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一時は日本を脅かした韓国経済、文在寅政権の悪手で絶望的状況に

이강기 2022. 2. 23. 00:23

一時は日本を脅かした韓国経済、文在寅政権の悪手で絶望的状況に

 

蓄えた果実を食い尽くした韓国、次期大統領も経済政策で苦戦必至

 

 
武藤 正敏 (元在韓国特命全権大使)
JB Press, 2022.2.21(月)

 

                             韓国の文在寅大統領(写真:AP/アフロ)

 

 

 韓国の大統領選挙が、3月9日に行われる。この選挙は、新大統領を選ぶ選挙であると同時に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の5年間の政権運営に対して国民が審判を下す機会ととらえることもできる。

 

 そしてその審判は、どうやらかなり厳しいものになりそうな状況だ。

 

自己評価と客観情勢に大きな落差

 

 文在寅大統領は昨年12月20日、青瓦台で開いた「2022年経済政策方向」報告会に出席し、主要関係者が出席する中で、5年間の政権の経済運営について自画自賛した。

 

〇厳しい時期、多くの危機と挑戦を乗り越えてきた韓国経済は期待を超える驚くべき底力を見せている。

〇包容と革新により危機の中でさらに強い経済に生まれ変わっており、追撃型経済から先導型経済に進んでいる。

〇最も肯定的成果は、危機の中で所得の両極化を減らし、分配を改善した点である。

 

〇(改善の背景として)市場所得においてはそれほど分配が改善したわけではなく、最低賃金の引き上げや各種の福祉政策の成果だ。

 

 しかし、韓国経済の現実は、文在寅氏の自画自賛とは程遠いものである。

 

〇無理な最低賃金の引き上げによって耐え切れなくなった中小企業者による労働者の解雇が進み、所得分配はむしろ悪化している。

 

〇労働組合寄りの政策に韓国企業の経済活動はますます困難になり、中小の製造業の困難は増している。

 

〇文在寅政権の政治により若者の希望は奪われており、韓国における特殊出生率は0.84にまで低下、人口減による経済停滞が目前に迫っている。

 

〇文在寅政権はコロナ防疫の成果を強調するが、現実はこれに反して感染者が急増している。既に、営業自自粛に耐え切れなくなった自営業者は1日1000件が廃業している。

 

〇人気のない次期大統領候補によるバラマキ公約で韓国財政は危機的状況を迎えようとしている。

 

 これだけの悪材料が重なり、韓国経済は次期政権下で一層の低迷を免れないとの見方が広まっている。その基盤を作ったのが文在寅大統領であり、次期大統領はそれを受け継ぎ深化させようとしている。

 

 

韓国の経営者の45%が「今年の経済はさらに暗い」

 グローバル会計コンサルティング法人EYハンヨンが新年経済展望セミナーに参加した企業のCEOを対象にアンケート調査を実施したところ、経済展望に否定的な意見が昨年より16ポイントも上昇し、45%となったという。事業規模が小さいほど経済展望について懐疑的で、資本金5000億ウォン(約450億円)未満の企業は否定的回答が51%であった。

 

 また業種に注目すると金融業界がもっとも悲観的に見ており、過半数の53%が今年の国内経済展望について否定的な予想を立てている。

 

 これを報じた中央日報は、「新型コロナ感染症による直接的な影響ではなく、地政学的対立や主要国の成長鈍化と緊縮基調により、対外的不確実性の影響を受けたもの」と分析している。

 

 確かに、韓国経済を取り巻く対外的要因は厳しくなっている。しかしそれ以上に、韓国経済は文在寅政権になってから体力を落としているのである。そこに対外要因が加わった複合不況の到来を経営者たちは察知し始めているというのが実際のところであろう.

 

 

企業の体力を削ぎ続けてきた文在寅政権の経済政策

 これとは別に、韓国経済学会が経済学者を対象に行った調査では、参加した37人の学者のうちの約半数の18人は「政策変化がない場合、5年後の韓国経済成長率は1%台まで下落するだろう」と答えたという。「政府の政策が成長と分配のうちどちらに優先順位を置くべきか」との質問には33人中14人が「成長」を挙げた。

 

 文在寅政権は、国民の所得を増やし、支出を増やすことで経済を成長させるという所得主導成長を経済政策の基本とし、労働生産性の向上を果たすことなく、最低賃金を5年間で2倍に増加させることを目指してきた。実際、大統領になって最初の2年間で最低賃金を29%引き上げた。しかし、企業がその負担に耐えられなくなり、3年目には2.9%の上昇に抑えざるを得なくなった。この最低賃金引き上げで特に痛手を被ったのは中小企業である。

 

 そればかりでなく、文政権は民主労総という過激な労働組合団体の意向を汲み取り、労働者寄りの政策を導入した。その典型的な悪法が「重大災害処罰法」である。

 

 同法は、ガス窒息死などのような産業災害による死亡事故や、2000年代に起こった加湿器殺菌剤事件などのように危険な商品の製造・販売による市民災害で死亡事故が発生した場合、事業主と経営者責任などに対し、懲罰的な損害賠償を命じ、懲戒刑などを課すという厳しいものである。しかも、処罰の基準があいまいであり、外国企業ばかりでなく、韓国企業からも懸念の声が上がっている。

 ちなみにこの2月15日には、次期大統領選挙の候補者・安哲秀(アン・チョルス)氏の陣営で、遊説用のバス車内で2人が一酸化炭素中毒により死亡する事故が発生した。この事件についても、雇用労働部が同法の適応を視野に調査に着手したと報じられている。もしも安全確保義務などへの違反が明らかになれば、安候補と国民の党が処罰を受ける可能性があるという。

 

 いかに労働者保護・消費者保護のためとはいえ、このように懲役刑を含む厳しい処分を言い渡せる法律が適応基準もあいまいなまま成立した韓国は、企業や経営者にとって、極めて活動しにくい国になってしまっている。また中小企業には同法の厳しい労働者保護を実行する準備が整っていないという調査結果もある。

 

 もはや企業にとって、韓国で事業を行うことにはリスクが大きく、海外移転が連鎖的に起きる可能性も指摘されている。こうした法律が存在する限り、外資は当然のこと、韓国企業でさえ「国内に投資しよう」という意欲は弱くなるのは当然だ。これも文在寅政権の経済政策が招いた結果なのである。

 

 

製造業、存続の危機

 朝鮮日報が、昨年来韓国製造業の苦境を報じている。それを取りまとめると以下のような現状である。

 

 国策シンクタンク産業研究院によれば、商品の販売などによる収益で利払いもできない上場製造業者の割合が昨年7-9月に39.1%に達し、IMF危機当時を上回ったという。製造業の40%は企業の売り上げの両軸である内需と輸出のいずれかが減少している。これは企業の成長潜在力が損なわれ始めたシグナルだ。

 

 製造業の就業者も5年前と比べて約18万人減少したという。これはサムスン電子と現代自動車の国内社員を足した合計とほぼ同じである。反面、韓国企業の海外法人の現地雇用は42.6万人(29.4%)増加している。いかに国内の事業環境が悪化しているかを示しているのだろう。

 

 ちなみに韓国の半導体をはじめとする6大主力製造業の営業利益率は5.4%であり、世界2000大企業(9.4%)の半分である。

 こうした中、不健全企業を政府支援で延命しているケースが増えているという。これは一時的な失業対策にはなっても、経営環境を改善させる抜本的な対策にはならない。むしろ経済の非効率性をいつまでも温存することになる。こうした状況に、国外での事業に重心を移す企業が増えている。

 

 文在寅世間の経済政策は企業フレンドリーとは言えない。企業に圧力をかけ、労働者寄りの政策を続ける限り、韓国製造業の国内脱出は続くだろう

 

 

「双子の赤字」という悪夢

 

 苦境に陥っているのは、個々の民間企業だけではない。

 

 中央日報は17日、「双子の赤字まで起きるか・・・大統領選挙後の韓国経済、防波堤もない」という記事を掲載した。「双子の赤字」とは、経常収支の赤字と財政収支の赤字のことだ。1997年の通貨危機の時もまさに「双子の赤字」状態だった。現在の韓国も、内外で経済リスク要因が同時多発的に発生し、通貨危機以来の「双子の赤字」が現実化しそうで、大統領選挙後の経済は極めて深刻な事態になりそうだという。

 

 経常収支の中身はさまざまな取引の総和だが、市場の大きく影響するのは貿易収支である。韓国経済は貿易に牽引されてきたが、昨年12月と今年1月の2カ月連続で貿易赤字を記録し、2月も10日までの段階で35億ドルの赤字となっているという。原因は原油、ガス、石炭などのエネルギー価格と食品価格の上昇である。

 

 財政赤字も今年までで4年連続の赤字を記録することになりそうだ。政府の総収入から総支出を差し引いた統合財政収支が4年連続で10兆ウォン以上という2ケタの赤字を記録する見通しだが、そうなれば史上初の事態だ。財政赤字の原因は、新型コロナ対応などのために政府の支出が増大したことも要因となっている。

 このように「双子の赤字」の可能性は限りなく高くなってきている。

 

 当然、国民生活にも影響が出てきている。

 

 生活必需品の価格が高騰しているばかりか、大統領選後には公共料金が軒並みアップする予定だ。

 

 また韓国では、新型コロナで資金繰りが苦しくなった小規模事業者や中小企業向けに実施した融資の満期延長・償還猶予措置をとってきたが、その期限が3月末にくる。それ以降の延長・猶予はないとされている。そうなれば都市銀行のリスク管理圧力は高まり、多くの債務者が一斉に資金繰りに苦しむことになるだろう。

 

 一方、高騰する住宅価格を含め物価抑制のため、韓国中央銀行は昨年後半から段階的に利上げに踏み切っている。これもまた債務者の負担を増やす要因となる。

 

 国家レベルで見ても、小規模事業者・中小企業レベルで見ても、そして一般市民レベルで見ても、これから待ち受けているのは相当過酷な事態となりそうだ。もちろん対外的な要因、新型コロナ感染拡大という要因は大きい。しかし、文在寅大統領が進めた「成長よりも分配重視」の政策が、韓国経済から対外的なマイナス要因を跳ね飛ばす「抵抗力」を奪ってきたのも事実である。

 

 

財政悪化なのに次期大統領候補の公約はバラマキばかり

 今後誰が大統領になろうが直面する韓国経済の状況は予断が許さない。それに備えた合理的で長期的な経済政策を示さなければならないが、各候補はポピュリズム政策を乱発している。

 

 大統領選の候補者が掲げた「公約」を実践するのに、大統領任期の5年間でどれくらいの費用が必要になるのかを、それぞれの党が試算している。

 

 李在明(イ・ジェミョン)候補を擁する「共に民主党」は270余りの公約を掲げ、300兆ウォンの費用が掛かると推定したが、公約別の費用は明かさなかった。

 

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の「国民の力」は200個の公約に266兆ウォンが必要だと計算した。新型コロナ対策50兆ウォン、基礎年金引き上げ35.4兆ウォン、兵士の給与引き上げ25.5兆ウォンなどである。

 安哲秀氏の「国民の党」は100個の公約に年間40.29兆ウォン、5年間で最大201兆ウォンが必要だという。

 

 しかし、各候補とも財源確保案については歳出予算を節約し、追加歳入を増やすなどというあいまいなものである。文在寅氏でさえ増税公約があったことと比べ、極めてずさんな公約である。現在、韓国の国債3年物の金利が8年ぶりの水準まで高騰しているが、これも財政状況に対する市場の懸念を反映するものであろう。

テレビ討論の際に顔をそろえた韓国大統領選に出馬する候補者たち。左から「正義党」の沈相奵(シム・サンジョン)氏、「共に民主党」の李在明氏、「国民の力」の尹錫悦氏、「国民の党」の安哲秀氏(写真:AP/アフロ)

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 韓国の経営者団体「全国経済人連合会」傘下の韓国経済研究院が、2月17日に発表した研究成果によると、2020~2026年の非基軸通貨国(ドル・ユーロ・円・ポンド・人民元を法定通貨として使わない国家)の財政健全性見通しを分析した結果、韓国の国内総生産(GDP)比の国の負債比率増加幅は18.8ポイントで、OECD加盟の非基軸通貨国17カ国で最も高くなったという。

 

 韓国の国の負債比率は2020年の47.9%から2026年には66.7%に急増すると予想されている。要するに財政状況が急速に悪化する見通しなのだ。

 

 韓国経済研究院は、韓国の負債増加速度が非常に早く、急速な高齢化と高い公企業負債などリスク要因が山積みしていると評価している。

 

 大統領候補がそれぞれ主張しているような、バラマキ政策を実施できるような財政事情ではないのだ。

 

 

経済活動の足を引っ張り続ける新型コロナ

 

 財政収支を改善するためには、できるだけ財政支出を減らす一方で、国内の経済活動を活発にして税収を増やすというのが王道だ。

 

 だが現在は、経済活動を阻害する大きな要因が存在する。韓国に限ったことではないが、そのネガティブ要因となっているのは新型コロナだ。

 

 このコロナ対策でも手詰まり感が出ている。

 

 韓国の新型コロナ感染者は2月16、17日と2日連続して9万人を超え、国家数理科学研究所によれば来月初めには最大で36万人、死者は1日680人に達する可能性があると指摘されている。まだピークアウトの兆しはない。16日には一気に3万人以上増加しており、同研究所はこれまでの感染者の増加を比較的正確に予測してきたと評価されている。

 そうした中、金富謙(キム・ブギョム)首相は、11日の中央災害安全対策本部会議で「社会的距離確保を調整することにより、経済的・社会的影響を極少化することを極めて重要な課題」と発言し、18日から「私的会合6人、営業時間午後9時まで」としてきた制限の緩和を検討しているとした。感染者が10万人台に近づいても防疫緩和基調に変化はない。

 

 感染拡大が続く中でも制限緩和に踏み切らざるを得ないのは、「営業規制撤廃」「損失補償」を求める自営業者らの抗議活動が頻発してからだ。抗議集会に参加した自営業者の中には、その場で断髪を行い、その髪を渡すため青瓦台まで行進をした者が何人もいたという。

 

 韓国政府の自営業者に対する補償は、日本や欧州諸国の10分の1水準だ。そのためにこれまで1日平均1000件の自営業者が廃業してきた。自営業者を救済しようと思えば、政府予算のさらなる増大を招き、財政収支の悪化につながる。それが出来ないかわりに、制限緩和に踏み切らざるを得なかったのだ。

 

 

ただ、コロナ感染急拡大の中、社会的距離確保の政策を緩和させれば、コロナ感染者は一層増大する可能性がある。そうなれば社会活動がまた停滞する大きな要因になる。

 

 一時は「K防疫」の成果を誇ってきた文政権だったが、結局それは国民の犠牲によって得られた成果でしかなかった。国民にこれ以上の犠牲を強いられない段階になった今、文政権の感染対策は逆回転をし始めたということだろう。

 

韓国経済から活力を奪ったのは誰か

 歴代の大統領、企業経営者、そして多くのビジネスマンや国民の努力によって目覚ましい発展を遂げてきた韓国経済だが、文在寅大統領に、経済理論からかけ離れた空想的経済政策により、その果実は食い尽くされてしまったようだ。次期大統領が誰になろうが、国庫にも民間企業にも余力はほとんど残っていない。

 

 それでも各候補者は大統領に当選するため、バラマキの公約を乱発している。おそらくめでたく当選できても、それを実行する原資を見つけるのは極めて困難だろう。文在寅政権の残した傷跡はあまりにも深い。

 
 

 次期政権は誰が大統領になろうと基盤の弱い政権とならざるを得ない。李在明氏は、今の与党共に民主党の主流ではなく、支持率が落ちてくれば、主流派のサポートは得られないだろう。野党が政権を取れば、国会で60%の議席を革新系が占めていることから、新たな政策を進める余地が限られている。バラマキ政策についても革新系に予算が抑えられる可能性がある。

 

 こうした状況を考えると、文在寅政権によって失われた活力を取り返すのは容易ではない。その間に韓国の人口は減ってくる。韓国にどのような未来が待っているのか。心配な要素が多すぎる。