中國, 韓.中關係

香港は一体誰のものか? 「返還25周年」の式典を見届けて改めて湧いた疑問

이강기 2022. 7. 5. 19:57

香港は一体誰のものか? 「返還25周年」の式典を見届けて改めて湧いた疑問

 

「一国二制度」が換骨奪胎されていく

週刊現代, 2022.07.05
 

香港は誰のものなのか

この御大が香港にやってくると、いつも「香港は一体誰のものか?」という疑問が頭をもたげてくる。御大とは、中国メディア式に記すなら、中共中央総書記、国家主席、中央軍委主席習近平である。

 

習近平主席が、6月30日午後3時10分、広東省深圳から高速鉄道に乗って、京港高速鉄道の終着駅にあたる香港西九龍駅に降り立った。元国民的歌手の彭麗媛夫人を伴っている。

 

この高速鉄道は、2018年9月23日に開通し、北京と香港を8時間56分で結ぶ、いわば「中国大陸縦断新幹線」だ。私は3年前に全線乗ったが、アジアで一番多忙を極める習主席がそんなことをするはずもなく、おそらくは深圳まで総書記専用機で飛んで、深圳北駅から19分だけ高速鉄道に乗ったのだろう。

 

 
 

そこから高速鉄道に乗って香港西九龍駅まで行くと、中国大陸からやって来た観光客たちが、ホームに降り立って指を差していた。それは「香港西九龍」と大書されたプレートだった。

 

「はて、駅名を見て、なぜ中国人は驚くのか?」――すぐにハッと思い至った。中国の高速鉄道なら「香港西九龙」と「龍」の字が簡体字で書かれるはずだ。ところが香港では「香港西九龍」と繁体字で記されているのが物珍しいのだ。

                                        Gettyimages

 

後に、この駅の事情に詳しい香港人の知人にこの話をしたら、笑って言った。

 

「高速鉄道の開通にあたっては、われわれと中国側との間で、ひと悶着あった。それは、入境の手続きをどこで行うかという問題だ。飛行機なら空港で行い、道路ならボーダー(境目)で行う。

 

高速鉄道の場合、中国側は、ボーダーで時速190kmの列車を止めたくないので、終着駅の香港西九龍駅に置くとした。

 

だが香港側は、それでは香港の中心部まで中国大陸が『浸食』することになり、『一国二制度』に反するとして反対した。

 

結局、われわれの抵抗も虚しく、中国側に押し切られてしまった。そこで、『香港には大陸とは異なる龍が存在するのだ』ということを見せつけるため、『香港西九龍』の巨大なプレートを、駅のホームに掲げたのだろう」

 

 

だが、CCTV(中国中央広播電視総台)のカメラが、そんな「香港人の矜持」を写すはずもなく、アップしたのは「国家好 香港更好」(国家が好ければ香港は更に好くなる)と書かれた紅い横断幕。それに御大と御夫人だった。

 

習主席夫妻の後、少し間を置いて降りて来たのは、丁薛祥党中央弁公庁主任、許其亮中央軍事委副主席、沈躍躍全国人大常委会副委員長、王毅国務委員兼外交部長、夏宝龍国務院港澳事務弁公室主任らだった。

 
 

「中華民族の偉大なる復興のため…」

この日で行政長官を、そして42年間にわたった官僚生活を終える林鄭月娥第5期行政長官と、夫君の林兆波氏が出迎え、深々と頭を下げる。

 

バックに控えるのは、梁振英前行政長官、李家超次期行政長官、張挙能終審法院首席法官、陳茂波財政司長、鄭若驊律政司長、梁君彦立法会主席、陳智思行政会議非官守議員召集人ら香港の最高幹部たちだ。

 

翌日に香港ナンバー2の政務司長に就く予定の陳国基氏が見当たらないが、彼については6月23日、香港特別行政区政府が「新型コロナウイルスに感染」と発表した。ちなみに、曽国衛政制内地事務局長も同様だが、何やら新体制の幸先が悪い。

 

駅のホームには、どこから連れて来たのだろうと思うほどの子供たちが溢れ、それぞれ「五星紅旗」(中国国旗)を右手で、「紫荊花紅旗」(香港区旗)を左手で振って、「熱烈歓迎!!」と叫んでいた。ダメ押しのように、香港警察楽隊が、御大が好きな中国共産党のマーチを演奏する。習主席は大きく右手を挙げるポーズを取って、ホームを離れた。

 

駅の構内で御大が歩く場所は、すべてピカピカの赤絨毯が敷かれていて、駅舎内でもチビッ子の「熱烈歓迎部隊」が待ち構えていた。こちらでは香港警察楽隊だけでなく、獅子舞も踊っている。御大は駅舎内でマイクの前に上がり、講話をぶった。横には4人の香港幹部が、直立不動で控えていた。

 

「明日は香港返還25周年の記念日だ。全国各民族の国民と香港の同胞が一体となって、この吉事を祝う。私は香港同胞に向けて、熱烈な祝賀と素晴らしい祝意を述べる。

 

私は常に香港を注視し、香港に想いを馳せてきた。私の心と中央政府の心はいつでも、香港同胞と共にある。この一時期、香港は厳しい試練に直面したが、一つひとつのリスク、挑戦に打ち勝ってきた。

 

風雨を経た後に、香港は火を浴びて再生し、生き生きとした姿となった。事実が証明しているのは、『一国二制度』は強大な生命力を持ち、香港の長期繁栄と安定、香港同胞の福祉の素晴らしい制度の維持、保護を確保しているということだ。

 

進みて止まらざれば、未来は開ける。いささかも動揺することなく『一国二制度』を堅持するのみだ。香港の未来は、必ずやさらに素晴らしいものとなる。香港は必ずや、中華民族の偉大なる復興のため、新たにさらなる貢献ができるだろう」

習近平体制のこの10年のスローガンである「中華民族の偉大なる復興」が、いきなり香港西九龍駅の駅舎内で鳴り響いたのだった。それを香港のごく少数の幹部たちと、訳も分からないであろう子供たちが、緊張の面持ちで聞いている。

 

駅舎に横づけされた総書記専用車「紅旗」は、ビクトリアハーバーを臨む香港島湾仔(ワンチャイ)の香港会議展覧中心(香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター)に向かった。待ち受けた160人余りの香港各界代表及び紀律部隊代表から、やはり「熱烈歓迎」の拍手を受け、記念写真を撮影した。

 

歓迎晩餐会はまさかのドタキャン

続いて御大は、沙田(シャーティン)地域にある香港科学園に向かった。香港科学園は、2002年にオープンし、英語名はホンコン・サイエンス・テクノロジー・パーク。40万㎡の建築面積に23棟が立ち並び、1100社余りの1万7000人余りの人々が、最先端の科学技術研究に従事している。

 

習主席はその中で、香港神経退行性疾病センターを訪れ、アルツハイマー病の最先端研究に触れた。それが終わると、香港科学園の幹部たちを集めて、再び講話をぶった。

 

「国家は科学技術のイノベーション活動を、高度に重視しており、イノベーション駆動発展戦略を深く実施している。国家はすでに香港の国際イノベーション科学センターを、第14時5ヵ年計画(2021年~2025年)に組み入れることを支持しており、香港に対して高い期待を持っている。

 

香港が自身の優位性を発揮し、全世界のイノベーション・リソースを集め、グレーターベイエリア(広東省・香港・マカオ)内の地域を一緒くたにするのだ。そして産学の研究イノベーションの新たな協同を強化し、全世界の科学技術イノベーションの新たな高みの建設に着手することを願う。

 

香港の科学技術従事者は、わが国が実施するイノベーション駆動発展戦略と、イノベーション型国家建設の重要なパワーを占めている。

 

皆さんが引き続き、愛国愛香港の伝統を高揚させ、イノベーションの自信を確かなものとし、世界の科学技術の先端を見据えることを願う。そして積極的に国家の重大戦略の要求に対応し、カギとなる革新技術の克服に着手し、わが国が世界の科学技術強国となるために貢献することを願う。

 

青年は、社会全体で最も活力に富み、最も創造力を持っていて、イノベーション科学の発展推進のための精鋭部隊だ。

 

青年のために道路、塔、橋を舗装し、さらなる発展の余地を提供し、青年がイノベーション、創業していく奮闘する人生において、夢を彩れるよう支持していく」

 

 

夕刻、林鄭月娥行政長官が主催する最後のイベントである歓迎晩餐会に向かう予定だった。場所は、香港島の中環(セントラル)にある行政長官官邸「礼賓府」である。

 

だが、習主席はこれをドタキャン。「紅旗」は、広東省深圳に引き返していった。一体何が起こったのかは不明だ。分かっているのは、「常に注視し、想いを馳せてきた」「心はいつでも共にある」はずの香港には泊まらなかったということだ。

 

 

李家超新行政長官とは何者か

翌7月1日は、湾仔(ワンチャイ)で、朝8時に行われた国旗掲揚式で幕を開けた。1997年の香港返還以降、最大規模の警備で、まさに島を挙げての厳戒態勢だ。香港人の友人にSNSで祝福のメッセージを送ったら、すぐに返信が来た。

 

〈 香港市民が熱烈歓迎しているなら、なぜこんなものものしい警備を敷く必要があるのか? われわれ香港市民は街も歩けず、一体誰のための記念日だ? 〉

 

たしかに、欧米などでよく見られるような、国の特別な記念日に、市民が自発的に明るい表情でパレードする様子とは、まるで異なっている。街はシーンと静まり返り、警察官ばかりがごった返している。いわば「北京方式」だ。

 

 

そんな中、多くの車に先導されて「紅旗」が香港会議展覧中心に入り、現地時間の午前10時から「返還25周年祝賀大会・第6期行政長官就任式典」が開かれた。私はCCTVのインターネット生中継で観た。

 

まずは、中国国歌『義勇軍行進曲』斉唱。その後、医療用マスク「KN95」を付けた習近平主席が壇上中央に立ち、皇帝然とした様子で、李家超(ジョン・リー)第6期香港特別行政府行政長官を任命。やはり「KN95」を付けた李新行政長官が、習主席と距離を保って、新たな幹部一人ひとりを紹介していった。壇上で誰もが、習主席に深々と頭を下げていく。

 

李家超新行政長官(64歳)は、まさに習近平主席のお目がねにかなった指導者だ。それは、香港を強力に取り締まり、北京(中央政府)に完全に従順であるという「二条件」を満たしているからだ。4月3日から14日に行われた新たな行政長官の立候補受付に、李氏だけしか名乗り出なかったところを見ても、事実上、習主席が李氏を「指名」した格好だ。

 

 

李家超新行政長官は1957年12月、香港に生まれた。大卒のエリートではなく、1977年に19歳で香港警察に入った叩き上げである。そのことも、習主席の好みと合致する。

 

香港警察では長く諜報畑を歩き、1998年には800kgもの爆薬保管庫を摘発するなど、諜報員として実績を積んだ。まさに、ウラジーミル・プーチン露大統領の経歴と重なり、「香港のプーチン」と囁かれるゆえんである。

 

諜報員としての実績を評価され、2003年にはロンドンの王室防衛学院で研修を受けた。その後もトントン拍子で出世を重ね、2017年6月、初の叩き上げの諜報員出身者として、保安局長に就任した。この辺りから、習主席の目に留まっていく。

 

保安局長時代は、2019年6月に始まった大規模な民主派デモを取り締まった。デモ隊との「攻防戦」の中で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった香港警察を指揮した。民主派グループにとっては「悪の権化」だが、「中南海」にとっては「香港の守護神」と映った。

 

2017年7月1日に習近平主席が任命した林鄭月娥前長官も、「中南海の傀儡」と言われ続けたが、習主席は明らかに、林鄭長官の仕事ぶりに満足していなかった。それは、林鄭長官が「弱い長官」に思えたからだ。香港特別行政区政府の官僚上がりのため、能吏ではあっても、大胆な政治決断には及び腰になった。

 

私は、個人的に林鄭長官と親しい人物を知っているが、その人物によれば素顔の林鄭長官は、「本当に心根の優しいオバサンで、夫と寿司を食べに行くことを最大の道楽にしている」という。

 

習主席が求めるのは、「戦狼行政長官」(戦う狼のような行政長官)だった。数年前から、中国外交部の一部対外強硬派の外交官を称して「戦狼外交官」と呼ばれているが、その香港版だ。

 

そんな中で、「戦狼行政長官候補」として白羽の矢が立ったのが、李家超氏だったというわけだ。昨年5月25日、李氏は保安局長がこれまで就くことがなかったナンバー2の政務司長に抜擢された。香港人が「武官治港」(武官が香港を治める)と驚愕した人事だった。

 

 

就任演説は広東語ではなく中国語

昨年12月19日に実施された香港立法会(議会)選挙は、今後の香港の行方を占う象徴的な選挙だった。何と定員90議席のほぼ全員が、「親中派」(建制派)で固められたのだ。

 

なぜ「親中派」ばかりになったかと言えば、新たな規定により、「愛国者」と認定された香港人でないと、立法会議員への立候補資格がなかったからだ。「愛国者」の認定を与えるのは、新設された資格審査委員会。その委員長を務めたのが、他ならぬ李家超政務司長だったのだ。つまり、現在の90人の立法会議員たちは、李氏に忠誠を誓ったようなものだ。

 

その立法会選挙に続いたのが、5月8日の行政長官選挙だった。行政長官を選ぶのは、750万香港市民ではなく、やはり「愛国者」に認定された1500人の選挙委員会のメンバーたち。しかも立候補者は、李家超氏ただ一人というシラケきった選挙で、99.2%の得票率を得て、第6期行政長官に選ばれた。

                                                 Gettyimages

 

人生最大の恩人であり、支援者でもある習近平主席の前で、李家超新行政長官は、就任演説を行った。母語の広東語ではなく、中国語でのスピーチを強制されたせいか、緊張気味のたどたどしい言葉で述べた。以下がその要旨である。

 

「本日、私は卑しくも、国家主席の宣誓監督のもと、中華人民共和国香港特別行政区行政長官に就任した。25年前、7月1日の午前0時0分に、いまわれわれがいる香港会議展覧中心に、中華人民共和国の国歌が演奏された。国旗と香港特別行政区の区旗が高らかに掲げられ、香港特別行政区が正式に成立した。『一国二制度』という新たに創造した構想が、正式に出航したのだ。

 

この4分の1世紀の間、香港は多方面で誇るべき成果を得てきた。世界一自由な経済体、世界3位の金融センター、世界5位の競争力都市、世界最大の人民元オフショアセンター、世界最大の航空貨物量、世界100強大学に5校入るといったことで、香港の成果は枚挙にいとまがない。

 

もちろん、香港にもその間、チャレンジはあった。世界的な金融危機、2014年の違法な「セントラル占拠」、2016年の旺角(モンコック)暴動、2019年の社会暴動混乱及び外部勢力による香港事務への干渉、国家安全への危害、そして新型コロナウイルスなどだ。

 

本日、中央及び香港市民から歴史的な使命を賦与されたことは、私にとって光栄無比であり、また責任は重大である。

 

私は全面的に精確に、『一国二制度』『香港人による香港統治』、そして高度な自治を、貫徹、実行していく。『憲法』と『基本法』が確定した特区の憲政秩序を維持、保護し、国家主権と安全、発展の利益を維持、保護し、香港の長期繁栄と安定を確保していく。

 

『香港国家安全維持法』を頒布、実施したことにより、香港を『混乱から統治へ』至らせ、選挙制度を保全し、香港に『愛国者が香港を治める』原則を定着させることになった。リーダー官員たちは、問題の萌芽時から主動的に介入し、積極的に指揮していく。

 

『一帯一路』と『グレーターベイエリア』(広東省・香港・マカオ一体化)の建設は、香港に無限の機会と無限の発展の余地を与えてくれる。

 

私の行政長官選挙でのスローガンは、『香港のために共に新たなページを開く』だった。『共に』というところが最も重要だ。『共に』は私の団体重視を反映し、二つの意義を持っている。

 

一つは、私と団体の団結一致であり、同じ心で同じ方向を向いて、『1足す1は2以上』の協同効果を達成していく。もう一つは、特区政府と社会大衆の団結だ。政府と社会、個人のパワーを凝縮し、共同で努力し、和衷共済し、利益を分け合っていく。

 

われわれは団結一致し、不撓不屈の香港伝説を継承し、香港のために共に新たなページを開き、さらに素晴らしい香港を建設していく。香港の長期繁栄と安定のために貢献し、中華民族の偉大なる復興の実現のために貢献していこうではないか」

 

以上である。就任演説の様子が、誰かに似ていると思いきや、やはり2000年5月7日にクレムリン宮殿で演説した「あの人」ある。この日、ロシア大統領に就任した47歳のウラジーミル・プーチン氏は、脇で見守る「後見人」ボリス・エリツィン前大統領の前で、弱々しい声で就任演説を行った。

 

22年後の香港でも、「新主役」は弱々しい声で演説し、「後見人」習近平主席が、どかんと見守っていた。香港人が密かに付けた「香港のプーチン」というネーミングは、まさにピッタリである。

 

 

いつになく具合が悪そうな表情で

続いて、「本当の主役」である習近平主席が、重要講話を行った。習主席の重要講話はいつでも長大だが、この日も頗る長かった。以下は、要旨の要旨である。

 

「中華民族5000年以上の文明史には、華夏の先住民が岭南の土地で、勤労耕作に励んでいたとの記載がある。(1840年の)アヘン戦争以降の中国近代史には、香港が割譲された屈辱の記載であり、さらに中華の子女の危急存続の抗争が記載されている。

 

中国共産党が人々を団結して導いた波乱壮大な百年の奮闘史であり、香港の同胞が独特かつ重要な貢献をしたことが記載されている。有史以来、香港同胞は終始、祖国の風雨と同じ舟に乗っており、血脈を相通じているのだ。

 

(1997年に)祖国に返還されてから、香港は各種の風雨、挑戦に戦勝し、一歩一歩前進してきた。国際的な金融危機、新型コロナウイルス、もしくは一部の激しい社会動乱はあったが、どれも香港が進んで行く歩みを遮ることはできなかった。

 

(2000年に)香港国家安全維持法を制定し、香港特別行政区が国家安全の制度規範を維持、保護できるようにした。香港の選挙制度を改正、保全し、「愛国者が香港を治める」原則が定着するよう確保した。

                                                            Gettyimages

 

『一国二制度』は前代未聞の偉大な壮挙だ。『一国二制度』の根本的な主旨は、国家の主権、安全、発展利益を維持、保護し、香港とマカオの長期繁栄と安定を保持することにある。中央政府が行うことはすべて、国家のためによいこと、香港とマカオのためによいこと、香港とマカオの同胞のためによいことなのだ。

 

香港の祖国返還20周年の祝賀大会で、私は言ったことがある。中央は『一国二制度』の方針を貫徹するにあたって、2点を堅持する。第一に、変化せず動揺しないという保証を堅持することだ。第二に、走り去ったり形が変わったりということがないよう全面的かつ的確に保証するということだ。

 

今日、再度強調したい。『一国二制度』は実践の反復と検査実験を経て、国家や民族の根本的な利益に合致しており、香港とマカオの根本的な利益に合致したものであると。14億人以上の祖国の人々の力強い支持を得ており、香港とマカオの市民の一致した擁護を得ており、国際社会の普遍的な賛同も得ていると。

 

『一国二制度』の香港での豊富な実践は、われわれに多くの貴重な経験を残してくれたが、同時に少なからぬ深刻な啓示も残した。

 

第一に、必ずや全面的に精確に『一国二制度』の方針を貫徹しなければならないということだ。国家の主権、安全、発展利益を維持、保護することが、『一国二制度』の方針の最高原則なのだ。社会主義制度は中華人民共和国の根本的な制度であり、中国共産党がリードするのが中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴なのだ。特別行政区のあらゆる市民は、国家の根本的な制度を自覚、尊重し、維持、保護していかねばならない。

 

第二に、中央が全面的に管理、統治する権利と、特別行政区が高度な自治を行う権利とを統一的に保障することを堅持しなければならないということだ。香港は祖国に返還され、新たに国家のコントロールシステムの中に組み込まれたのだ。

 

第三に、必ずや『愛国者による香港統治』を定着させることだ。政権は必ず愛国者の手中にあるというのが、世界で通用している政治の法則というものだ。第四に、香港の独特の地位と優位な点を保持して行かねばならないということだ。

 

中国国民と中華民族は、立ち上がった時代、富んできた時代を経て、強くなってきたという偉大な飛躍の時代を迎えている。それは香港の同胞も、同じ席にいるのだ。

 

第一に、統治のレベルを引き上げることに着手していく。第二に、発展の効率を不断に増強させていく。中央が主導的に第14次5ヵ年計画(2021年~2025年)と、グレーターベイエリア、『一帯一路』の高質の発展などの国家戦略とをマッチングさせていく。

 

第三に、民生の切実な悩みを解決していく。第四に、共同で和諧と安定を維持、保護していく。香港の同胞全体が、愛国愛香港を核心としていくことを大いに高揚していくことを希望する。

 

黄鶴が飛翔するのに、飛雲の空を借りる。中華民族の偉大なる復興は、すでに不可逆的な歴史の過程に入った。偉大な祖国の確固たる支持があってこそ、『一国二制度』の方針は堅実に保障されるのだ。

 

わが国の(中国共産党100周年を経た2021年7月以降の)第二の百年の奮闘目標の新たな工程の上で、香港は必ずや、さらに輝ける創造をし、必ずや祖国の国民と一体となって、中華民族の偉大なる復興という栄光を享受するのだ!」

 

以上である。「中華民族5000年の文明史」から始まり、「中華民族の偉大なる復興」で終わった。全体として、750万香港市民が普段考えもしないであろう大仰な話が続いたのだった。

 

その間、満場の香港の各界幹部たちは、緊張した面持ちでロボットのように聞き入っていた。香港返還25周年を祝賀する式典なのに、会場には笑顔の一つもないのだ。本当は楽しく飲茶(ヤムチャ)でも食べながら祝いたかったのではないか。。目一杯、化粧をして取り繕っているが、両目の下には大きなクマができている。私は過去10年近く、公になった習近平総書記の演説を見続けてきたが、この時ほど調子が悪そうな習総書記の姿は見たことがない。前述のように、前日の晩餐会もドタキャンしている。

 

 

「一国二制度」はどこへ向かうのか

ともあれ、この式典が終わると、習近平主席はそそくさと会場を後にした。そして11時半頃、近くの人民解放軍駐香港部隊中環(セントラル)営区にやって来た。急いで軍服に着替えると、人民解放軍駐香港部隊の代表団と謁見した。

 

例によって割れんばかりの拍手の中、会場入りした習近平主席は、記念写真を撮影した後、香港ですでに4度目となる講話を述べた。

 

「香港が返還されて25年来、駐香港部隊は、党中央と中央軍事委が決定し、手配した政策を、堅実に貫徹してきた。『一国二制度』の方針と香港特別行政区基本法、駐軍法、を真摯に実行してきた。防衛の職務履行を中心とする各種任務をきちんと完遂してきたのだ。

 

特に、最近の香港情勢の深刻かつ複雑な変化に直面し、駐香港部隊は中央の香港統治活動の大局をうまくサポートしながら、香港を混乱から統治に転換させていく中で重要な役割を発揮した。

 

香港はいままさに、統治が活発化していく重要な時期に来ており、駐香港部隊の任務は忙しく、責任は重大だ。

 

新時代の党の強軍思想を貫徹し、新時代の軍事戦略方針を貫徹するのだ。新たな形勢と任務の要求を把握し、舞台の全面的な建設を強化し、使命の履行能力を引き上げるのだ。国家の安全と香港の長期繁栄、安定を維持、保護するため、『一国二制度』の実践を香港でつつがなく運行していくため、さらなる貢献をするのだ」

 

 
 

ホームでは、李家超新行政長官らが見送りに来ていた。習主席は列車に乗り込む時、李行政長官を傍に呼びつけ、再び説教をしている。李長官は緊張気味に肯くばかりだ。

 

こうして習近平主席の香港訪問は、慌ただしく幕を閉じたのだった。

 

「香港は一体誰のものか?」――冒頭の疑問が湧いてくる。「一国二制度」が李家超時代の5年で換骨奪胎されていくことが懸念される。