北韓, 南北關係

ミサイル連射の北朝鮮、その影で感じる「2017年」とは違う“不気味な兆候”

이강기 2022. 2. 1. 10:13

 

ミサイル連射の北朝鮮、その影で感じる「2017年」とは違う“不気味な兆候”

金正恩は何を考えているのか

 
 
牧野 愛博
朝日新聞外交専門記者
現代 Business, 2022.2.1

 

自衛隊の元幹部は「実戦配備されているという事実を強調することで、脅威を与えようとしている」と語る。韓国の専門家は「ミサイルの射程はすなわち、標的を意味する。火星12はグアムの米軍基地を狙う兵器。米国にメッセージを送りたかったのではないか」と語る。

 

北朝鮮は1月に7回、計9発のミサイルを発射した。これまでは、いずれも短距離のミサイルだった。別の自衛隊元幹部は火星12の発射について「脅威のステージが一段階、上がった」と語る。

 

北朝鮮メディアは31日、この発射を報じたが、肝心の米国に対する言及は一切なかった。ここに2017年当時とは違う、不気味な空気を感じる。

 

この間の北朝鮮の動きを子細に見ていくと、いくつか不可解、あるいは不気味な兆候が浮かび上がる。まず、北朝鮮が米国を批判し、強いメッセージを送ったのは、1月19日に開かれた朝鮮労働党政治局会議だった。金正恩総書記も出席し、北朝鮮が「暫定的に中止した全ての活動の再稼働」を検討するよう指示したという。これは、北朝鮮が2018年4月に決めた豊渓里核実験場の廃棄や核実験・大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止を指すとみられた。

 

だが、北朝鮮はわずか3週間前に、党中央委員会総会を開いて、2022年の施政方針全般を定めていた。そこでは新型コロナウイルス対策と農村改革が主要テーマに定められた。外交については「多事にわたる変化の多い国際政治情勢と周辺環境に対処して北南(朝鮮)関係と対外活動部門で堅持すべき原則的問題と一連の戦術的方向を示した」と伝えられた程度だった。当時、関係政府や専門家らは「コロナ対策で国境封鎖を続けるため、自力更生路線など内政に集中するつもりだろう」と分析していた。

 

年末から1月19日の政治局会議までの変化といえば、米国が北朝鮮国籍者6人などを独自制裁の対象に加えた程度だった。米国は国連安全保障理事会決議の制裁対象にも加えるように働きかけたが、中ロなどの反対で実現していなかった。空母や戦略爆撃機を次々朝鮮半島近くに派遣したトランプ政権時代の動きとは比べものにならない。最初から難癖をつけるつもりなら、なぜ、党中央委員会総会で決めなかったのか、という疑問が残る。

 

「歯切れが悪い表現」

また、1月19日の政治局会議の決定も、かなりあいまいな要素を含んでいた。朝鮮中央通信の表現を使えば、「朝鮮が先決的、主導的に講じた信頼構築措置を全面再考し、暫定中止した全ての活動を再稼働する問題を迅速に検討するよう当該部門に指示を下した」というものだ。

 

米韓関係筋は「検討を指示」という表現について「歯切れが悪い表現。危機を徐々に高めるサラミ戦術かもしれないが、政府部内で様々な意見が噴出したときに、よく見られる玉虫色の表現でもある。案外、北朝鮮内部で、決心がつかないのかもしれない」と語る。金正恩氏は2019年末の中央委員会総会でも「米国に制裁解除を期待して躊躇する必要はない」と語ったが、今月まで中距離弾道ミサイル発射は控えていた。

 

火星12の発射を伝えた1月31日付の労働新聞も、3面での報道にとどまった。金正恩氏はおろか、党政治局員が出席したという紹介もなく、米国への言及もなかった。グアムを射程に収める火星12を発射した以上、米国を意識していないわけがないが、中途半端な印象を与えた。

 

今のところ、軍が暴走している兆候もない。典型が昨年9月に北朝鮮軍総参謀長に就いた林光日氏の動静だ。林総参謀長は2021年11月7日、北朝鮮軍の砲射撃競技を朴正天党政治局常務委員らと参観したのを最後に、公式の動静が途絶えている。1月も、7回にわたってミサイル発射の機会があったが、全く姿を見せていない。

ここで思い起こされるのが、北朝鮮軍で弾道ミサイルを担当する戦略軍の報道官が2017年8月8日付で行った声明だ。声明は、火星12によるグアム島周辺の包囲射撃を検討していると警告する内容だった。

 

包囲射撃は「グアムの主要軍事基地を制圧、牽制し、米国に厳重な警告信号を送るためだ」とした。同じ日には北朝鮮軍軍総参謀部報道官も声明を発表し、米国が北朝鮮を先制攻撃したり、正恩氏を狙った作戦を実行したりすれば、直ちに反撃するなどと警告していた。当時は、トランプ大統領が「炎と怒り」を口にするなど、米国も敏感に反応していた。北朝鮮も米朝首脳協議は未体験のゾーンだった。「うまくいけば、米国との交渉に持ち込める」という期待感が、米国への過剰なメッセージにつながっていたと言えるかもしれない。

 

慎重な姿勢の背景

2017年当時と比べると、北朝鮮の姿勢はかなり慎重だ。1月30日に発射した火星12も、通常よりも高角度に打ち上げるロフテッド軌道で、日本の排他的経済水域(EEZ)に入らない場所に落下した。

「徐々に脅威の段階を高めるため、とりあえずはEEZの外に向けて発射し、その次の段階でEEZ内、さらに次の段階で日本列島を飛び越える発射を考えている」という推論も成り立つし、一方で「新型コロナや制裁で不満がたまっている国内の状況を慎重に見極めながら、ミサイルを発射している」という見方もできる。ただ、米国へのメッセージがないところをみると、米国と早期に交渉に持ち込めるという期待感は持っていないようだ。

 

北朝鮮にとってグアムを攻撃できる火星12や米本土を攻撃可能なICBM火星15(射程1万キロ以上)は「ハリネズミ戦略」に不可欠な手段だとされる。核兵器と組み合わせ、「北朝鮮を攻撃したら、米国にも甚大な被害が生まれる」と思わせて、攻撃を抑止するための兵器という意味だ。