日本, 韓.日 關係

GSOMIA継続は一時凌ぎ。韓国が目指すのは…

이강기 2019. 11. 23. 20:15

GSOMIA継続は一時凌ぎ。韓国が目指すのは…


予想外だった破棄の「停止」。武器調達の面から浮かび上がる対米自立の路線


高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

拡大GSOMIAの延長通告を受け、質問に答える安倍晋三首相=2019年11月22日、首相官邸


 韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長は、まさに急転直下の土壇場での大どんでん返しとなった。ただし、今回の決定は、日韓関係の最悪事態を避ける当座凌(しの)ぎの時間稼ぎの策だ。すべては、最大の懸案である元徴用工問題をめぐって、日韓で折り合いがつけられるかにかかってくる。


 また、安全保障をめぐっては、今回の騒動で米韓の間に不信感と亀裂が残り、尾を引く可能性が高い。文在寅(ムンジェイン)政権は自国の防衛産業の強化とアメリカ以外の武器調達国の拡大によって、対米依存度を減らす方向にすでに舵(かじ)を切っており、アメリカ離れの流れは今後も止まりそうにない。


意外感があったGSOMIA継続

 今回の韓国のGSOMIA継続は、筆者を含め、大方のジャーナリストや外交関係者、学者らが「GSOMIA延長はなし」と予想していただけに意外感があった。


 そう予想したのも無理はない。アメリカは今月に入り、国務省のディハート首席代表やクラーク国務次官、スティルウェル国務次官補、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長、さらにはエスパー国防長官ら高官を次々とソウルに派遣し、協定延長を強く求めていた。それにもかかわらず、文大統領は15日のエスパー国防長官との会談で、「安全保障上の理由で輸出規制を強化した日本との軍事情報共有は難しい」と述べていたからだ。



背景にトランプ政権の最大限の圧力

 韓国の方針転換の背景にいったい何があったのか。詳細は今後徐々に明らかになっていくと思われるが、11月23日午前0時にGSOMIAの失効が迫るなか、トランプ政権が文政権に最大限の圧力をかけたのは間違いない。特に、韓国大統領府(青瓦台)の金鉉宗(キムヒョンジョン)国家安保室第2次長が11月18日からワシントンを2泊3日間で訪問、ポッティンジャー国家安全保障担当大統領副補佐官らとGSOMIAへの対応について協議したのが注目される。


 金氏は、国防力強化で韓国の自立を掲げる「民族・自主派」の一人で青瓦台の中でも影響力が強く、8月のGSOMIA破棄決定でも大きな役割をはたしたとみられている。米韓FTA交渉の責任者などを務めたタフネゴシエーターでもあり、日米といった大国への対抗意識が強いことで知られている。


 いわば韓国の民族派切り込み隊長とも言える金氏が、直近の訪米中にアメリカ政府高官からGSOMIA延長に向けて、あらためて強くネジを巻かれたと筆者はみている。金氏は帰国後の21日に開催された国家安全保障会議(NSC)常任委員会で訪米の結果を説明した。その中で、GSOMIA延長を求めるアメリカの厳しい姿勢を伝えたのだろう。


 この間、文政権に批判的な韓国の「朝鮮日報」は21日、トランプ政権から文政権への脅しとも取れる強烈な報道をした。米韓防衛費分担金特別協定(SMA)に向けた交渉で、アメリカはこれまでの5倍に相当する防衛費負担を韓国に求めているが、韓国がこれに応じない場合に備え、朝鮮有事の際、地上戦に投入される在韓米軍主力部隊の一個旅団約4500人を、トランプ政権が撤収する方向で検討を行っていると伝えたのだ。


 アメリカ国防総省は同日、この在韓米軍一部撤退の朝鮮日報の報道を否定したが、火のないところに煙は立たない。文政権にとっては、かなりの圧力になったはずだ。


日韓のメンツを立てる「玉虫色」決着

拡大GSOMIA問題で開かれた日米韓防衛相会談を前に手をつなぐ(左から)韓国の鄭景斗国防相、米国のエスパー国防長官、河野太郎防衛相=2018年11月17日、バンコク 
 


 今回の韓国のGSOMIA延長は、日韓両国のメンツを立てる「玉虫色」の決着ともなった。

 韓国側は、日本の輸出規制をめぐり、「日本から局長級対話再開という譲歩を引き出せた」と国内向けに主張できる。実際、康京和(カンギョンファ)外相は22日、「目標である輸出規制措置の撤回のための土台ができた」と述べた。


 かたや日本側は「韓国の世界貿易機関(WTO)提訴手続きの停止とGSOMIA延期で、韓国が折れた。日本は何も譲歩していない」と主張できる。筆者はアメリカの圧力を受け、韓国が実質上かなりの譲歩をしたとみるが、両国政府が国内向けに都合よく解釈し、説明できるという意味では、見事な合意だった。


 いずれにせよ、北朝鮮の核ミサイル戦力増強や、世界初公開の極超音速滑空ミサイルDF(東風)17に象徴される中国の急激な軍事的台頭を踏まえれば、日韓、そして日米韓が防衛協力のパイプをできるだけ太く維持しておくことは必要不可欠だ。


 日韓の外交交渉の「勝った、負けた」の話ではなく、東アジア全体の厳しい安全保障を大局的に考えることが肝要だろう。さもなくば本当の勝者はいずれ中朝ロになりかねない。



変わらない韓国の対米自立路線

拡大RCEP首脳会合に出席した韓国の文在寅大統領=2019年11月4日、バンコク近郊

 文政権は今回のGSOMIA延長問題で、最終的にアメリカの要求に屈した。とはいえ、中長期的にみれば、対米自立やアメリカ離れは変わらないとみられる。



 そもそも文政権は、「南北融和」や「民族愛」を自らの政策の「一丁目一番地」として重視し、政権発足時から一貫して北朝鮮に融和姿勢をみせている。そして、韓国の歴代政権と比べてより強く、アメリカから距離を置く対米依存脱却の路線を貫いている。


 親北路線の文政権にすれば、アメリカにべったりし、北朝鮮や中国、ロシアを敵対視する姿勢は、朝鮮半島の緊張緩和を妨げ、冷静時代同様に南北分断を固定するものとして邪魔に映っているのではないか。


 こうした文政権の対米自立の方針は、とりわけ武器調達の面で近年、極めて顕著になっている。韓国は日本と違い、官民あげて武器兵器の自国生産を推進したり、その購入先の国をアメリカ一辺倒ではなく分散させたりしている。筆者が東京特派員を務めるイギリスの軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」の日々の報道でも、このところ韓国の武器輸出のニュースがぐっと増えてきている。


 日本では、武器の輸出に批判的な人が少なくない。だが、そもそも武器輸出に反対する人は本来、武器輸入にも断固反対しなければダブルスタンダードになるはずだ。だが、現実はそれほど単純ではない。中朝の急速な軍拡が続くなか、日本は武器を輸入して防衛力の強化が避けられないのが実情だ。


自国生産基盤を強化するために

 アメリカといった外国からの武器輸入を減らし、安全保障面での自立度を高めるためにはどうしても自国生産基盤の強化が必要になる。そして、自国生産基盤を強化するためには、安いコストでなるべく多くの良質の武器を作ることのできる、国際競争力のある軍事防衛企業を育てなければならない。そのために軍事防衛企業は、スケールメリットを生かしながら、どうしても海外市場を視野に武器輸出に力を入れていかなくてはならない。そうでないと、自国生産はコスト高になり、割りが合わなくなる。


 もっと言えば、安全保障面での対米自立を唱えたとしても、アメリカ一辺倒で武器を購入していれば、対米自立はいつまでも叶(かな)わない。好むと好まざるとにかかわらず、対米自立を目指すならば、自国生産基盤の強化に資する武器輸出に向かわざるを得ない。これが世界の厳しい現実だ。

 そして、韓国はすでにその方向で動いている。




ヨーロッパで武器輸出を拡大する

 韓国は2006年に韓国防衛事業庁(DAPA)を設立し、ヨーロッパを中心に国際的に武器輸出を拡大し、2013年時点で30億ドル相当を販売した。たとえば、韓国の防衛大手ハンファは独自開発した「K9自走砲」を、ポーランドやトルコ、フィンランド、ノルウェー、エストニアなどに輸出してきた。DAPAと韓国政府は販路拡大のため、スペインやイタリア、ルーマニアなどとの防衛協力も進めている。


 2011年末には、韓国の造船大手、大宇造船海洋(DSME)がインドネシアの潜水艦事業を受注。さらに同社はこれまでに、タイ海軍からもDW3000フリゲート艦2隻を受注している。このほか、韓国はノルウェーやイギリスからも軍需支援艦を受注している。現代重工業もフィリピン海軍向けにフリゲート艦2隻を建造した。


 一方、武器購入をめぐっては、韓国はドイツ製潜水艦を導入してきた。2013年には、F15K戦闘機に搭載する170発から180発の空対地誘導ミサイル「タウルスKEPD350K」(射程500キロ)の購入を、ドイツとスウェーデン企業の合弁で設立された「タウルスシステムズ」社と契約した。


独自の攻撃能力向上を邪魔された韓国

 韓国は当初、米ロッキードマーチン社のJASSM(統合空対地スタンドオフ・ミサイル)の調達を考えていたが、アメリカ政府が韓国への輸出を承認しなかったため、タウルスのミサイルを選ばざるをえなかった。アメリカは中国や日本など周辺諸国を刺激することを懸念していたとされるが、後に日本が新型JASSM(最長射程900キロ)の導入をアメリカ政府に認可されたことを踏まえると、韓国は複雑な思いだろう。


 韓国の長距離空対地ミサイル事業は、将来、戦時作戦統制権(統制権)がアメリカ軍から韓国軍に移行されるのに備え、有事の際の対米依存度を低め、独自の攻撃能力を高めようという趣旨で進められてきたが、それを邪魔された格好だった。昨今の韓国のアメリカ以外からの武器調達は、JASSMの売却を拒否したことへの反発もあるとみられる。


 このほか、韓国は2014年、アメリカのF35Aステルス戦闘機40機を約70億ドルで購入する契約を決めた。韓国政府は現在、その製造会社ロッキード・マーティンと交渉し、韓国の次世代KFX戦闘機向けの軍事通信衛星の提供をオフセット(抱き合わせ)プロジェクトとして推し進めている。DAPAは2018年、こうしたオフセットストラテジーを更新。技術移転への依存を下げる一方で、共同開発や輸出、グローバルサプライチェーンへの参入などに、より力を入れている。


 世界情勢を中長期的に俯瞰すれば、アメリカが孤立主義に向かい、中国の軍事的な台頭が目立つ。また、北朝鮮の事実上の核保有国化も一段と進み、東アジアの勢力均衡が流動化しつつある。文政権が将来を見据え、防衛産業の基盤強化と武器輸出拡大を通じ、今後もしたたかに対米依存を減らしていくのは間違いない。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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