米主導の包囲網機能せず 北朝鮮4年ぶり中距離ミサイル
日本經濟新聞
【ソウル=恩地洋介】北朝鮮は30日、中距離弾道ミサイルを4年ぶりに発射した。通常の角度で撃てば、米領グアムに到達する可能性がある。ウクライナ情勢に集中するバイデン米政権を挑発する北朝鮮の意図は明らかだが、米国が主導する国際社会の包囲網は機能していない。
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米韓の当局は今回のミサイルの特性から、2017年5月に発射した「火星12」に似ていると分析している。当時も今回と同様、発射角度を通常より高くする「ロフテッド軌道」で撃った。米国は火星12の射程を4500キロメートル以上と評価している。
日本が受ける脅威の度合いはフェーズが変わった。朝鮮半島全域を射程とする過去6回のミサイルは、韓国の迎撃網を突破する短距離核戦力の実戦配備に向けた発射実験だったとみられる。今回のような中距離弾道弾は、米国や在日米軍基地が標的だ。
北朝鮮の狙いは、米国の関心を朝鮮半島情勢にひき付けることだ。今月19日には金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席した朝鮮労働党政治局会議が、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆していた。
金正恩氏はバイデン政権に、核軍縮措置と制裁解除などの取引を認めさせようとしている。北朝鮮外務省のホームページによると、25日のジュネーブ軍縮会議で演説した北朝鮮代表は、米国に対し「敵視政策と二重基準を撤回し、朝鮮半島周辺の軍事演習と核戦略資産の投入を永久に中止すべきだ」と要求した。
好き放題に挑発を繰り返すのは、北朝鮮に対する国際社会の圧力が効いていないからでもある。
米インド太平洋軍は29日(日本時間30日)、北朝鮮のミサイル発射を「非難する」との声明を発表した。「日本や韓国などと緊密に協議している」としたうえで、不安定化につながるような行為を控えるよう求めた。
ただバイデン政権はウクライナ情勢にかかりきりで、北朝鮮に関心を向ける余裕はない。21年には北朝鮮に対し「緻密かつ現実的なアプローチ」で臨む方針を打ち出したが、実際には発射実験に対して非難と対話の呼びかけを繰り返すにとどまる。
国連安全保障理事会は17年の核実験とICBM発射を受けて、主要産品の輸出禁止や石油精製品の供給を制限する厳しい制裁を決議している。今月20日に安保理が開いた非公開の緊急会合では、挑発のエスカレートを止めるため米国が追加制裁を提案したが、後ろ盾の中国とロシアが賛同しなかった。
また中国は2月4日に開幕する北京冬季五輪の成功へ集中している。北朝鮮はこの間隙を突いて、経済が厳しい状態にあるにもかかわらず核戦力の引き上げに資産をつぎ込んでいる。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は30日の国家安全保障会議(NSC)で「17年に緊張が高まった時期と似た様相を見せている。ICBM発射の凍結措置は破棄寸前に近づいた」と指摘した。
17年は当時のトランプ大統領が朝鮮半島周辺に空母や爆撃機を展開して軍事的圧力を強めた。専門家は今の金正恩氏の意図を「国際社会のレッドライン(越えてはならない一線)を試そうとしている」(北韓大学院大の梁茂進教授)とみている。
北朝鮮指導部は2月16日の故金正日総書記の生誕80周年に合わせた盛大な行事を計画している。韓国軍は軍事パレードの兆候を捉えている。
「国防力強化」は党のトップに就いて10年の金正恩氏が誇りやすい成果といえる。金正恩体制になって1カ月に7度もミサイルを発射したのは初めてだ。米韓当局は今後、「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射する可能性があるとみて警戒している。
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分析・考察
ミサイル発射実験などを絡めた北朝鮮の外交戦略は巧妙であり、筆者も過去に何度かうならされたことがある。米バイデン政権は、中国と対立しながら同時にウクライナ問題でロシアと対決姿勢を強めるという、勝算の立ちにくい動きに出ている。内政面でも手詰まり感が強い。こうした中では、北朝鮮に米国の関心が向くはずもない。このところのミサイル発射増加は、米国の関心を引き寄せて交渉を有利に始める狙いとの見方が多いものの、筆者はそうは考えない。人権重視を掲げるバイデン政権とは交渉はできないと見切りをつけた上で、相手のスキを突いて戦力向上に注力している表れだと、筆者はみている。ICBM発射実験も行う可能性も相応にある。
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