新型コロナ対策「全世界指導者一斉能力試験」で安倍首相は何番目?
点数の低い指導者を選ぶのは「辞め時」だ
新型コロナウイルス感染症対策をめぐって、安倍政権の対応に大きな批判が集まっているのはご存知のことと思います。ダイヤモンド・プリンセス号への対応に端を発し、PCR検査数の厳格過ぎる水準、補償や給付なしの自粛要請、他国と比べた防疫対策費の規模の小ささ、非常事態宣言の遅れ等、どれも批判なしでは語れません。
とりわけ最も批判が大きかったのが、数百億円もかけて世帯ごとに布マスク2枚を配布するという施策でしょう。インターネット上では「#アベノマスク」と揶揄され、「B29戦闘機に対して竹槍で挑むようだ」「竹槍と同じで歴史に名を残す愚策」という批判の声が殺到していました。
新型コロナ対策は「全世界指導者一斉能力試験」だ
このように、新型コロナウイルス対策を巡っては、今まで以上に安倍政権に対する批判の声が強くなっているように感じます。これはパンデミックによって世界同時多発的に問題が起こり、他国の指導者と横並びで比較することができる面も大きいからでしょう。
つまり、新型コロナウイルスにより、世界の指導者たちはまるで「指導者版PISA」(PISA=OECD生徒の学習到達度調査)という抜き打ちの全世界一斉能力試験を受けているかのように思うのです。
そこで、「指導者版PISA」のように、指導者の様々な能力や振る舞い、パフォーマンスを評価する軸には主にどのような「科目」を設けるべきか、私なりに考えてみました。ジャストアイデアなので漏れはあると思いますが、おおよそ以下の6項目が最も重要な要素だと感じています。
(1)課題や国民ニーズの認識力
(2)ソリューションの適切性(=EBPM<エビデンスに基づく政策立案>、適切な優先順位とリソース配分)
(3)一貫性や公正さの実現とそれらに基づくガバナンス
(4)適切な人材活用や組織体制構築
(5)決断の迅速さや問題が起こる前の予防的行動
(6)パブリックコミュニケーション(ディスクロージャー、アカウンタビリティー、プレゼン能力等)
外国の指導者たちを評価してみよう
ではここで指導者たちを実際に評価してみたいと思います。
まず、(5)「決断の迅速さや問題が起こる前の予防的行動」の科目で最も高い点数を獲得したのは、やはり事前に感染爆発を抑え込んだ台湾の蔡英文総統や、2020年4月7日現在で死者1名に抑え、8日には「危機は脱しつつある」と宣言したニュージーランドのアーダーン首相でしょう。一部で感染爆発を引き起こしたものの、スピーディーな対策でその後の抑え込みに成功している韓国の文在寅大統領等も続くと思います。
(4)「適切な人材活用や組織体制構築」でも台湾は圧倒的です。陳建仁副総統や唐鳳IT担当大臣の活躍が日本のメディアでも伝えられていますが、素人の国会議員から論功行賞を中心に大臣を選ぶ日本とは異なり、日頃から大臣等の要職に官民のプロフェッショナル人材を登用するシステムを構築した成果が出ていると言えます。
また、感染の拡大が続く欧米諸国でも、指導者たちは軒並み支持率を上昇させていますが、それは(3)「一貫性や公正さの実現」と(6)「パブリックコミュニケーション」の科目における高得点が、大きく影響していると考えられます。
とりわけ、パブリックコミュニケーションの様子はインターネットを通じて日本からもよく見えます。彼らは国民が求める情報をしっかりと開示したり、毎日のように国民に語りかけたり、記者会見での質問に徹底的に応え、国民の不安を払拭するよう全力を尽くしたりする姿に支持が集まっているように思うのです。
安倍政権を6項目で他国と比較評価してみよう
その一方で、我が国の指導者はどうでしょうか?
「アベノマスク」と揶揄された布マスク2枚配布や、「#自粛と給付はセットだろ」というハッシュタグが拡散された補償・給付問題のように、(1)「課題や国民ニーズの認識力」の科目においては、零点に近い点数を付けざるを得ません。「Go To Travel Go to Eat」の件や、立ち消えにはなった和牛商品券の案も、課題認識力の欠如を如実に表していると思います。
(2)「ソリューションの適切性」においても、PCR検査に厳格過ぎる水準を設け、軽症患者等をコントロールする仕組みを構築しなかったことは、低い点数をつけるべきだろうと思います。圧倒的に死者数が多いアメリカからもその点を強く憂慮され、大使館を通じて在日米国人に帰国を呼びかけられる始末です。
場当たり的な対応だから問題と批判が噴出し続ける
(3)「一貫性や公正さの実現とそれらに基づくガバナンス」においても同様です。学校を臨時休校にしながらも、たとえばパチンコ店の営業が各地で続いていたことに批判が殺到しましたし、緊急事態宣言の発令後も営業している一部の店舗では店の前に客が列をなす姿が報じられています。
「ソーシャル・ディスタンス」が重視され、「三密」を避けるよう言われているのに、3月末まで政治家たちは密集して会議や記者会見を設けていました。さらに、政治家が誕生日パーティーをしたり、安倍昭恵氏がお花見をしたニュースもありました。
緊急事態宣言翌日には、西村康稔経済再生担当相が対象地域となった7都府県知事に対して、休業要請を2週間程度見送るよう打診したことも露呈し、批判が殺到しました。
これら次から次へと出てくる一貫性の欠如に対して苛立つ国民は少なくないでしょう
。
また、子どもの世話で仕事を休んだ保護者向けの支援において、当初、厚生労働省がいわゆるナイトワーカーを除外したことや、医療用ガウンを確保するために縫製業者ではなく休業中の航空会社の客室乗務員(CA)らに縫製を支援してもらう方向で調整していることは、性差別や職業差別以外のなにものでもなく、公正さにおいて大きなマイナス点だったと言えます。
安倍政権だけには限らない問題も
(4)「適切な人材活用や組織体制構築」の科目においては、たとえば台湾のように最終意思決定権者の中に専門家がいないことで、他国と比べて非常に低い点になります。
ただし、これは安倍政権に限らず、日本社会全体の問題でもあるように思います。というのも、専門性を著しく軽視する「ジョブローテーション」「メンバーシップ採用」「年功序列」という非合理的な仕組みを取り入れている職場がいまだに多いからです。
長くなってしまいますので(5)と(6)に関しては割愛しますが、前述の他国の指導者が行っていることをほとんどしていない点において、やはり低い評価を付けざるを得ないと感じました。
皆で指導者を比較評価してレーダーチャート化しよう
さて、これらの評価をもとに、世界各国の指導者の能力やパフォーマンスをレーダーチャート化するとどうなるでしょうか?
暴言が目立つブラジルのボルソナロ大統領と同様、安倍首相の「六角形」は世界の指導者で最も小さいうちの一つとなりそうな気がします。この試験はカンニング(他国の指導者の真似)も許されているのに、安倍首相からは台湾や韓国のような防疫先進国からカンニングしようという意思を感じ取ることはできません。
ただし、ここに書いたのはあくまで私の個人的な評価ですので、マスメディアでも同様の方法で実施し、実際にレーダーチャートを掲載して欲しいと思います。また、在外日本人等でその国の事情に詳しい人たちにも、「#コロナ指導者能力テスト」のようなハッシュタグを用いて、指導者の2国間比較をして欲しいものです。
各国の指導者が同時期に全く同じ課題に向き合わなければならないシチュエーションで、彼らを横並びで比較することができる機会はまずありません。これを機に徹底的に「指導者の能力やパフォーマンスの可視化」ができれば、新型コロナウイルス感染症対策において安倍政権に圧力をかけるだけではなく、今後の選挙における「能力・パフォーマンス評価」という文化を作り出すきっかけにもなると思います。
能力評価は「政権エクストリーム擁護」にも対抗可能
その一方で、安倍政権はこの4月初旬の各社世論調査においても支持率はほとんど変わりなく、おおむね40%前後を維持していることが、私には不思議で仕方ありません。
安倍政権では新型コロナ対応以外でも、モリカケ問題、カジノ誘致問題、桜を見る会等、別の時代や別の国であれば、政権が吹き飛ぶような様々な問題が発覚していますが、支持率は一時的に下がるものの、時が経つとゾンビのようにまた息を吹き返します。今回のアベノマスク政策に関しても、擁護すらしている文化人がいるようです。
被害者が加害者と共依存関係になってしまい、加害者を批判する人から守ろうとする行動のことを「ストックホルムシンドローム」と言いますが、安倍政権の施策を忍耐強く支持する人たちを「ストイック擁護晋三ローム」と呼びたくなってしまいます。
ですが、このような人々に対しても、能力・パフォーマンス評価という“主観を客観化するスキーム”は武器として大いに役立つことでしょう。「世界のどの指導者と比較して、どのような基準で、どうような点を評価しているのか? 論拠を示しながらレーダーチャートを提示せよ」という指摘が当たり前になされるようになれば、“エクストリーム擁護”の愚かさが目に見えて分かるようになるからです。
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