中國, 韓.中關係

「性解放は欧米の陰謀 惑わされず民族の誇りを持て」- 中国「性博覧会」で 中年女性が憂国の大演説

이강기 2015. 10. 17. 15:06

「性解放は欧米の陰謀 惑わされず民族の誇りを持て」

 

中国「性博覧会」で
中年女性が憂国の大演説

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)  早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

中国メディアは何を報じているか

 

中国のネット動画配信サイトで、ある中年女性が乱入して行った大演説が話題になり、多くの視聴者を獲得している。それは5月末に古都、西安市で開かれた「性博覧会」の会場で起きた出来事である。

 

 演説の主旨を一言で言えば、「性の解放は欧米の陰謀だ。色情に浸り、堕落せず、民族の誇りを持て」ということである。商業主義化したセックス(性)が氾濫する中国社会において中国人として礼節、恥を持って、子供たちに道徳を説き、性の自由化に反対して、中華民族の尊厳を以って国を愛せ、と切々と主張したのだ。

動画再生回数は300万回を超える

西安市で開かれた「性博覧会」ポスター

 

 下心丸出しで押しかけた男たちの中でガードマンに遮られながらこのような主張を続けた姿はある種感動的で、肌も露わな女性モデルにかじりつきの中年男性たちからさえ拍手が沸き起こったほどだった。そしてこの動画は瞬く間に中国中で話題になり、様々なサイトで転載され、鳳凰テレビサイトでの動画再生は300万回を超えた。

 

 演説が行われたのは5月30日。下着ショーのモデルが舞台から引っ込んだ後、中年女性2人が突然警備員の制止を振り切り、マイクをひったくって舞台に上がり、30分にわたる演説をぶった。乱入の情景や場所は奇抜で、訴えの言葉は中国的で日本人からすると滑稽だが、主張に一部道理はあり、中国社会での「性」を巡る問題が浮き彫りになっているので二つの演説のうち初めの演説全文を紹介し、中国社会の性の問題、保守派の人々に広がる危機感について考えてみたい。ちなみにこの「性博覧会」の正式名称は「生殖健康製品博覧会兼西安性芸術文化祭」であり、女性が主張するように文化とは名ばかりの性の商品見本市でもある。

 

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【2014年6月28日『観察者網』(演説部分抜粋訳)】

 

 西安市民の皆さん、注目です。今日は博覧会の二日目です。私は良識ある市民の皆さんに呼びかけなければならない。中国人は性に乱れ溺れてはならない。文化の名目で西安の名声を台無しにしてはならない。友達、同胞の皆さん。こうした演説は適切でないかもしれない。しかし私たちは行動せざるを得ない。これは今の中国の正邪の二つの力のせめぎ合いなのです。

 

演説を行う女性。素顔は出てない。動画再生数は333万超(鳳凰テレビネット版6月28日)
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同胞の皆さん、親愛なる皆さん。百年前、帝国主義は中華の大地を蹂躙し、侵略者はアヘンで以って中国人の精神と身体を破滅させ、大量の金銀を略奪し、私たちの祖国を滅亡の惨状に押しやった。これは永遠に忘れられない中華民族の恥辱です。百年経って西欧の反中勢力は未だ野心を持っています。彼らは中国を瓦解させ、彼らの方式に転換させたいのです。性の自由と解放の衣をまとい、我々民衆を淫乱に貶め、精神と身体を蝕み、民族精神を瓦解させ、土地を占領しようとしている。

 

 良識を持つ中国人の皆さん一人ひとり、目を凝らしてください。今日の中華の大地は一体どうなったか。30年以上前、私たちの精悍な青年たちは国境を守ったが、30年後、「色情」害毒に侵されていない子供はどれだけいるか。色恋に惑わされ、溺れる中年、老人もいる。滅亡の危機に直面した時、銃を手に取って国を守ろうという戦士は現れるのか。

祖先に顔向けできない

 あらゆる人が色情害毒に侵されたら誰が我々の礼節の国を記憶に留めるのか。中華民族の決して屈しない高貴な魂を記憶に留めるのか。今、一部の良心を持たない文化的な漢奸(売国奴の意:筆者)が外国勢力と結託して同胞を淫乱に惑わそうとしている。彼らは祖先に顔向けできず、良識を持たない。自分の育った土地やその土地で暮らしてきた父親、親戚にさえ顔向けできない。今日人を集めてこのような下品な活動を行う目的は何か。私欲を満たすための誘惑で、製品を売り込むため以外にない。人々をかどわかし、多くの人がより淫乱になって市場に参入するように植え付けようとしているのです。

 

 自問してみてください。我々の祖先はこれまでこんな下品な性生活を送ってきたことはないのです。我々の祖先は長い間、しっかりと落ち着いた生活を送ってきた。彼らは今のようにエイズや性病に直面せず、未成年の子女の早すぎる性行為を心配することはなかった。今のように未婚で病院でいやいや中絶することなどなかった。彼らは見合いをして一緒になり、別れることなど考えられなかった。

 

我々中国人の子宮はこの民族の未来を託すに堪えられますか。女性は大地、女性は国民の母です。でも誰が民族の未来を託す母親を混乱に陥れようとしているのか。民族の男女が淫乱に溺れて文天祥や岳飛のような英雄は出てくるか(文天祥:宋時代の軍人・政治家、元の国に捉えられ寝返るように求められたが断り刑死;岳飛:南宋期の武将、女真族の国、金との戦いに連戦連勝したが無実の罪で投獄され非業の死を遂げた:筆者)。花木蘭や孟子、岳飛の母親は出てくるか(花木蘭:男装して異民族と戦い北魏を連勝させた女傑、京劇やディズニーのアニメ映画にもなった;孟子:中國戦国時代の儒学者、仁義による王道政治を説いた:筆者)。享楽に浸りきって我々の文化の根はまだ腐らずにいられるのか。

 

 「孝悌忠信、礼儀廉恥」(父母に仕え、目上の人によくしたがうこと、礼を尊び 儀を 重んじ 清く正しく無欲で 恥を知ること:筆者)は終始中華民族の終わりなき精神脈絡として続いてきたのです。恥辱なくして「孝悌忠信、礼儀廉恥」がありうるでしょうか。この民族に神聖な子孫がありえるのでしょうか。もし我々中華の伝統的倫理道徳の滋養がなくなったら何を以って中国人といえるのでしょうか。最も恐ろしいのは物質的に貧しい事ではありません。精神的な乞食になり下がることが恐ろしいのです。民族が皆倫理道徳において、そして正確な世界観が転覆したとして人々は貧困を笑っても娼婦を笑わず、この世界の家庭や男女がみな色情に侵食されたとしたら何を以って中国の夢を持てるのでしょうか。

中華民族の危機?

 35年前一人の若い兵士が「対越自衛反撃戦争」(中国での中越戦争の呼称:筆者)で犠牲になり、その母親が35年経って初めて墓参りした。彼女は墓参りしたくなかったのではありません。35年経って初めてお金を充分に貯められたのです。年老いた母親は墓碑をさすりながら涙を流しました。こうした情景は今日のこうした場面と比べようがありません。

 

 私たちはあの年老いた母親や犠牲になった烈士たちにどう顔向けできるのでしょう。抗日戦争や解放戦争での烈士が今日我々の幸せな生活のために血沸き肉躍る人生を犠牲にしたのです。彼らが自分の命をこのような恥知らずの腐った生活のために犠牲にしたと分かったら墓から飛び出してきて良心がない子孫を叱りつけるでしょう。

 

目を覚ますのです! 友よ、同胞の皆さん。色情に惑わされてはなりません。祖先の気持ちを害してはならない。親が子を産むのは淫乱にするためではない。自分の子供が露出姿で舞台を歩き回っていたら涙するでしょう。出し物に参加する皆さん、もしあなたに人の血が流れているならこの荒唐無稽で恥知らずな舞台から離れてください。

 

 私たちの国歌はこのように歌います。「立ち上がれ、奴隷に甘んじない人々よ。我々の血肉で新しい長城を築こうではないか。中華民族が最も危険に立ち至った時、一人一人が最後の叫びをあげるだろう」。さあ立ち上がるのです。奴隷に甘んじない人々よ。昨日、我々は帝国封建主義の奴隷にされかけ、今日は無知で道徳の欠如した色情の奴隷として踏みにじられている。中華民族は危険な時にいるのです。

 

 習近平総書記は、我々は端正な核心価値観を持つよう主張しています。彼は我々全国民が徳治の道を進み、国の鉄釜の飯、人民の糧食を食べ尽くす汚職官吏たち、そしてこのような無知下劣な文化ゴミに操られて西安市民の精神世界が迫害されるのを正そうとしている。中国人にはこのような腐った文化、退廃的な出し物はいりません。私たちはプラスエネルギー(正能量)によって中国の夢を実現させる必要があるのです。中国人のプラスのエネルギーを発揮させる時です。だまされてはいけません。

 

大連市で行われた成人フェスティバル では日本のAV女優が卵を投げつけられた (共産主義青年団機関紙『中国青年報』ネット版)

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【解説】

 演説の好きな中国人社会だが、中国人の愛国心をくすぐる内容であったことからも評判を呼んだ。セックス製品見本市での演説という意味でも注目を浴びた。おまけに「性博覧会」には後日談もある。8月初頭に遼寧省大連市で行われた「成人見本市」でも同じように中年女性によって出演した日本のセクシー女優、丘咲エミリさんと北川杏樹さんが舞台に上がった際に腐った卵を投げつけられるというハプニングがあった。会場の外には「国恥を忘れるな」との横断幕も掲げる抗議者も現れた。軍事的な侵略の傷跡が癒えぬまま、今度は色情文化による「平和的手段による転覆(和平演変)」と捉える市民は少なくなく、大連での抗議活動は西安での抗議に端を発したものかもしれない。

 

 それにしても日本を含む欧米の色情文化による浸食への警戒心を見ると中国社会に広まる危機感が窺い知れて興味深い。特に日本の成人ビデオの海賊版は中国社会に広く行き渡り、ほとんどの若者がセクシー女優の蒼井そらさんを知っていて「老師(先生)」と呼ばれるほどである。それでも演説した女性のような人からするとこうした「文化的侵略」への嫌悪感は激しい。

 

 ただ女性の演説にも不可解な点がある。演説内容は良くできているが、女性の写真はネット上でいくら探しても見つけられない。動画も多く出回っているが、もう一人のピンク色の服の女性は顔も出ているのに白い服の女性にはモザイクがかかったものしか見つからない。政府や婦人組織職員の可能性もあるが、検閲があるとはいえ、これほど話題なのに写真が全く出ないのは奇妙である。

 

 また中国で問題視される汚職に絡む高官の愛人問題への言及もない。汚職高官の愛人とのピンク写真、動画が拡散するような「色情ゲート(中国語では艶門事件と称される)」事件こそが真の意味で政権の問題だろうが、演説の議論では当局の意向を受けたような民族的尊厳ばかりが強調される。内容には説得力があるが、政府が触れてほしくない部分はきれいに取り除かれている。色情の問題を他人のせいにしているが、根源であるはずの自国の問題には触れずナショナリズムの問題に置き換えているのだ。

 

 もちろん日本でも未成年者誘拐(未遂)や性犯罪が後を絶たず、女性が主張する「孝悌忠信、礼儀廉恥」は我々日本人にも耳が痛い話だ。「人のふり見て我がふり直す」必要はあるだろう。