飛べる零戦、米国から帰国 戦後70年に国内飛行計画
米国で日本人が所有していた零式艦上戦闘機(零戦)が5日、日本に「帰国」した。今も飛べる機体で、6年がかりの実現。戦後70年の来年、平和を願う国内飛行を目指す。
機体は三菱重工業製の22型で、パプアニューギニアで見つかり、米国人が購入し、ロシアでエンジンなど多くの部品を交換して飛行可能な状態に修復された。栃木県出身でニュージーランド在住の石塚政秀さん(53)が2008年に購入。「日本の技術力を世界に示したものづくりの原点」と日本への輸送を企画した。だが、年間3千万円の維持費がかかり難航。100人以上の協力と資金援助を得て、ようやく実現した。
飛行可能な零戦は現在5機とされ、全て米国にあった。唯一の日本人所有のこの機体は9月、発見当時のエンジンと共に横浜港に到着。日米当局から「武器輸入」「軍用機輸出」と指摘され通関に手間取ったが、書類をそろえて「軍用ではなく、中古飛行機」と証明、5日にようやく入国し、三つに分解した姿で神奈川県綾瀬市の保管拠点に着いた。零戦の計器板を複製・復元する活動をしている中村泰三さん(46)は「原形に近い状態で復元されている。飛ぶ機体であり極めて貴重」と述べた。
次の目標は来年の国内飛行。飛べる状態を維持しての保存も目指す。飛行機の組み立て場所など詳細は未定で、飛行許可や費用などハードルは高いが、「零戦は近代日本を考える道しるべ。戦争を忘れず記憶し、平和を願いたい」と石塚さん。ネットで資金を募るクラウドファンディングを6日に開始。企業スポンサーも募集する。零戦は、21~24日、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)で分解状態で有料展示する。問い合わせはゼロエンタープライズ・ジャパン(03・5435・5568)。(吉村成夫)