Facebook社の女性COOが語った、これからのリーダーに必要な4箇条
FacebookのCOO(最高執行責任者)シェリル・サンドバーグ氏が、2012年にハーバードビジネススクールで行った卒業スピーチです。目まぐるしい変化が起きるこれからの時代で、よいリーダーであるために必要なことを女性ならではの観点から語っています。
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ハーバードビジネススクールの素晴らしい先生方、親族の皆さま、ご来賓の皆さま。そして2012年卒業生の皆さん、門出の日にお招き頂き本当に光栄です。
学校長からこのお話を頂いたとき、「私より若くてクールな若者たちの前で話すのね? 簡単よ! そんなの毎日やっているわ」と思いました。彼らに「インターネットなしの学生生活ってどんな感じだったんですか?」「シェリルちょっと来て! この機能を"年輩"の人がどう思うか、意見を聞きたいの!」などと言われるとき以外は、若い人と一緒にいるのはとても楽しいです。
(会場笑)
実は今月ここにいられてとても光栄な理由がもうひとつ。17年前、私がこの学校の学生だったとき、キャッシュ・ランガン先生からソーシャル・マーケティングを学びました。彼女はこの国の臓器提供者の数がどれだけ少ないか、そしてそれが毎日18人の死に繋がっているということを例に挙げて、ソーシャル・マーケティングを説明していました。今月の初めにFacebookは臓器提供をサポートするツールを発表しました。これはランガン先生の研究のおかげです。ランガン先生、ありがとうございます。
■見知らぬ人たちと繋がれるのは、裕福な層の特権だった
なので、私が学生だったのはそんなに前のことではないんですよ。でも世界はものすごく変わりました。私がいたセクションBはAOLのチャットルームとダイアルアップサービスを使って、ハーバードビジネススクール初のオンラインクラスを立ち上げようとしました。ダイアルアップサービスが何かというのは後でご両親に聞いてください。
当時は、インターネット上に実名を載せるなんてとんでもないことでしたので、皆にスクリーンネームを割り当てていました。でも成功しませんでした。90人の人間が同時にオンラインでコミュニケーションを取るには、まだ時代が追い付いていませんでした。
でもそこに私たちは未来を感じたのです。テクノロジーが私たちをもっとよい世界に連れて行ってくれる。同僚や家族、友たちと繋がることになるのだろうと。昔は私たちの周りの人以外と繋がるには限界がありました。それは裕福でパワフルな人々―セレブ、政治家、CEO等―に許された特権だったのです。
でも世界は変わりました。今や誰でも世に自分を発信することができる。携帯電話があって、Facebookやツイッターにアクセスできれば、誰でも。これまで制度や上流階級が握っていた力が個人に移ってきた。歴史的強者から歴史的弱者へと。ものすごい勢いで世の中は変化しています。そう、私が皆さんの席に座っていたときには想像もつかなかった変化です。ちなみに私が卒業を迎えたとき、マーク・ザッカ―バーグはまだ11歳でした。
(会場笑)
■ポジションの悪かったグーグルを選んだ理由 「ロケットに乗れ!」
皆が世界と繋がるようになり、階級封建社会に変化が起こったことによって、キャリアのあり方も変わってきました。2001年それまで政府で働いていましたが、シリコンバレーで働こうと思って引っ越しました。でもタイミングがあまりよくなかったんですね。ちょうどバブルがはじけて、小さな企業はつぶれ、大きな企業は従業員を一時解雇していました。
当時ある女性CEOに言われました、「あなたみたいな人、誰も欲しがらないわよ」。引っ越して少し経ち、いくつか仕事のオファーがありました。どの仕事を受けるか決めるため、私はMBAの特技を活かしてスプレッドシートをつくります。縦の段に仕事を、私の基準を。会社の役割やミッション等を見比べました。
そこにはグーグル初のビジネスユニットにおけるジェネラルマネージャーのオファーがありました。今でこそそれが素晴らしいオファーであるとわかるのですが、当時は消費者向けインターネット会社など儲からないと、誰もが思っていたものです。しかもそこで一体何をマネージすればいいのか? グーグルにはビジネスユニットなどなかったのですから! しかもグーグルでの仕事は他のオファーよりも格下のポジションでした。当時同社のCEOになりたてホヤホヤだったエリック・シュミットに相談しました。「このスプレッドシートを見てよ! この仕事は私の条件に何も当てはまらないわ!」彼はシートを見て言います、「よく物事を見ろ!」。とてもいいキャリアアドバイスですね。
シュミックは言いました、「ロケットに乗っかれ! 企業が軌道に乗ってどんどん成長したら、キャリアもそれについてくるさ。企業が上手くいかなくなったらそのとき考えればいい。ロケットに乗って突っ走らないか? と誘われたら、あとは乗っかるだけさ」。
■年功序列や役職はもう役に立たない
その6年と半年後、私はグーグルを去ることになるのですが、彼のアドバイスは心にしっかり残っています。様々な企業からCEOのポジションでオファーがありましたが、私はCOOとしてFacebookで働くことを選びました。「なんで23歳の若僧のところで働きたいんだ?」と言われました。これまでキャリアは上にあがるための「はしご」に例えられてきましたが、もうそれは通用しません。もう年功序列や役職がものを言う時代ではないのです。
Facebookに移って間もない頃、1997年ハーバードビジネススクール卒業生のロリ・ゴーラーはE-bayのマーケティングで働いていました。私は彼女のことを少し知っている程度だったのですが、ある日彼女から電話がかかってきました。彼女は言います、「Facebookで一緒に働く可能性について少し話せない? 電話して何ができる、これができる、私はこんなにすごいのよ、こんなことがやりたいの! という話をしようかとも思ったけど、そんなことしたら他の皆と同じでしょ。だから聞くわ、今一番の問題は? どうしたらその解決のお手伝いができるかしら?」
もう開いた口がふさがりませんでした。そのときまでにかなり多くの方を雇用してきましたが、誰もそんなこと言わなかったし、私もそんなこと言ったことがなかったのです。ロリは自分本位に、自分がどれだけ優れているかを売らなかった。なので、私は言いました、「よし、あなたを雇うわ! 私の一番の問題はいい人材を確保することだったけど、あなたが解決したわ」。
■キャリアははしごではなく、ジャングルジム
ロリはまったく新しい業界でまったく新しい仕事を始めました。さらに、それは今までよりも低いポジションからのスタートとなりました。その後頭角を現し、今では多くの人を管理しています。ロリは言います。「キャリアははしごではなくジャングルジムね」。
常にチャンスを探してください。成長、影響、そして自分のミッションを探すのです。横に動くこともあれば、上に上がったり下に下がったり。レジュメの見た目を良くするのではなく、スキルを積んでください! 自分の役職ではなく、自分には何ができるかをきちんと見極めて。色々な仕事をしてみてください。計画はあまり立てすぎずに。そしてすぐに自分の仕事への見返りを求めない。もし私が卒業時に完璧なプランを立てていたら、今の私はなかったでしょう。
皆さんはこれからビジネスの世界に入っていきます。私のときはインターネットが始まりかけていた頃でしたが、皆さんの今の時代はインターネット時代です。私のときも競争は激しかったですが、皆さんの時代はもっと激しい競争社会です。私のときも物事の変化は早かったですが、皆さんの時代はさらに目まぐるしい変化の時代です。昔のような体制主義ではなくなった今、リーダーのあり方も変わる必要があります。封建階級主義の一点主義から、責任の分散へ。命令やコントロールから、人の意見を聞くこと、そして導くことへと。皆さんはこの学校でビジネスの知識だけではなく、人をリードすることも学んだはずです。
■正直なコミュニケーションの難しさ
これから入るビジネスの世界で、皆さんは自分の持つ学位や自分の人格に頼ってはなりません。自分の知っていることに頼るのです。皆さんの強みは書類ではわかりません、皆さんの強みは、人との信頼関係と尊敬を得ることから来るのです。これから才能、スキル、想像力、そしてビジョンが必要とされますが、何よりも一番大切なのは、心から本当の意味でのコミュニケーションを取ることです。周りの皆を刺激する話ができると同時に、周りの皆の話をきちんと聞くことができる人になることが大切です。
子供はとても正直ですよね。私の友人ベッツィーには五歳の子供があり、その時は2人目を妊娠中でした。5歳の子は彼女に聞きます、「ママ、赤ちゃんはどこ?」「赤ちゃんはおなかの中よ」。彼はまた聞きます、「ママ、赤ちゃんの腕はママの腕の中にあるの?」「違うわよ、おなかの中に赤ちゃんはいるの」。「赤ちゃんの足はママの足の中?」「違うわよ、赤ちゃんはまるごとママのおなかの中にいるのよ」。「そうなんだ、でもママ、それならなんでママのお尻はどんどん大きくなるの?」
(会場笑)
大人はここまで正直にはなれないですよね? でもそれは必ずしも悪いことではありません。私も子供を2人産みましたので、ベッツィーの気持ちがよくわかります。正直でいることが必ずしも良いことであるとは限りません。特にリーダーは真実を話し、真実を聞く必要があります。職場で真実を語ることは難しいですよ。いかにフラットに上下関係のない職場を目指したところで、そこには確実に「上と下の関係」が存在します。
つまり、どこでもある人の功績は他の誰かの主観によって評価されているのです。このような世界では正直でいるほうが難しいのです。職場で人がどのような会話をするか考えてみてください。「その事業拡大計画には反対だよ! そんなことバカげてる!」という代わりに人は「新しい事業に挑戦する理由はたくさんありますよね。マネージメントチームが事前アセスメントをしての結果だと思いますし。ただ、時期尚早なのでは......? 再考の余地があるように思いますが......」と言うでしょう?
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