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プーチンが「崖っぷち」で、中国・習近平まで追い込まれている理由

이강기 2022. 3. 25. 07:51

 

プーチンが「崖っぷち」で、中国・習近平まで追い込まれている理由

 

バイデン・習近平会談を読み解く

物別れに終わった米中首脳会談

中国はウクライナの戦争で、どう動くのか。それは戦況を左右するだけでなく、戦後の新たな世界秩序作りにも影響を及ぼす。私の見通しを言えば、中国は「ロシアと心中する」方向に傾いている。と同時に、中国がもっとも心配しているのは「台湾問題」だった。

3月18日に開かれたジョー・バイデン米大統領と中国の習近平総書記(国家主席)のオンライン会談は事実上、物別れに終わった。バイデン氏は「中国がロシアに物的支援をすれば、重大な結果を招く」と警告した。

                       
 
 

中国外務省は翌19日にも2回目の長いリリースを出した。それによれば、習氏は会談で「全面的で無差別な制裁は人々を苦しめる。もしも、さらにエスカレートすれば、世界経済に深刻な危機をもたらすだろう」と西側の制裁を批判した。

 

中国が2回にわたってリリースを出したのは、なぜか。

 

中国がアピールしたかったのは、実はウクライナ問題ではなく「台湾問題」だったのだ。言うまでもなく、いま世界の目はウクライナに集中している。そんなときに、台湾問題を持ち出しても、メディアの扱いは小さくなる。そこで、まずはウクライナについて短いリリースを出して、本当に訴えたかった台湾問題を後回しにしたのである。

 

 

「上海コミュニケ」が意味するもの

 

それは、2回目のリリースの冒頭で、いきなり「上海コミュニケ」を持ち出した点に示されている。次のようだ。

 

〈バイデン大統領は「米中両国は50年前に上海コミュニケ発表という重要な選択をした」と語った。50年後に米中関係は再び、重大な時期を迎えている。…大統領は「米国は中国との新冷戦を望んでいない」と繰り返した。大統領は「中国の体制変革や中国を標的にした同盟の再活性化を目指さず、台湾の独立を支持せず、中国との抗争を目指す意図もない」と言った。習主席は「私は、いまの発言を非常に真剣に受け止める」と語った〉
 

バイデン氏が表明した「中国との新冷戦も中国の体制変革も、中国を標的にした同盟再活性化も望まず、台湾独立を支持せず、中国との抗争を目指す意図もない」という部分は、ほとんど同じ言い回しで2度出てくる。中国がいかに台湾問題に神経を尖らせているか、を物語る証拠だ。ウクライナ問題について言及したのは、その後だった。

バイデン米大統領[Photo by gettyimages]
 

会談に関する内外メディアの報道は、ほとんど「ウクライナ一色」だったが、少なくとも、中国にとっては「むしろ台湾問題のほうに主眼があった」という話になる。

 

それを裏付けるように、台湾をめぐるバイデン政権の姿勢について、中国のリリース(2回目)はこう書いた。

 

〈習主席は、中米関係が前の米政権が作り出した困難から抜け出す一方、ますます多くの挑戦に直面していることを指摘した。とくに注目に値するのは、米国の中には、台湾独立勢力に間違ったメッセージを与えている人がいる、という点だ。これは非常に危険だ。台湾問題の扱いを間違えれば、両国関係に破滅的な影響を及ぼすだろう〉

〈中国は、米国が問題に適切な関心を払うよう希望する。中米関係の現状を招いた直接の原因は、米国側に(当時の)大統領と主席の2人が合意した重要な共通理解に従わず、バイデン大統領の前向きな声明に沿って行動してこなかった人たちがいるからだ。米国は中国の戦略的意図を誤解し、計算違いしているのだ〉
 
 

つまり「オレたちは50年前の合意に基づいて行動しているが、(ドナルド・トランプ前政権を念頭に)米国には、そうじゃない人間もいるじゃないか。しっかり、約束を守ってくれ」とバイデン氏に泣きついた、と言ってもいいだろう。ここは、後で述べるように、ウクライナ問題に対する中国の姿勢にも関係してくる。

 

「上海コミュニケ」にまつわる誤解

 

そこで、まず上海コミュニケについて、解説しておこう。

 

上海コミュニケは、1972年に米中が合意した共同声明である。「米国は台湾海峡のどちら側の中国人も、中国は1つしかなく、台湾は中国の一部と主張していることを認識している(The United States acknowledges that all Chinese on either side of the Taiwan Strait maintain there is but one China and that Taiwan is a part of China) 」という有名な1文が記されている。

1972年に訪中したニクソン大統領[Photo by gettyimages]
 

日本では「米国が台湾は中国のもの、すなわち、中国は1つと認めた内容」と解釈する向きが多いが、それは間違いだ。

 

原文であきらかなように、中国が「台湾は中国の一部」と言うのと同じように、台湾も「中国こそ台湾(中華民国)の一部」と主張しており、米国は、そんな双方の主張を「認識した」にすぎない。ただし、中国側に言わせれば「日本流の歪んだ解釈こそが正しい」という話になる。その方が自分に都合がいいからだ。

 

だが、トランプ前政権は正しく原文通りに解釈してきた。私は2020年9月25日公開コラムで、当時のデビッド・スティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)の講演を紹介しつつ、その点を指摘した。

 

 

同氏は講演で、こう語っている。

 

〈米国は長い間「1つの中国政策」を堅持してきた。これは中国の「1つの中国原則」とは異なる。中国共産党はこの原則の下で「台湾に対する主権」を主張しているが、米国は台湾の主権について、何のポジションもとっていない〉
 

つまり、中国は「台湾はオレのもの」であり、それを「1つの中国原則」と主張しているが、米国は「そんな話は認めてないよ」と言ったのである。米国が掲げてきたのは「1つの中国政策」であり、台湾の主権については何も語っていない。そのうえで、同氏は「我々は『1つの中国政策』を維持するが、中国の台湾に対する挑発を受けて、重要な政策調整を強いられている」と強調した。

 

どんな政策調整なのか。それは、米国の「1つの中国政策」は「台湾問題の平和的解決」が大前提なのだから「もしも、中国が武力で台湾を奪うつもりなら、米国はこれまでの政策を変更する。黙っていないぞ」という警告でもあった。

 

以上のような経過を踏まえて、中国は今回の米中会談に臨んだ。そこで「米国には両国の共通理解に従わない人間がいる」と強調した。ようするに「バイデン政権はいいが、トランプ政権のような人たちはダメだ」と言ったのである。「バイデン政権に媚を売った」と言ってもいい。

 

少なくとも、中国はバイデン政権を「少なくとも、トランプ前政権よりはマシ」とみていることが、これで分かる。

ちなみに、中国のスタンスは日本についても同じだ。中国の主張に沿って「台湾は中国のもの。中国は1つ。それが米中合意」と盛んに言ってきた日本のメディアや専門家は、私に言わせれば「中国の手先」のようなものだ。そもそも、原文をきちんと読んでいるのだろうか。

 

 

なぜ、50年前の話を持ち出したのか?

そこで、本題である。

中国はなぜ、こんなタイミングで「上海コミュニケ」を持ち出したのか。中国は「台湾こそが最重要課題」と認識しているからにほかならない。習近平政権にとって、台湾奪取は絶対の命題なのだ。

 

トランプ政権だったら、台湾をめぐっても激突は避けられなかったが、相手がバイデン政権なのだから、避けられるものなら、避けたい。そこで「前向き」という言葉まで使って、バイデン政権を評価してみせた。そのバイデン氏はウクライナに関して、習氏に「ロシアを応援するなよ」と警告した。それが会談の核心だった、と私はみる。

 

上手から高飛車に出たバイデン氏に対して、習氏は下手に出て圧力をかわそうとした、と言ってもいい。

 

中国は台湾問題が後に控えているので、バイデン政権との激突をできるだけ避けたい。となると、中国はロシアに肩入れするとしても、目立たないように、水面下でこっそりと支援する道を選ぶだろう。公然とロシアに肩入れして、ロシアがギブアップでもしたら、目も当てられなくなってしまう。

ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席[Photo by gettyimages]
 

だからといって、中国がロシアをすっぱり見限れるか、と言えば、それも難しい。米国は中ロ共通の敵だ。いずれ米国との激突が避けられなくなったとき、ロシアの支援も重要になる。結局、悲しいことに、中国は「本意ではなくても、ロシアと心中」するしかない。

追い込まれたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だけではない。中国の習氏も同じである。

 

 

バイデン政権は中国に警告するだけで、停戦仲介は期待していないのか。

 

まったく期待していない。むしろ突き放している。バイデン氏の上から目線の態度が、その証拠だ。先週のコラムに書いたように、ロシアの劣勢が明らかになり、中国は今後「ロシアという重荷」を背負っていかなければならないハメに陥ってしまった。習氏はいま、頭を抱えているに違いない。

 
 

ゲストにお招きした講談社特別編集委員の近藤大介氏は「日本ではまったく報じられませんでしたが、中国では、上海コミュニケ50周年を祝う行事が盛大に行われた。王毅外相の熱い演説は大変なものだった」と語った。「上海コミュニケ」の言葉が首脳会談のリリースに登場したのも、さもありなんだったのだ。

 

一方、高橋氏は「新疆ウイグル自治区の弾圧問題で、米国が新たな制裁を課したでしょう。もしも、米国が中国に何かをお願いしようとしていたら、こんなタイミングで、そんな制裁をするわけがない」と語った。いずれも、非常に鋭い指摘である。

 

「中国が追い込まれたかどうか」については、近藤氏と私、高橋氏の見方が違ったが、非常に有益な議論だったのは間違いない。このコラムをお読みいただいたうえで、番組を視聴していただければ、より理解しやすいはずだ。ここまで深く「ウクライナ戦争と米中関係」を読み解いた議論はほかにない、と確信している。

 

言うまでもないが、私と高橋氏、近藤氏は「現代ビジネス」創設以来のレギュラー執筆者でもある。3人が議論した番組をぜひ、ご覧ください。
 
 
 
 
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