人物

「ソニーの破壊者」と呼ばれた男・出井伸之…盟友が明かす「本当の素顔」

이강기 2022. 6. 28. 14:39
 

「ソニーの破壊者」と呼ばれた男・出井伸之…盟友が明かす「本当の素顔」

「新聞の悪口はプラス」と言い放った

 
週刊現代

2022.06.28

 

運命を変えた一本の電話

 

「『松本くん、僕らは友達だからさ』。

 

出井さんは、いたずらっ子みたいに笑いながら、そう言ってくれました。出会った当初は怖い印象しかなかったのに、今になって、あの笑顔ばかりが浮かんできて……。出てくる顔はおじさんなのに、まるで恋煩いをしているような気分です」

'95年から10年間にわたってソニーの社長、会長を歴任し、主にデジタル・ネットワーク事業を推進してきた出井伸之さん(享年84)について、松本大さん(58歳)はこう話す。

 

二人の出会いは'98年10月。当時、松本さんはかねて温めていたオンライン証券の事業構想を抱き、ビジネスパートナーを探していた。そんな時、知人から運命を変える一本の電話が入る。

 

「ソニーの出井伸之社長と食事をしているから来ないか、と。そこで出井さんに事業の説明をしたのが最初の出会いでした。ただ、ソニーとは出資比率で折り合いがつかず、交渉決裂寸前になってしまった。僕も諦めて別のパートナーを探そうと考えていました。

 

周囲に叩かれたっていい

そんな矢先の'99年1月、ダボス会議に出席していた出井さんからソニー経由で伝言が届いたんです。『はやまるな』。たった一言ですが、その出井さんの言葉で思い止まることができたんです」

 

同年4月、インターネットを使った個人向け証券取引会社「マネックス」が設立された。資本金は松本さんとソニーの折半。二人の半年にわたる交渉が結実した瞬間だった。

                                                                     Photo by GettyImages

 

だが、幸先のいい船出とも言えなかった。当時、松本さんは35歳。青年の革新的な挑戦に世間の目は冷ややかなものだった。そんな時も、出井さんだけは励ましてくれた。

 

 

「開業直前、マスコミからは『ネットなんて学生がやるもの』『証券業界で上手くいくはずがない』と散々叩かれ、正直、落ち込みました。けれど、出井さんに報告すると、こう言ってくれたんです。

 

 

出井さんは社長在任中、ソニーの中核事業を製造業からデジタルへと転換した経験をもつ。その際、「ものづくり」を軽んじていると内外から批判された。だからこそ松本さんの気持ちが痛いほど身に染みたのだろう。

 

 

出井さんの「伝言」

そんな出井さんが、珍しく強い口調で松本さんに迫ったことがある。創業からすでに10年以上経ち、事業も安定期に入った時のことだ。

 

「常にビジネスに革新を求めていた出井さんにとって、変化のないマネックスの状況が不満だったのでしょう。そして『無理やり変わること、ゼロから何を生み出せるかを考えよう。それはあなたの仕事だ』と言われたんです。

 

思わずはっとさせられました。今行っている全ゲノム情報を管理するベンチャー企業への支援を始め、出井さんの大切な『伝言』を忘れず、これからも背中を追い続ける日々ですよ」

 

常識を恐れず、果敢に新しい道を切り開く。そのバトンは次世代へと確実に繋がっている。

 

 

「週刊現代」2022年6月25日号より