野田佳彦首相は「到底受け入れることはできず、極めて遺憾だ」と述べた。当然である。政府は、武藤正敏駐韓国大使を直ちに帰国させる事実上の召還を決めたが、それだけで済ませていい問題ではない。
日本の領土主権をあからさまに踏みにじる外国元首の行動に対して、より強い対抗措置をとる必要がある。国内の政局に揺れる野田政権が、領土主権で断固たる姿勢を示さなければ、韓国による竹島の不法支配はますます強化されることになる。
李大統領の竹島上陸強行の背景には、慰安婦問題とともに竹島をめぐる反日・愛国世論が高まっていることがある。日本の防衛白書(平成24年版)が竹島を「日本固有の領土」と明記したことに対し、韓国政府は強く抗議したうえ、軍と海洋警察の合同訓練を計画している。
任期があと半年の李大統領は、実兄の前国会議員や側近が金銭スキャンダルで逮捕されるなどで政権の求心力を失っている。日本による統治からの解放を祝う15日の「光復節」を前に、人気回復を狙って日韓の友好関係を犠牲にしたのなら恥ずべき行為だ。
竹島は日本政府が1905(明治38)年、島根県への編入を閣議決定し、正式に領土とした。日韓併合(1910~45年)とは無関係で、日本が領有権を確立する前に韓国は実効支配していない。
日本政府はこの際、竹島問題の国際司法裁判所への提訴を強力に推し進めるべきだ。これまでに2度(54年と62年)提案したが、韓国側が受け入れなかった。両当事者が付託に合意しない限り裁判所が動かない仕組みが壁だ。
野田政権には李大統領の暴挙を国際社会に訴え、日本への支持を取り付ける毅然(きぜん)とした措置を求めたい。同時に韓国側が日本の反発は大したものではないだろうと判断した可能性も考えるべきだ。
李大統領の行動は、日韓関係を破綻させ、日米韓の結束の基礎を崩すものだ。それを喜ぶのは核実験やミサイル発射をちらつかせている北朝鮮の3代目独裁者であることを忘れてはならない。