政治, 外交

文在寅、青瓦台からの「執務室移転」進める次期大統領に見苦しい嫌がらせ

이강기 2022. 3. 25. 08:09

文在寅、青瓦台からの「執務室移転」進める次期大統領に見苦しい嫌がらせ

 
退任前の最大の関心事は「いかに次期政権の足を引っ張るか」
 
JB Press, 2022.3.25(金)
 
 

 政権交代期にある韓国で、新旧権力が激しく衝突している。大統領候補時代の公約だった「大統領執務室の移転」を実行しようとする尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏の計画に対して、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「安保」を口実に必死の“妨害”を試みている。僅差で惜敗した腹いせでもするかのように、文在寅政権による最後の嫌がらせが始まっているのだ。

 

国民生活と隔絶した「青瓦台」という空間

 

 韓国大統領の官邸と執務室がある青瓦台は、韓国の「帝王的大統領制」を象徴する場所だ。

 

 朝鮮時代の王の住処だった景福宮の裏側に位置する北岳山につながる7万坪を超える土地に、官邸と執務室、迎賓館の他、数棟の建物で構成されている。青瓦台の中は、記者クラブの担当記者であっても出入りできるのは最外側にある「春秋館」のみ。それほど人間の出入りが徹底的に統制されている。

                         韓国大統領府「青瓦台」(写真:AP/アフロ)
                         ギャラリーページへ

 

 大統領は青瓦台の一番奥の官邸に住み、執務では大統領執務室のある本館を主に使用する。その本館から秘書室のある棟までは徒歩で15分程度かかるそうだ。朝鮮王朝時代の王宮を連想させるほど権威的で閉鎖的な空間の青瓦台は、韓国の大統領が国民と意志疎通できない原因とされてきた。

 このため尹錫悦氏は大統領選挙期間中から、「青瓦台を国民に返還し、大統領執務室を光化門(クァンファムン)に移転する」という公約を掲げていた。市民生活の真ん中で執務し、国民と意志疎通を図るという意志を示したのだ。だから尹氏は当選が決まった後、政権引き継ぎのための委員会が構成されると、真っ先に大統領執務室移転の検討に入った。

 

 しかし、尹氏が執務室と目されていた光化門の外交部庁舎が警護上の問題で不適切だという指摘が出て、大統領執務室移転の公約の雲行きは怪しくなった。

 

かつては自分も掲げた公約なのに

 実は文在寅大統領も、2012年と2017年の2回の大統領選挙で、いずれも光化門執務室を公約に掲げていた。

 

「私が大統領になったら、大統領執務室を光化門の政府総合庁舎に移転する。青瓦台は開放して国民に返したい。朝鮮総督府官邸、景武台から続いた青瓦台は、韓国の歴史において独裁と権威主義権力の象徴だった。大統領秘書室も大統領と遠く離れているため、大統領秘書室長が大統領に会うためには車に乗って行かなければならない権威主義的な所だ。光化門大統領の開幕とともに、これらの象徴を清算する」(2012年の大統領選挙運動発言中)

 

「青瓦台を出て、光化門大統領時代を開きます。国民といつでもコミュニケーションできる大統領になります。主な案件は大統領が直接マスコミにブリーフィングします。帰り道には、商店街に立ち寄り、すれ違う市民と気軽に対話を交わします。時には光化門広場で市民たちと大討論会を開きます」(2017年の大統領候補時代の公約集)

 だが文大統領のこの公約は、安全と警護上の問題に加え、交通統制が必須の大統領の通勤がソウル市民に迷惑をかけるという理由で実施されなかった。結局、就任2年目にして公約破棄を公式に決定した。

 

 しかし、尹錫悦氏は違った。尹氏は20日、記者会見を開き、光化門の代わりに国防部庁舎がある龍山(ヨンサン)に執務室を移転するという意志を明らかにした。就任前に国防部の移転と執務室の移転を完成し、就任後すぐに龍山で業務を行うということだ。ところで、この構想に対して共に民主党と文在寅大統領府が「安保」を理由に猛烈に反対しているのだ。

 

今頃になって「安保」強調とは

 共に民主党と大統領府は、大統領執務室が国防部庁舎に移転すれば国防部関係者と関連装備が別の場所に移転する期間中に「安保空白」が生じる、と主張する。さらに国防部の移転などで機会費用まで追加すれば1兆ウォンの経費がかかるという根拠のない見積書まで提示している。共に民主党議員の間からは「尹氏が呪術先生から青瓦台が凶地だから龍山に移住すべきだという勧誘を受け、龍山に執着している」という陰謀論まで飛び出す始末だ。

 

 なにより、失笑を禁じ得ないのは、文在寅大統領の手のひら返しのような言動だ。

 

 文大統領は21日、突然NSC(国家安全保障会議)を招集し、「安保」をやたらと強調しはじめた。過去には、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を飛ばしても「休暇文化を定着させる」として休暇に出かけたり、北朝鮮から開城(ケソン)工業団地の事務所を爆破されてもNSCに出席しなかったりしていた文在寅大統領の口から「安保」という言葉が出てきたことに、多くの国民とメディアは強烈な違和感を覚えた。

 

 しかし、そんなことはお構いなしの文大統領は、22日、閣議での冒頭発言でも再び安保を強調した。

 

「国政には小さな空白もあり得ない。特に、国家安保、国民経済、国民の安全は、一瞬も隙間があってはなりません。わが政権の任期はあまり残っていませんが、憲法が大統領に与えた国家元首であり行政首班、軍統帥権者としての責務を果たすことを最後の使命と考えます」

 

 こうして文在寅大統領府は「安保」を理由に、執務室移転に対する予備費の上程を断り、執務室移転のための一切の協力を拒否しているのだ。

 

政治的打算に基づく執務室移転への反対

 文在寅政権と共に民主党が、ここまで大統領執務室の龍山移転に反対する理由について、知人の韓国人記者は、「高度の政治的計算が隠されている」と分析した。

「尹次期大統領が約束通り5月10日から青瓦台を開放すれば、青瓦台は一気に韓国国民のホットプレイスになることは自明だ。そのうえ、文大統領が約束して守れなかった公約を尹次期大統領は貫いたという評価を得られるだろう。

 すなわち青瓦台の開放は、6月1日に控える地方選挙において、共に民主党にとって絶対的に不利なイッシューとなる。当然、尹次期大統領側も、地方選挙前に青瓦台を開放して支持率を上げようとする狙いがある」

 

 

退任後の身の安全のためにも次期大統領の支持率引き下げに

 

 もう一つは、文在寅大統領の退任後の安全保障のためのものだと分析する。

 

「現在、文在寅大統領の関心事は退任後の自身の安全保障だけだ。尹新政権の支持率を落とすことで、共に民主党からの協力が不可欠な状態にしておき、文政権に対する“積弊捜査”を封鎖しようとする狙いがある。

 共に民主党が議会多数を占める状況で、尹錫悦新政権が国政運営の動力を得るためには、国民の絶対的な支持が必要だが、実際、大統領執務室移転問題がもつれ始めると、尹次期大統領の支持率は時々刻々と下がり、就任前にすでに50%を切り出した。支持率が50%を下回れば、就任後に目標としていた国政運営にかなりの負担になるだろう」

 任期があと1カ月半となった文在寅大統領は現在、監査院の人事権を行使するために必死だし、共に民主党は検察の捜査権を完全に剥奪する法案を国会で押し通すと明らかにしている。これらすべてが、新政権による文在寅政権に対する積弊捜査を防御するためのものだという分析も出ている。

 政権を握ったこの5年間、国民を二つに分断した文在寅政権の統治は、最後まで統合を望む国民世論に背を向けるつもりらしい。0.76%差の「惜敗」を言い訳にし大統領選挙の結果に態度で不服を示しつつ、新政権を屈服させることに、持てる力を全集中力させているのだろう。