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韓国大統領選まで1ヵ月、ここにきて野党に“追い風”が吹き始めた「3つの理由」

이강기 2022. 2. 8. 14:14
 

韓国大統領選まで1ヵ月、ここにきて野党に“追い風”が吹き始めた「3つの理由」

 

「どんぐりの背比べ」だったが…

牧野 愛博
朝日新聞外交専門記者

現代 Business, 2022.02.08

 

韓国大統領選まで「1ヵ月」

3月9日に投開票される韓国大統領選まで、残り1ヵ月になった。かつての「三金政治」(金大中、金泳三、金鍾泌)のようなカリスマ性のある候補者がいない「どんぐりの背比べ」状態だったが、ここに来て保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補に追い風が吹き始めた。

尹錫悦氏/photo by gettyimages

 

主な原因は3つある。韓国社会を覆っている閉塞感が生み出す「政権交代論」、2月3日に行われたテレビ討論会、そして進歩(革新)系与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補を新たに直撃した「夫人の権力乱用疑惑」だ。

 

韓国の世論調査会社、リアルメーターが7日に発表した世論調査結果によれば、尹錫悦氏の支持率が前週から3.2ポイント伸びて43.4%になった。これに対し、李在明氏の支持率は前週から0.4ポイント減って38.1%だった。1月半ばに一時、支持率が13%近くまで伸びた中道系の安哲秀(アン・チョルス)候補は同マイナス2.8ポイントの7.5%。「死に票」を嫌った安氏支持層が、尹氏に流れ込んでいる模様だ。

李在明氏/photo by gettyiamges
安哲秀氏/photo by gettyimages
 

尹氏と李氏の差は5ポイント程度で、まだ勝負の行方はわからない。ただ、前年末からの数値をみてみると、李氏は最大の支持を集めた時でも12月第5週の40.9%で、爆発力に欠ける。今週の支持率38.1%は文在寅大統領の国政支持率42.2%すらも下回った。進歩勢力の支持を固めきれていない様子が浮き彫りになっている。

 

韓国大統領府に勤務した経験がある元政府高官は、「今の韓国を取り巻く状況が、与党への不信感や政権交代を望む声を強めている」と語る。

 

 

コロナ規制や不動産価格の上昇、世論の空気は…

韓国中央防疫対策本部によれば、韓国では7日午前零時現在、1日あたりの新型コロナウイルス感染者数が3日連続で3万人を超えた。韓国政府は今月20日まで、私的な集まりの人数を6人までとし、レストランやカフェの営業時間を午後9時までとするソーシャルディスタンスの措置を延長した。

 

これに対し、韓国で「小商工人」と呼ばれる自営業者が強く反発している。小商工人らは、新型コロナ対策に伴う売り上げ減少に悲鳴を上げ、デモや陳情を繰り返してきた。小商工人らは元々、進歩支持勢力だが、最近は政治的な影響力を強めるため、大統領選ごとに支持を変える傾向がある。文在寅政権も大統領選への影響も考えたうえで、昨年11月に徐々にソーシャルディスタンスを緩和する「ウイズコロナ」政策に踏み切ったが、オミクロン株の流行で、規制に逆戻りせざるを得なくなった。

 

韓国の不動産情報会社「不動産R114」が3日に発表した資料によれば、文在寅政権の5年間で、ソウルの不動産価格は110.25%上昇した。文政権が最近、不動産購入のための銀行貸し付けなどを厳しく制限したため、昨年1年間の上昇率は14.73%まで落ち着いてきたが、それでも「家が買えない」という不満は、大統領選挙の帰趨を握るとされる若年層に根強く残っている。

 

7日発表のリアルメーターの世論調査結果でも、30代の支持率は尹氏が44.2%で、李氏の32.6%を10ポイント以上上回っている。韓国政府の元高官は「新型コロナ対策も不動産も、特定の候補に妙案があるわけではない。どの候補も大同小異なら、政権を交代した方が良いのではないか、という空気になりつつある」と語る。

 

テレビ討論会でも

こうした与党陣営にとって不利な状況が投影されたのが、2月3日夜に行われた大統領選主要4候補によるテレビ討論会だった。

 

李在明氏は、安哲秀氏から「文在寅政権の後継者なんでしょう」と問われ、「後継者ではない」と否定した。更に安氏から「文政権の不動産政策は何点だったのか」と突っ込まれると、李氏は「非常に誤った、足りない政策だった。何度も謝罪した」と答える羽目になった。

 

韓国の与党関係者は「李氏は最近、文政権の失政を謝る場面が多かったから、ストレスがたまっていたのだろう」と語る。その一方で、「でも、文氏の後継者であることを否定して、与党主流派の親文勢力から反発を買わないか心配だ。ただでさえ、進歩勢力の票をまとめ切れていないのに、さらに支持が減るかもしれない」とも話す.

 

 

李氏は討論会で、他候補たちから、城南市長時代の大規模開発事業を巡る「大庄洞疑惑」を突っ込まれ、「それはもう散々、検察やメディアなどが検証してきた問題だから」と口走り、「疑惑逃れ」のような印象を与えた。

 

外交政策を巡っても、2017年末の中韓外相会談で、中国が「韓国が約束した」と主張した3ノー政策(米軍の高高度ミサイル防衛システム〈THAAD〉の韓国追加配備の否定、日米主導のミサイル防衛への不参加、日米韓防衛協力の同盟関係への格上げの否定)について、李氏は肯定する考えを表明。安哲秀氏らから「国家主権を他の国に握られて良いのか」と批判された。

 

ソウルの外交筋は「韓国では若年層を中心に、最近の中国の横暴ぶりに反発する空気が広がっている。中国に配慮するような李在明氏の発言は、マイナスだったのではないか」と話す。

 

タイミングが悪いことに、4日に行われた北京冬季五輪の開会式で韓服を着用した女性が中国朝鮮族としてて登場。韓国内で「中国による文化侵略」という非難の声が上がった。李在明氏もこの問題で中国を批判したが、元々中国に批判的な尹錫悦氏に比べて気勢が上がらない。

 

 

李氏は水素エネルギーなどの新産業政策や不動産対策など、尹氏に政策の詳細な説明を迫った。尹氏の失言や知識不足を浮き彫りにする作戦だったようだが、やり過ぎだという批判も出た。典型が「RE100」(Renewable Energy 100%。事業の使用電力をすべて、再生エネルギーでまかなうことを目指す環境イニシアティブ)を巡る質問だった。

 

李氏は尹氏に「RE100にどう対応するつもりか」と切り出し、尹氏が「RE100って何?」と聞き返す場面をつくり出した。

 

ただ、野党関係者は「RE100を知っている有権者が何人いるのか。知らない有権者は、自分が無知だと言われたようで気分が悪かったのではないか」と語る。この関係者は「李在明氏の最大のセールスポイントは、京畿道知事としての成功体験。もっと政治家としての能力を強調すべきだったのに、尹錫悦氏への攻撃に気を取られて、アピールに失敗した」と語る。

夫人の権力乱用疑惑

そして、李在明陣営を最近、揺るがしているのが、先月末に明らかになったキム・ヘギョン夫人の権力乱用疑惑だ。

韓国メディアによれば、李在明氏が京畿道知事だった時代、夫人は食べ物の配達や衣類の整理、処方薬の受け取りなどの私用に、京畿道の公務員を使っていた。京畿道の公務にだけ使える法人カードで、夫人らが食べる牛肉代金を決済していた問題も浮上している。

 

韓国の別の元政府高官は「公権力の乱用。朴槿恵元大統領の知人だった崔順実が大統領府に出入りして私腹を肥やしていた事件を連想する。韓国人は権力の乱用に敏感だから、李在明の支持率にも影響が必ず出る」と語る。

 

野党関係者は「尹錫悦夫人も経歴詐称などの疑惑で叩かれたが、話題になってから時間が経っている。李在明夫人のスキャンダルは、選挙まで1ヵ月の時点で出てきた問題だけに、与党陣営は頭が痛いだろう」と話す。

 

そもそも、今回の大統領選は「どんぐりの背比べ」選挙だっただけに、相手陣営の欠点をあげつらうネガティブキャンペーンの色彩が強かった。最後まで似た展開が続きそうだ。なお、2月3日の討論会では、最悪の状態にある日韓関係についての話題は出なかった。せいぜい、尹錫悦氏が「大統領になったら、バイデン米大統領、岸田文雄首相、習近平中国国家主席、金正恩朝鮮労働党総書記の順に会談する」と語ったのが目立った程度だった。

 

日韓関係筋によれば、李在明氏の陣営では、討論会では敢えて日韓関係に触れる必要はないという意見が出ていたという。同筋は「徴用工も慰安婦も、日本を納得させることができる妙案が浮かばない状態。最近では、韓国人の大半が関心を持たなかった佐渡金山の朝鮮人労働者問題まで出てきた。支持が伸びる見込みがない日韓関係に触れない方が良いという方針だったようだ」と語る。

 

ポピュリズムに走って日本叩きをする候補者がいなかったのは幸いだったが、最後まで日韓関係が大統領選の焦点に浮上することはなさそうだ。