目指せ!時事問題マスター
1からわかる!ムン大統領と韓国政治(1)
NHK
2019年12月16日 (聞き手:工藤菜摘 鈴木マクシミリアン貴大)
ここ最近、ずっとぎくしゃくしている日韓関係。韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領って日本に厳しいイメージだけど、どうして?そもそもどんな人なの?元ソウル支局長で「国際報道2019」の池畑修平キャスターに1から聞きました。
解説は「国際報道2019」(月~金 22:00~ BS1)の池畑修平キャスター。ジュネーブ支局を経て、2008年から3年間、中国総局で北朝鮮を担当。ソウル支局長も経験した朝鮮半島情勢のスペシャリストです。
最悪?日韓関係
よろしくお願いします。いまの日韓関係、長年取材されてきた池畑さんからみても悪いですか?
悪いですね。日本と韓国が国交を正常化したのは1965年。それから50年以上の間、主に歴史問題の認識で意見対立はずっとあったけど、今回は歴史の問題から経済の問題、さらに安全保障の問題も絡んだと。
ここまで対立が深まったのは初めてだから、そういう意味では、これまでの関係悪化とは次元が違うので国交正常化以降、最悪と言っていいかなと思うんですね。
いまのムン大統領になってから関係が悪くなったんですか?日本に厳しいような気もしますけど。
確かにムン大統領になってから、関係は悪化しているんだよね。
ムン大統領ってどんな人なんですか?ひとことでいうと。
ひとことで?!うーん。そういう質問もあると考えてたんですけど。
うーん。ふたことでいい?ひとことはなかなか説明に限界がある気がするので。
ふたことで表すとこうなると思うんですけど…。
韓国を理解するマストなワード 保守派vs.進歩派
まずは「進歩派の価値観を体現」。これ、ムン大統領の行動を分析する上で、すごい大事なテーマ。
韓国は、保守派と進歩派という激しい政治的な対立があるんだよね。
今のアメリカにちょっと似てるかもしれない。アメリカの共和党と民主党はすごい分断されて、お互いもう理解しえないところあるじゃない?
韓国は昔からそうで、ずっと分断が深いんですよ。
なんで、そんなに対立しているんですか?
最大の理由は北朝鮮の存在です。
いまだに朝鮮戦争も正式に終わっていなくて休戦状態のまま、朝鮮半島は韓国と北朝鮮に分断されたままです。だから、韓国では北朝鮮とどう向き合うべきかは大テーマです。
保守派と進歩派では北朝鮮との向き合い方が違うんですか?
そう。いまのムン大統領の前は、2代続けて「保守派」の大統領でした。前はパク・クネ(朴槿恵)大統領、その前はイ・ミョンバク(李明博)大統領。
韓国の保守派は、北朝鮮をいずれは経済力とかで圧倒して「吸収統一すべし」というのが基本的な考え。だから、北朝鮮には非常に強硬姿勢。
一方の進歩派、つまりムン大統領は、北朝鮮はいずれは「平和的に統一する同胞」であると。自分たちと同じ民族だという思いが非常に強いんですよ。だから北朝鮮に優しいし、支援を重視する。
イソップ童話の「北風と太陽」って知ってる?
コートを脱がすやつですよね?
そうそう。コートを着ている旅人がいて、太陽と北風のどっちがコートを脱がせるか勝負する童話で。
北風はビュービュー風をふきつけて、なんとかコートを吹き飛ばそうとするんだけど、旅人はよりぎゅーっと着ちゃう。
反対に、太陽はぽかぽかと暖めて、そうするとだんだん暑くなってきて、旅人はコートを脱ぐ。それがよくこの保守派と進歩派の対北朝鮮のスタンスの違いを表すのに使われる。
保守派が「北風」で進歩派が「太陽」ということですね。
保守派は経済的圧力をかけて、軍事的優位に立って、圧迫して核を放棄しろっていう。力で言う事聞かせようとするんだけど、なかなかそううまくいかない。
一方、進歩派はそうじゃなくて、北朝鮮を支援して、豊かにすることで、だんだん普通のまともな国家に変えようと。
ムン大統領は、進歩派の太陽政策を引き継いでいる人物で、平和的に南北統一まで持っていきたい思いはすごい強いと思う。
この保守派と進歩派の対立は、「南南葛藤」と言ったりもしてね。
「南南葛藤」の「南」は南北に分断された朝鮮半島の南側、すなわち、韓国国内の対立や摩擦の深刻さが示されているんです。
ムン大統領のルーツは北朝鮮
ムン大統領はなぜ進歩派になっていったんですか?
理由はひとつじゃないんだけど、ムン大統領のルーツ、ご両親は北朝鮮の出身なんです。当時は別に北朝鮮というわけじゃなくて、南北に分断されて朝鮮戦争が起きる前の朝鮮半島北部にいて。
朝鮮戦争が起きて、中国から入ってきた軍から逃げるため、アメリカ軍が大規模な撤収作戦をやるんです。ムン大統領の両親も救出されて、韓国に来て、結婚した。
ムン大統領は子どもの頃、お父さんから、よく北朝鮮で暮らしていた時の思い出話を聞かされて育ったそうです。それで北朝鮮に対するシンパシーを強めていったんじゃないかと。
そういう背景があるんですね。
それとね、ムン大統領は弁護士出身で、北朝鮮の苦労している人たちのために弁護活動をしたいという夢をもっていたんだよね。北朝鮮に対する思いは人一倍強いと思うな。
北朝鮮のことで頭がいっぱい
ムン大統領が北朝鮮に強い思いがあることは分かりましたが、日本に対してはどう思っているんですか?
もともと、大統領個人的には、日本嫌いだとか決してないと思うんだけど。
そうなんですか?
ムン大統領は反日っていうイメージがあると思うんですけど、社会問題を考える参考に日本の本を読んでいるし、娘さんは日本に留学した事もあるし、「根っからの反日ってことはない」という見方をする人も多いんだ。
でも、日本に対しては厳しいことしていますよね。
個人はそうだとしても、今、大統領になっている以上は、過去の歴史に対する思いとかは重視しなきゃいけないんで、韓国国内の日本に対するナショナリズム的な思いをくみ取る立場になってしまっているよね。
大統領となると、また違うと。
そうね、反日じゃないんだけど、日本に対する理解が深いかと言うとまたそれも違うかな。ちょっとこう日本軽視はあると思うんですね。
なぜですか?
大統領と彼のブレーンって、北朝鮮との関係改善に、すごくパワーを割いているんだよね。
「進歩派が政権取ったから前に進めたい!悲願を成し遂げたい!」みたいなところがあるから、頭の中が「北朝鮮、北朝鮮」になっていて。
日本とかアメリカに外交的な配慮をするとかっていうところへの思いがね、ちょっと足りないとは思えるね。
個人的な思いというよりは、今の韓国の大統領という立場がそうさせていると。
いまの日韓関係の悪化は、ムン大統領、1人の問題かのように言われるんだけど、そうじゃないと思うな。今の保守派と進歩派の対立構造の中だと、誰が大統領をやっても、基本路線は変わらないだろね。
近日公開予定の「1からわかる!ムン大統領と韓国政治」(2)では、「帝王的大統領」と呼ばれる韓国の大統領の強大な権力について聞いていきます。
編集:吉川那奈
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