暗くなるプーチン大統領の前途 実情知る軍と政権内部で不満募る
New Sphere, Jun 9 2022
Mikhail Klimentyev, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP
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ウクライナ侵攻の正当性をプロパガンダするロシアのプーチン大統領だが、厳しい戦況を知る軍と政権の内部では、無謀で危険な作戦への不満がくすぶる。健康不安とあわせ、水面下では解任への動きが起き始めていると報じられている。
◆厳しい戦況 プーチンに募る不満
ロシア軍は東部で支配域をじわじわと広げているものの、短期決戦でのキーウ占領を描いた当時の構想は外れ、軍からの不満が表面化するようになった。英テレグラフ紙(6月4日)は、「プーチンの評判は深刻なダメージを受けた」と述べる。大衆向けには「特別軍事作戦」が成功しているかのようなプロパガンダを行っているが、陸軍内部には実態を把握している者も多い。兵が満足に補充されない現実に不満が上がっており、「将官たちはプーチンが予備兵の動員をためらっていることに憤慨している」と記事は伝えている。
こうした侵攻作戦の停滞は、プーチンに致命傷をもたらす可能性がある。米外交政策評議会(AFPC)のハーマン・ピルヒナー・ジュニア議長は、米ヒル紙(5月13日)に寄稿し、プーチン失脚のシナリオはあり得るとの考えを示した。ウクライナ侵攻の長期的な危険性を軍部が容認しきれなくなることで、ロシア軍の一部がロシア連邦保安庁(FSB)に同調し、解任へ足並みを揃える可能性があるとの分析だ。
◆健康不安での退陣もあり得る
ウクライナ情勢に加え健康不安も深刻だ。テレグラフ紙は、「さらに、この大統領に深刻な健康上の問題があるとの噂(がんからパーキンソン病までさまざまな推測がある)も、プーチンの時代が終わろうとしているのだという認識を強化している」と指摘する。
具体的な時期として、遅くとも来年までには何らかの動きが出てもおかしくない。英メトロ紙は、元MI6長官のリチャード・ディアラヴ氏の見解として、プーチンは来年までに大統領を退任させられ、病気の療養のために入院させられるとの予測を取り上げている。この方法により、クーデターを起こすことなくプーチンをクレムリンから追放できるとディアラヴ氏は考えている。
◆後継に適任者なく
プーチン本人に退陣の意思はないようだが、クレムリン内部ではすでに後継者選びの火花が散ろうとしている。テレグラフ紙は後継者候補として、元ボディガードで現在トゥーラ州知事のアレクセイ・デューミン氏の名前を挙げている。しかし、独裁的な気質があることから、高官らの賛同を得られるかは不透明だ。セルゲイ・ショイグ国防相も強力な候補であり、特別作戦の不振で威信は失われたものの、依然として可能性はあると同紙はみる。プーチンがこれらいずれかの人物を指名しない場合、ほかの権力層から次期大統領が選出されることになるが、決定的な影響力を持つ人物はいないのが実情だ。
米外交政策評議会のピルヒナー議長は、プーチン追放の機運が生まれれば、オリガルヒたちも資金面と影響力で力を貸すだろうと予測している。戦争の実情を知る軍と政権内部に加え、経済界においても、プーチン退任への筋書きが書かれようとしているのかもしれない。
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