日韓慰安婦合意を妨害する「正義連」を排除すべき理由、元駐韓大使が解説
ダイヤモン オンライン, 2022.5.31
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新たに誕生した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、韓国で高まる文在寅政権の「負の遺産」を背負って、日本との歴史問題の交渉に臨まざるを得なくなった(写真は韓国の慰安婦像) Photo:PIXTA
文在寅政権と慰安婦団体が
作り出した「負の遺産」
韓国外交部は26日、2015年12月の日韓慰安婦合意について、外交部が合意前に4回にわたり支援団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協、現・正義連)」代表と協議し、合意内容を伝えていたとする記録文書を公開した。
日韓慰安婦合意を巡っては、一部の元慰安婦や支援団体が合意後、被害者の意見が反映されていないなどとして反発し、当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は慰安婦合意をほごにした。
そして、合意過程について歪曲(わいきょく)した情報で、歴史問題に対する日本政府の努力を否定する認識を、韓国国民に植え付けた。「日本が元慰安婦に対して謝罪していない」との認識は、慰安婦団体と文在寅政権によって作られたものであり、事実無根である。
その一方、文在寅前大統領は自らが大統領になった後、朴槿恵(パク・クネ)政権時に結んだ慰安婦合意の内容をほごにすることで、日本側の不信を決定的なものにした。
日本側が主張している「韓国政府が作り出した問題は、韓国政府が独自に解決すべき」との認識は、こうして出来上がった。
そして新たに誕生した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、韓国で高まる文在寅政権の「負の遺産」を背負って、日本との歴史問題の交渉に臨まざるを得なくなった。
日韓の慰安婦合意は
両国の妥協の産物
15年12月28日、岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相(いずれも当時)は会談後の共同記者発表で、日韓間の慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されること」を確認した。
合意の要点は下記の4つだった。
(1)韓国政府は元慰安婦支援のため「和解・癒やし財団(以下「財団」)を設立し、日本政府はこの財団に10億円拠出する。同財団は、元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の癒やしのための事業を行う。
(2)これまでの交渉で、韓国側は日本の「法的責任」の認定を求め、日本側は「道義的責任」を主張。双方の妥協で「日本政府の責任」で折り合った。
(3)慰安婦を象徴する少女像について、韓国政府として可能な対応方向について関連団体と協議を行うなどして適切に解決されるよう努力する。
(4)日韓両政府が今後国連など国際社会の場で慰安婦問題を巡って双方が非難し合うのを避ける。
この合意を受けて安倍晋三首相(当時、以下同)は、日本の首相として「改めて慰安婦として幾多の苦痛を経験され、心身にわたり癒やし難い傷を負われたすべての方々に心からのお詫びと反省の気持ち」を表明した。
これまで日韓の歴史問題においては、ほとんどの場合、日本側が譲歩することで妥協してきた。その際、韓国側は被害者、日本側は加害者という立場を前提に、韓国側は日本の譲歩を求めてきた。そして日韓で合意がなされても、韓国側の慰安婦支援者団体が反対するたびに日本への要求を高めた。その結果、日本側は我慢の限界に達し、態度を硬化した。
15年の合意の最も重要な点は、日韓双方が応分の譲歩を重ねることで妥結するに至ったことである。日本側にも韓国側にも満足できない点はあった。しかし、全体としてバランスの取れた合意であり、双方が譲り合うという今後の日韓交渉のモデルケースとなることが期待された。
文在寅政権は合意認めず
慰安婦問題を再提起
しかし、17年に発足した文在寅政権は、朴政権が行った慰安婦合意を認めなかった。文在寅政権は外交部に「慰安婦合意検討タスクフォース」を設置し、再検証を行った。
その後、康京和(カン・ギョンファ)外相が発表した検討結果は「再協議は要求しない」「日本政府が(元慰安婦を支援する財団に)拠出した10億円は、韓国政府の予算を充当し、この基金の今後の対応の方向性については日本政府と協議する」「被害者の意思をしっかり反映しなかった2015年の合意では真の問題解決にならない」というもので、15年の合意では問題解決にはならないと主張した。
さらに女性家族省は18年11月21日、日本が10億円を拠出した元慰安婦支援の財団の事業を終えることを決定。「今後解散のための法的手続きを取る。残金57.8億ウォン(約5億8000万円)については、関連団体などの意見を聞きながら、処理方策を用意していく」こととした。女性家族省は正義連の息のかかった省であり、その意向を反映している。
そればかりでなく、慰安婦合意を否定する動きは司法府にも波及した。2021年1月ソウル中央地裁は元慰安婦らが日本政府に対して提起した訴訟において、国際法上の主権免状の適用を否定し、日本政府に対し、原告らに各1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じる判決を宣告した。しかし、この判決には司法府部内にも異論もあり、同年4月の類似訴訟の判決では、主権免除の原則を踏まえ、原告の訴えを却下している。
文在寅政権もこの合意は「公式合意」であることを認めている。しかし、その実態は、この合意では問題解決には至らず、新たな交渉が必要だとするものである。正義連はこの合意が最終的かつ不可逆的合意だとは認めておらず、あらゆる方法で問題解決を妨害している。
韓国外交部は慰安婦合意を
正義連に事前説明していた
26日に公開された外交文書は4件ある。それらの文書は、李相徳(イ・サンドク)外務省北東アジア局長(当時)が、正義連代表だった尹美香(ユン・ミヒャン)氏に、日韓交渉の過程と合意の主な内容を事前に通知したものである。
この文書は、「朝鮮半島の人権と統一のための弁護士会(以下、弁護士会)」が裁判所に公開を求め提訴していたものであり、ソウル高裁の判決で公開が命じられた。
内容は 李相徳局長が慰安婦合意の理解を得るため、15年3月から12月までの間に計4回、尹美香氏と面会したことを示すものである。
同文書によれば、15年3月、李相徳局長は尹美香氏に面会。協議動向を説明。2カ月後には「(日本の)責任認定問題」「被害者への補償問題」「謝罪表現の問題」「慰安婦少女像の撤去問題」などを説明、10月には合意の妥結可能性と進捗状況を説明していた。
さらに合意発表の前日、合意に盛り込まれる主な内容である「日本の責任痛感」「安倍晋三首相の直接的な謝罪および反省の表現」「日本政府の予算10億円拠出」などを説明した。
ここで明らかになった内容に関し、弁護士会のキム・テフン名誉会長は「合意の前日、尹美香氏に会って合意内容の詳細について話したと文書に記されている」「尹美香氏は慰安婦被害者と合意内容を十分共有することができたのに、(それをせず)不要な誤解を招いた」と尹美香氏を批判した。
尹美香氏は「『外務省が尹美香と何回も会った』という一部の内容だけを選別して暴き、事実関係を歪曲して屈辱的合意をもみ消そうとする政治的攻勢はやめるべき」と主張した。
いずれにせよ、文在寅政権の下では、こうした文書の公開をためらい、正確な事実関係を隠蔽(いんぺい)していた。
そして正義連は「正しい慰安婦問題の歴史は自分たちが元慰安婦の証言をまとめた内容であり、それがすべての事実である」と言い張った。それは慰安婦の歴史は正義連が作るとするものであり、慰安婦問題について真摯(しんし)に学術的研究を行ってきた人の研究成果を否定し、その本の出版差し止めを求めるなどした。
慰安婦問題の日韓交渉の前面には常に正義連が立ってきた。これまで、日本側が行った努力を韓国政府が評価しても、正義連はそれに反対し続け、韓国政府はその圧力に抗しきれず、日本に対して新たな要求を出し続けた。
正義連にとって、慰安婦問題が解決することは自らの利益とはならず、それを妨害し続け政治的活動を強化することに意義を見出してきた。
それゆえ正義連は15年の慰安婦合意についても、元慰安婦の3分2が納得した合意であっても受け入れることができず、まして事前に相談を受けていたことを認めたがらなかったのである。
正義連は慰安婦支援ではなく
自らの利益を追求する政治団体
21年8月、当時の与党「共に民主党」議員らが、元慰安婦への名誉棄損を禁じる法案を国会に提出した。
同法案は慰安婦問題について新聞や放送ネットなどで虚偽事実を流布したものに懲役や罰金刑を科す内容が柱となっている。しかし、それに加えて元慰安婦や遺族、慰安婦関連団体に対し、誹謗(ひぼう)目的で事実を指摘する行為まで禁止している。
こうした内容の法案に、寄付金や補助金流用の罪で起訴された尹美香氏も議員として共同提案者になっていた。これは尹美香氏も保護対象となることを意味し、これを知った女性市民団体も法案撤回を求める共同声明を出すに至った。このようにあまりにも自分勝手な法案は民主党の支持が得られず撤回された。
ちなみに、尹美香氏は、寄付金流用で補助金管理法違反、詐欺、業務上横領など8つの罪で在宅起訴(20年9月)されており、21年8月11日ソウル西部地裁で裁判が行われている。
そのほか市民から集めた募金を焼き肉店やマッサージ店の支払いに、217回計930万円を支出した疑惑、娘を米国に留学させた費用の出所に関する疑惑、慰安婦のための施設を高額で購入し、疑惑が伝えられるやそれをはるかに下回る価格で売却した疑惑など、不正行為の疑惑は後を絶たない。
慰安婦問題が解決してしまうと、こうした利得行為を続けられないことを懸念したのだろうか。慰安婦問題解決の兆しが見えるたびに、尹美香氏は妨害行動を繰り返してきた。
尹錫悦政権は
日韓関係の改善に本腰
尹錫悦大統領は政権発足前から日本に政策協議代表団を派遣し、日韓関係改善の意思を伝えてきた。尹錫悦大統領も歴史問題の解決が日韓関係改善のため不可欠であることを認めている。
協議団に参加した李相徳前シンガポール大使は、2015年の日韓慰安婦合意当時の北東アジア局長であり、交渉の実務責任者であった。このため文在寅政権によってシンガポール大使を解任されたが、尹錫悦大統領が協議団に加えたものであり、尹錫悦大統領は文在寅氏とは異なる視点で歴史問題を含む日韓の問題の解決に本腰で取り組む姿勢を見せている。
しかし、主要な懸案に対する両国間の認識の違いは依然として解消されていない。
日本側の立場は、岸田首相も指摘したように、国と国の約束を守ることが国家間の基本であり、対立を解決するための案も韓国側が出すべきというものである。
これに対し韓国側は鄭鎮碩(チョン・ジンソク)団長が述べたように「韓日双方が勇気と知恵と忍耐を集めてこそ解決ができるという点を(日本側に)明確に話した」という。
朴振(パク・チン)外相は、慰安婦合意は公式合意と認めながら「最も重要なのなのは被害者の名誉と尊厳回復のため、韓日が共に努力すること」と述べている。そこで「謝罪」という言葉を使っていないのは、日本が何回も謝罪させるのかと反発するだろと予測し選択肢を広げておこうという趣旨なのかもしれない。
その朴振外相は外相会談のため、6月中旬に来日すると伝えられている。会談は 岸田首相と尹錫悦大統領の首脳会談実現に向けた地ならしが目的である。最初の首脳会談は早ければ、6月下旬にスペインのマドリードで開かれるNATO首脳会議に日韓首脳が参加を検討しているので、そこで行われる可能性がある。
ただ、日韓関係が本格的に動きだすのは、6月1日の韓国の統一地方選挙、および、7月10日(見通し)の日本の参議院議員選挙が終わるまで待たなければならないかもしれない。年内に懸案を一括解決するため、尹錫悦大統領が今夏以降に訪日する可能性もあるという。
いずれにせよ、慰安婦問題の解決に向けて最も重要なことは、これまでの日韓合意にことごとく反対し、妨害してきた正義連を排除することである。15年の慰安婦合意によってできた財団には「慰安婦のための名誉と尊厳を回復、心の癒やしのための事業を行う」と記しており、慰安婦の名誉と尊厳を守る事業は既に行われている。これをいかに強化していくかを考えればいいのではないか。
しかし、この方向で進もうとすれば、正義連は必ず反対してくる。正義連は尹美香氏の不正で、既に昔日の影響力はない。今回の外交文書の公開を通じて、これまで日韓両国政府の努力をいかに妨害してきたかを明らかにすることで、正義連の妨害をはねのけ、今度こそ、「最終的不可逆的な解決」に到達してほしいものである。
(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)
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