくない」と思っている

 

――現在も天然ガスの輸入が続いていることについて、ドイツ人はどんな反応なのでしょう?

 

マライ ガソリンの値段がものすごく上がっているので、天然ガスが無くなるのも困るというのが正直なところだと思います。ロシアにお金が流れるのは困るけどドイツ国民の生活を犠牲にすることもできない、というか。中東から石油を輸入する準備をしたり4月にショルツ首相が来日して川崎で水素ステーションを視察したり、ロシアの天然ガスに依存しない方法を模索してはいますが、すぐに輸入を打ち切るのは難しいのが本音でしょうね。

 

 

 

――日本は中東の石油の割合が多くてロシアの資源の割合は低いのですが、ドイツはロシアへの依存度が高いですよね。

 

マライ ドイツ人は「アメリカへの依存度をこれ以上高めず、ヨーロッパはヨーロッパでやっていきたい」という気持ちが強くて、そこが日本とは大きく違います。ロシアからのガス輸入を増やしていたのも、アメリカの影響力が強い中東の石油に頼りたくなかったから、という部分が大きいんです。今回はそれが裏目に出た形ですね。

 

 

 

――確かに日本はアメリカ第一の度合いが強いです。

マライ そうですよね。ドイツも軍事的にはNATO、つまりアメリカに頼って軍事費をずっとケチってきた部分はあるんですが、“EUの盟主”としてアメリカとは一定の距離をおきたい、みたいな願望も強い。あと、今回の戦争についての報道で日本と大きく違うのは「お金」の話です。

 

「これを自分たちの税金で復興するんだよなぁ」

――戦費や軍事費のような話ですか?

マライ それももちろんですけど、ウクライナの被害状況を見て「これを自分たちの税金で復興するんだよなぁ」と思っているのはたぶん世界中でドイツ人くらいだと思うんです。ドイツは経済的にEUで1人勝ち状態なので、ヨーロッパで何かあったら自分たちが支援するんだという意識をはっきり持っています。今回も武器の提供などですでに相当なお金がかかっていますが、戦闘が終わったとしても、復興支援でドイツにさらなる支出が待っているのは間違いありません。

 

 

 

――確かに、「日本の税金が使われる」という感覚を持っている日本人は多くなさそうです。自分たちの税金が使われることへの反発はないんですか?

 

マライ ドイツ人は、自分たちが経済的に好調なのはEU諸国から流れ込んでくる優秀な人材のおかげだとわかっているので、ヨーロッパの国を支援すること自体は納得している人が多いです。ギリシャの財政破綻の時も、結構なお金をはらっていますし。ただ、タイミングが厳しいなぁという感覚は正直あるでしょうね。

 

 

 

――タイミングとはどういうことでしょう。

 

マライ 今年はドイツにとって、古くなった国内インフラをいよいよ一気に整えるぞという年だったんです。16年続いたメルケル体制が終わって、後を継いだショルツ首相が内閣を「内政向き」のメンバーで揃えたのもそのためでした。というのもドイツは長年のケチ政策で、国内のインフラが実はボロボロ。特にインターネット周りは本当にひどくて、電子マネーやクレジットカードを使える店が他国とくらべても少なく、ネットの回線速度もかなり遅いんです。

 

 

 

――ドイツといえば成功している先進国の代表のようなイメージで、それは意外です。

 

マライ ドイツのネット周りの整備が遅れているのは国内ではネタになるくらい長年の課題で、ようやくそれを解決するための布陣が整った直後に、この戦争が起きてしまった。政府は内政特化チームなのに、戦争という究極の外交問題に対応しなければいけないというハードな状況だったんです。

 

 

 

――それはたしかに厳しいタイミングですね。

マライ どうにもズレた発言が続いて疑問視されているアナレーナ・ベアボック外務大臣はそのあおりを食らっている筆頭ですね。彼女は緑の党の元代表で、気候変動問題などにはとても強いけれど戦争のようなハードな外交は専門ではありません。ウクライナにヘルメットを送って世界中からバッシングされた時も、「首相がメルケルだったらもうちょっとマシな対応ができたのでは」みたいな雰囲気は正直ありました。

 

 

 

――ドイツの初動はかなり迷走している雰囲気がありました。

 

マライ 1つ同情するとすれば、ドイツにとって、「ロシアと戦う」というのはタブー中のタブーなんです。第二次世界大戦でナチスドイツはソ連で2000万人とも言われる人を殺害していて、それを80年間謝りつづけてきました。なので「ロシア軍と戦うための武器を提供すること」への抵抗感は世界で一番強い。ウクライナ侵攻はどう見てもロシアが悪い、しかし自分たちがロシアと戦っていいのか……という葛藤が政治家にも一般市民にもあったのだと思います。

 

「ナチスの悪行を謝りつづける」というスタイルが崩れる?

 

――日本と韓国や中国の関係にも似ている気がしますが、ドイツでは「ロシアに謝りつづける」ことについて国内の意見は一致していたのでしょうか。

マライ 少なくとも今回の戦争が始まる前は、ほとんどのドイツ人が「ロシアには特にひどいことをしてしまった」という意識を持っていたと思います。独ソ戦が終わった5月9日にロシアで「対独戦勝記念日」を祝う式典があるんですが、その式典には毎年ドイツから政治家が出席してナチス時代の戦争を謝罪していました。今年はさすがにドイツ側としても出席するわけにもいかなかったようですが……。ただこれでドイツが80年かけて築いてきたロシアとの関係性が崩れるとすれば、その影響は計り知れません。

 

 

 

――どういうことでしょう?

 

マライ ドイツは第二次世界大戦の後、ナチスの悪行をとにかく謝りつづけることで国際社会の信頼を得るという土下座スタイルを貫いてきました。ロシアに対しても同じです。ただ今回の戦争で「過去の過ちをロシアに謝る」ことに抵抗感を持つ人が増える可能性は高いですよね。しかもロシア側がウクライナのことをナチの後継者だと難癖をつけていて、ナチスを批判すること自体が若干“うさんくさい”感じになってしまった。そうすると「ナチスの行動を反省しつづける」というドイツ人のアイデンティティが崩れる危険があるんです。

 
 

「ドイツや日本が80年かけて育てたアイデンティティが…」

 

――たしかに、「ナチスって言うやつがナチス」的などっちもどっち論に引きずり込まれそうな気配はあります。

マライ そうなんです。ドイツが今回の戦争で失った最大のものは、実はそれかもしれないと思っています。インフラ整備の機会を失ったことや、ウクライナ支援のための支出、実は軍事的にボロボロだったことが世界にバレた以上に、「悪役ナチスを全否定して反省しつづける」という戦後ドイツを支えた原則の説得力が失われるのは本当に怖い。下手をすると「ナチスはそんなに悪くなかった」というような勢力さえ大きくなりかねないですから。

 

 

 

――第二次世界大戦で負けた国として、日本にとっても他人事ではない悩みな気がします。

 

マライ 今回の戦争の最大の被害者はもちろんウクライナですが、ドイツや日本が80年かけて育ててきたアイデンティティへの影響もかなり大きいと思います。ロシアはある意味で国ごとカルト化してしまいましたが、それにドイツのネオナチや日本の陰謀論者のような人たちが呼応していく可能性がある。本当に気が重くなりますね。