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経済制裁を続ければロシアはウクライナから撤退するだろうか? これからの展開を読む

이강기 2022. 3. 7. 19:47
 

経済制裁を続ければロシアはウクライナから撤退するだろうか? これからの展開を読む

 
髙橋 洋一
経済学者
嘉悦大学教授

現代 Business, 2022.03.07

 

 

核兵器使用という最悪の結末

相変わらず、ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。

3月4日、ロシアがウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所を攻撃した。これには、さすがの中国も含む世界各国が非難した。筆者は直感的に、ウクライナをエネルギーで締め上げるとともに、ウクライナが核兵器保有しているとのデマをでっち上げるためではないかと思ったが、どうやら的外れでもなかったようだ

 

この後の展開の予測はあえて述べてこなかったが、最悪は核兵器使用、あるいはウクライナ国内の原発を破壊し、ウクライナ全土がチェルノブイリ化する展開だ。誰も住めなくして、非武装中立地帯を作るのか──プーチンならやりかねない。

                       火災が起きたウクライナのザポリージャ原発 [PHOTO: GettyImages]
 

そもそも、原発やダムなどへの攻撃は、ジュネーブ条約違反である。

欧米指導者は、プーチン大統領と政治的な接触をいろいろなレベルで試みているが、いまだに停戦のめどは立っていない。ロシア側は、ウクライナが停戦し、ロシア側の要求をすべて飲む「無条件降伏」を要求している。政治的交渉により、一刻も早く停戦を実現することが望ましいが、言うは易く行うは難しが現実だ。

 

欧米諸国はウクライナに対し軍事的な支援はするものの、直接の軍事介入はしないという大原則で動いている。ウクライナ上空を飛行禁止する要求がウクライナからNATOに来ているが、ロシアとの直接の軍事介入になりかねないので、欧米各国は否定的だ。

 

最後の手段として、「人道的軍事介入」がなくはない。1999年にコソボ紛争の際に行われたものだ。国連安全保障理事会の承認なしで行われた主権国家に対する最初の大規模な武力行使であった。しかしその当時は、この軍事介入には、米英仏独伊のほか、ロシアや中国も関与していた。今回は相手がロシアなので、これも考えにくい。

 

今のところ、欧米諸国は軍事的な支援と経済政策の組み合わせでロシアに対抗している。日本は欧米と歩調を合わせてやっている。

 

「金融核兵器」はどこまで効くか

 

では、欧米や日本などの経済制裁は現状効果を発揮しているのか。今後、どこまでプーチン政権やロシア軍の攻撃に影響を与える可能性があるのか。

 

当初の欧米の経済制裁は、ロシアの大手金融機関に対して、ドル建ての取引制限を行うことや、欧米などでの資産凍結、ハイテク輸出の制限にとどまっていた。銀行間の国際的な決済ネットワークであるSWIFTからロシアの銀行を排除する措置(ドル決済停止)は含まれていなかった。

                             Photo by GettyImages
 

ロシアはエネルギー大国であり、天然ガスは世界第2位、石油は世界第3位の生産量だ。ヨーロッパ各国は天然ガスの需要全体の三分の一をロシアから輸入している。

 

エネルギー価格への影響があるものの、輸出国のロシアにとってはさほど不都合でもない。だが、脱炭素化により天然ガス依存が強くなった欧州を含む先進国では、エネルギー供給減とともにエネルギー価格の上昇は痛いところだ。実際、そうした展開を先取りするかのように、エネルギー価格が急騰している。

 

ロシアは経済制裁による打撃を緩和するために色々と準備してきた。国家財政予算の削減や外貨準備の増強などだ。

 

ロシアは2014年のウクライナ危機以降、石油・ガス収入を利用して外貨準備高を積み上げてきた。2016年には3800億ドル(42兆円)程度だったのが、今や6800億ドル(75兆円)程度まで増強されている。GDPが1.5兆ドル(170兆円)程度なので、その45%にも達する外貨準備となっている。だから初期の経済制裁レベルでは、かなりの持久戦になっても持ち堪える可能性があった。そもそも2014年以降の経済制裁にも耐えられたきた以上、その程度の経済制裁なら平気だろう。

 

しかし、SWIFTから一定のロシアの銀行を除外する措置が、2月27日朝に欧米でついにまとまった。同日夜には日本も参加を表明した。

 

やはりドル決済停止までやらざるを得なかったのだ。「金融核兵器」ともいわれるこの手段は、一部銀行を除外したとはいえ、さすがにロシア経済にかなり効くだろう。さらに、ロシア中央銀行への資産凍結も同時に実施された。この両者の威力はかなり強い。

 

 

制裁への「耐性」が強いロシア

暗号通貨による抜け道も考えられるが、暗号通貨価格の下落を見る限り限界的だろうし、もし大きな抜け道になるようであれば、暗号通貨への規制もされるだろう。SWIFTにかわるロシア製決済ネットワークや中国人民元などでの決済もあるが、まだ実力不足であるから、SWIFT除外とロシア中央銀行資産凍結の効果を完全に相殺するまではいかない。

 

これらのロシア金融制裁が決まった27日以降、ルーブルは、1ドル80ルーブルから1ドル110ルーブルへと大きく下落した。

 

ロシア政府の破綻確率は今後5年で、28日に2割程度、先週末には6割程度まで高まった。

                                    Photo by GettyImages
 

こうした金融制裁は今後じわじわ効いてくるが、すでにその兆候もある。アップルやディスニーなどが相次いで、ロシアビジネスからの撤退を言い出した。サハリン開発においても、英石油大手シェル、英BP、米石油大手エクソンモービルなどが撤退の動きを示している。各社の経営判断であるが、決済代金をドルで入手できそうにないというのも大きな判断材料になったはずだ。ロシアでは、VISAとマスターも業務を停止する。

 

ロシア国内の政策金利は20%とそれ以前から2倍強になった。各種の制裁の結果、インフレ率は20%以上になるかもしれない。ロシア国民にとってはいいことは何もない。こうした動きは、ロシア国内での厭戦ムードを高める方向になるだろう。

 

しかし、だからといって、金融制裁がプーチン大統領にウクライナからの撤退を決断させるようになるという楽観はできない。第二次世界大戦以降、軍事力を伴わない制裁措置が成功したケースは5%くらいという実証研究もある。ただし、バイデン米政権関係者は、今回の措置は史上最も大きな打撃を伴う制裁であり、過去の事例とは異なるとしている。

 

英エコノミスト誌による2021年のロシア民主主義指数は3.24。世界167ヵ国中124位の非民主主義国家であり、こうした制裁への耐性は強いともいわれる。

 

それでも、何もしないよりは制裁措置を発動する方が、政治的な交渉をするためにも望ましいのは言うまでもない。