「私をきれいにしてくださいね」
ヒューマンインタレスト(三面記事など、読者の興味をそそるようなニュースのジャンル)のリポーターであるエスター・ホーニグさんは20カ国以上40人のフォト・エディターたちにそう頼んだ。Fiverrというサービス共有サイトを通して、ホーニグさんは、自分の顔写真にフォトショップ加工を施してもらうよう世界中へ自分の顔写真を送信した。さまざまな国の文化的価値観が、「美」の基準にどのくらい影響するのかを計りたかったのだという。その結果、「完璧な女性」に対する見方の違いが浮き彫りになった。
ホーニグさんは、全ての国のエディターが、美に対して持っているそれぞれの視点を彼女の画像へ反映していることに気付き、その国の文化的価値観によって美的な好みが分かれることに驚いたという。中でも、モロッコから返送されてきた画像を最初に開いた時には「ちょっとショック」だったと、ハフィントンポストへのメールで明かした。「いかに、自分に文化的認識度が欠けているかを教えてくれましたね。確かに、イスラム教が主流の国であれば、私の画像にヒジャブ(イスラム教徒の女性が人前で髪を隠すのに用いるスカーフ)の画像を加えようと考えるのは、彼らの文化的慣習から当然のことでしょう。私にとって、美的感覚だけでなく、宗教と慣習という概念にまで触れているこの画像は、今回のプロジェクトに深みを与えてくれるものとなりました」
自分の画像に、これほどさまざまな視点から手を加えられるという経験は、ホーニグさんの自己認識にも大きな影響を与えた。「自分からはじめたことですが、その結果に満足しています。ただ、以前は気付かなかった部分が色々見えてきてしまいました。例えば肌のくすみなど、ほとんど全てのエディターが修正を入れてくれました。フィルターやクローニングブラシで微妙にソフトな感じになったり、かと思うと大幅に手を加えて、継ぎ合わせたり引き伸ばしたり、アングルを変えたりして、顔が完全に変えられてしまったり。初めて見た時に、思わず叫んでしまったものもあります」
ホーニグさんは、今も進行中のこのプロジェクトから「教訓」を引き出すことに戸惑いを感じている。「集まったビフォー・アフターの写真をめくりながら、加工した人の文化的起源を表す美のモデルに特徴があることを指摘したとしても、結局それは私たちの解釈に基づいたものでしかありません」
それでも、このプロジェクトによって、美しさの基準はひとつしかないという神話が否定されたといえる。ホーニグさんが自身のウェブサイトで書いているように、「フォトショップは現実には手に入れられない美の基準にまで到達させられますが、世界的規模で各国の基準を比較した場合、理想を達成するというのはさらに難しいでしょうね」
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