核実験場、早期復旧も 体制存続へ軍事力強化―専門家に聞く北朝鮮の狙い
Jiji. Com., 2年04月12日07時10分
される北朝鮮北東部の豊渓里核実験場施設=2018年5月、朝鮮中央通信公開(AFP時事)
【ソウル時事】ミサイル発射を繰り返す北朝鮮が、近く核実験に踏み切る恐れがあるとして、日米韓で警戒が強まっている。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネル元委員で、豊渓里核実験場の衛星写真を分析している「オープン・ニュークリア・ネットワーク」の古川勝久・上級アナリストに見通しを聞いた。
―故金日成主席生誕110年の15日までに実験を行う可能性は。
2018年に爆破した豊渓里核実験場の坑道の復旧状況次第ではあり得る。復旧が進められている「3番坑道」は入り口が二つあった。主要入り口は爆破されたが、映像では補助入り口は爆破されたようには見えなかった。補助入り口や坑道の奥深くがそれほど損傷していなければ、早急に復旧できる可能性がある。坑道の奥深くまで損傷している場合は、1~3カ月ほどかかるのではないか。
―軍事的意味は。
北朝鮮は21年の党大会で決めた5カ年計画に基づき、新型核弾頭の開発を進めてきた。金正恩総書記の執政スタイルは、実務主義の志向が色濃い。政治的アピールより軍事的必要性を満たすために核実験を行うとみられる。核実験の軍事的目標としては、(1)米韓に対する核抑止力の完成(2)抑止が破綻した場合に戦争をやり抜くための核ミサイル戦力の確保―の2点が考えられる。
次の核実験の目的が新型核弾頭の性能試験だとすれば、さまざまな新型ミサイルに搭載可能な小型化・軽量化された核兵器の試験が行われる可能性が高い。戦術核だけでなく、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載可能な(複数の弾頭で別々の目標を攻撃できる)「マーブ(MIRV)」も含まれると想定すべきだろう。米国のミサイル防衛システムをかいくぐり、米本土を攻撃できる核戦力を構築することを重要な目標と位置付けているようだ。
―正恩氏の思惑は。
正恩氏が最重要視しているのは自身の政権の生き残り。それには米韓からの干渉、圧力の排除が不可欠で、そのために強力な軍事力が必要と確信しているようだ。「対米交渉戦術の一環として核開発を進めておく」という見方は昔の話だ。
現在の米国と中国・ロシアの対立を考えるなら、北朝鮮が核実験をしても、国連安保理で新たな制裁決議が通る可能性は低く、北朝鮮にとっての追加的な「コスト」はさほどないとみられる。(ウクライナ侵攻で)制裁を受けているロシアに接近し、核ミサイルの関連技術や物資を不正に調達するチャンスともみているだろう。
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