美國, 韓美關係

韓国の反米牛肉暴動と中国

이강기 2008. 7. 7. 09:49
韓国の反米牛肉暴動と中国(2008/7/2)
鈴置 高史 日本經濟新聞 編集委員

6月29日未明、ソウル中心部で機動隊のバスを引き倒そうとして放水を浴びる抗議集会参加者(共同)
 韓国の大規模で過激な反政府デモが止まらない。デモが象徴する韓国社会の分裂は、内政の混乱にとどまらず外交的な迷走をも加速するだろう。ちょうど今、韓国を引力圏に引き込もうと中国が動き始めたところである。

 

「牛肉」の背景の「社会分裂」

 

 米国産牛肉問題をきっかけに5月初旬に始まった韓国の反政府デモ。デモ隊が警備に当たる警察官に鉄パイプで暴行を働いたり、警察車両を転覆させるのが常態化した。ここ一か月ほどは新聞各社に暴徒が押しかけ、建物を外から封鎖するのが新たな「流行」だ。さらに最近は、暴徒はデモの通り道の商店も破壊し始めた。

 

 

 6月28、29日両日のソウルの週末デモでは機動隊員を含む警察官112人が負傷した。米国人と見なされる白人を、いや、そうでなくても外国人を街で見かければ威嚇する韓国人が増えた。

 

 

 国会は一か月も開けず、総辞職を表明した内閣の処遇もすでに二週間、宙に浮いたままだ。韓国は無法状態、あるいは無政府状態に陥ったかに見える。

 

 世界は「韓国の野性」に驚く。「なぜ、牛肉ぐらいで連日、こんなに過激な暴動を起こすのだろう」。実は、韓国のエスタブリッシュたちもその「唐突さ」に驚いた。ひと月も経って、ようやく識者が説明を試みた。

 

 宋煕永・朝鮮日報論説室長は5月30日、同紙にこう書いた。

 

 この10年間、韓国では一気に格差が拡大した。『持たざる者』は過去の性急なグローバリズムこそが格差の原因と見なし、それをさらに進めようとする李明博政権に反対の声をあげているのだ……。

 

 

 「ボーナスもなく時間外手当もなく、有給休暇もない非正規労働者の数が560万人にものぼる。うち、70%が国民年金も健康保険も失業保険もなく、貧困層への墜落の崖淵にぶら下がっている」。

 

 

 韓国の李明博政権は、大規模な連日のデモが左翼あるいは北朝鮮の指導を受けた勢力によるものと考え、捜査に乗り出した。宋煕永・論説室長も「扇動勢力の存在」を否定してはいない。が「背景にいる人々を何人か逮捕しても『牛肉騒ぎ』は終わる話ではない」と書いた。米国産牛肉の輸入解禁措置は「性急なグローバリズムの象徴」に昇華しており、その根にある深刻な格差問題から政府は目をそらすべきではないとの主張である。

「格差を生んだグローバリズム」

 韓国の格差は日本の比ではない。ここ数年、「日本にも格差はあった」と報じようと多くの韓国メディアが記者を東京に送った。だが、ほとんどの韓国記者が「韓国の格差」が実は日本とは比べものにならないほど大きいものであることに気づき、肩を落としてソウルに帰った。

 

 さらに「日本と比べ韓国社会のセーフティネットは極めて不十分」(韓国紙の東京特派員)なため「いったん下層に転落すると、とめどもなく悲惨な暮らしを余儀なくされる」現実がある。

 

 平均的日本人が分かりにくいのは「格差をもたらしたのは国際化」という平均的韓国人の発想だろう。

 

 1997年の経済危機を契機に韓国では多くの人が職を失った。ここでまず、韓国人は「金融市場の開放とそれに付け込んだ米投機資本こそが我々を貧困に追い込んだ」と信じた。

 

 韓国は国際通貨基金に助けられ危機を脱したのだが、その代償として、カネとモノの双方の完全開放を強いられた。先進国企業と真正面から戦うことを余儀なくされた韓国企業は、景気回復後も正規労働者を増やさず、非正規労働者の比率を引き上げることで人件費を抑え続けた。今や、被雇用者の半数が非正規労働者とされる。韓国人の「国際化が貧困と格差をもたらす」という見方はさらに強化された。

 

 そのころ、韓国煙草人参公社は新製品には韓国名のみをつけるよう方針を変えた、とうわさされた。韓国人は排外的気分を高め、英文名のタバコなどは買わない、との「空気」がうわさの背景にあった。

 

 危機後、韓国政府も外貨準備高の維持に神経質を尖らせた。そのあまり、国内にカネを溜め込み、過剰流動性によるバブル経済を引き起こした。土地を「持つ者」と「持たざる者」の格差がさらに広がり、意識の上でも決定的に異なる社会階層をかたち作った。

 

 

 日本人は「格差は小泉改革のせい」などと国内要因を異常に重視する(「格差を生んだほどの大改革か?」=2006年5月12日参照)。これに対し、韓国人は異常なほどに「外からもたらされた格差」と考える。

 

「米韓同盟は歴史の産物」

 ソウルで牛肉デモがすっかり定着したころ、北京でも「事件」が起きていた。

 

 

 5月27日、李明博大統領が中国を公式訪問した。この日、定例会見で中国外務省の秦剛・報道官は「米韓軍事同盟は過ぎ去った歴史の産物だ。変貌した域内の安保問題は、冷戦時代の軍事同盟では処理できない」と語った。記者からの「(最近、韓国が進めている)米韓同盟強化を中国はどう考えるか」との質問に答えたものだ。

 

 朝鮮日報(5月30日付)によると、28日、駐北京韓国大使館は韓国メディアに対し「(秦剛・報道官の述べた)『歴史的産物』とは『歴史的遺物』を意味しない。米韓同盟は歴史の過程で生まれた、との意味で語られた。中国外務省は『米韓同盟を批判したものではない』と対外的に釈明する計画だ」との報道資料を配った。

 

 しかし、翌29日、秦剛・報道官は定例会見で自身の27日の発言に関し「完全なものであり系統だったもの」と述べて、韓国政府の期待した「釈明」はもちろん「修正」も一切しなかった。

 

 中国は李明博政権が発足して以来、韓国に対し繰り返し「米国寄りの外交姿勢に戻るな」と明白なサインを送っている。朝鮮日報によると、李明博氏の当選直後にソウルを訪れた中国の特使は、李明博氏本人に対し「『大統領は米国寄り』と韓国メディアは書くが、そんなことはないと信じている」と語った。中国の官営メディアも、同様の文脈の記事を時々掲載する。

 

 秦剛・報道官の発言も聞かれて答えたものとはいえ、米韓同盟を快くは思っていないことを改めて韓国に通告したつもりなのだろう。少なくとも韓国のメディアはそうとらえている。

ブッシュ訪韓見送り

 7月に予定されていたブッシュ米大統領の訪韓も延期されることが6月24日に発表された。ホワイトハウスはそうは言わないが、牛肉暴動が理由であることは明らかだ。

 李明博大統領による親米路線への回帰の動きの中で、牛肉に端を発した韓国の反米ムードと、それがもたらす米国の韓国離れは中国にとって心地よいものであるのには違いない。

 

 もちろん、街頭に出て反米や反政府を叫ぶ人々すべてが親中派、というわけでは決してない。しかし、相次ぐ二国間の摩擦で中国嫌いが一気に増えた韓国で、反米ムードが高まるのは中国にとって悪い話ではない(「韓国の不安」=2007年10月1日参照)。

 

 ただ、牛肉デモを深く分析すれば、中国にとって有利なのは「反米ムードの高潮」という側面よりも「政権の統治能力低下」の方ではないかと思われる。

 

 潜在的な対立の度を高める米中の間で、韓国の外交は微妙な舵取りが必要だ。軍事的には米国の側に立ちながらも、韓国を引き寄せようとする中国を決して敵に回さない――。このきわどい道を歩むには、冷静に国益を計算した「賢明な外交」を展開するしかないのだが、それとて韓国に「国民の団結」があってのことだ(「韓国の反米気分」=2007年5月9日参照)。

挫折する新自由主義

 李明博大統領の基本戦略は「新自由主義的手法で経済のパイを拡大し『持たざる者』を豊かにする。これにより『持つ者』に加え『持たざる者』の支持も得て、強いリーダーシップを確立する」――であった。

 

 だが、その戦略は早くも挫折した。社会階層間の亀裂が予想外に大きく、牛肉ぐらいのことで国政が容易に麻痺してしまうことが明らかになった。政府系企業の民営化や公務員削減など、李明博大統領が予定していた新自由主義的政策の実施は極めて困難である。すでに、景気拡大の起爆剤に考えていた大運河建設計画はデモが激しくなる中、事実上の放棄を宣言した。

 

 外交だけでなく経済でも韓国は岐路に立っている。今年は1997年の経済危機以降、初めて貿易収支を記録しそうだ。石油価格の高騰が引き金だ。が、背景には「対中黒字が減る一方、対日赤字が増える」といった産業の比較劣位の顕在化がある。

 

 経済環境が悪化するなかで新政権が有効な対策を打ち出せないことを考えると、韓国経済は曇りから雨に突入しそうだ。そうすれば、大統領の強力なリーダーシップや国民の団結は得るべくもない。

 

 対外的にも国益を深く考えた冷静な外交ではなく、外圧に右往左往するその場しのぎの外交に陥る可能性が大きい。前政権時代に相当大きな距離のできた米国との関係修復にも動けなくなるかもしれない。

 

 例えば、米国が韓国の新政権に望んでいる、ミサイル防衛や対テロ共同訓練への参加に対しては「中国の怒りをかうから参加すべきではない」との意見はデモ以前からだって多いのだ(「『後戻り』できない韓国」=2007年11月26日」参照)。

歴史は繰り返す、か

 朝鮮半島では、国際的勢力図の変化が国内対立を異常なまでに増幅することが多い。大陸と地続きという地政学的理由からだが、それにしても島国の日本人にとって、大陸の影響力の大きさは想像しにくい。

 

 近代以前は置くとしても、120年前に日本が急速に台頭し韓国の宗主国、中国と半島で対立した時、韓国の政界は親中派と親日派に分かれ外国の力を背景に権力を争った。当然、これが外国の勢力を呼び込むこととなり、日清戦争がこの半島で勃発した。日露戦争はプレーヤーが清からロシアに代わっただけの構図で、やはり同半島から始まった。そして、親日派と親ロ派に分裂した韓国は結局、日本の植民地に転落した。

 

 第二次大戦直後に、日本を打ち破った米国が韓国に独立を与えようとした際も、半島の人々は親ソ派と親米派に分かれ激しく争った。それは当然、米ソの介入と相まって南北の自己分裂を引き起こした。

 

 いま、米中が経済面でも軍事面でも競う時代に入った。台頭する中国は、昔の宗属国である韓国が米国の引力圏から脱し自らの側に戻るのが当然、と思い始めている。国家として明確に主張するかはともかくも、個人としては「それが中華の栄光を取り戻した証拠のひとつになる」と語る中国人が増えている。

 

 

 そして今、期せずして韓国は分裂し始めた。

 

 

 「また、歴史が繰り返すのではないか」。

 

 韓国の知識人にこう問いかけると、奇妙なことに明快な返事が戻ってこない。少し前までなら「韓国の主体性を見そこなっている」、「日本人特有の植民地史観による偏見だ」などと強烈な反論があったというのに。

注)引用した朝鮮日報の記事は電子版(韓国語)。