北韓, 南北關係

強大な隣国ロシアの暴走に北朝鮮は何を思ったか

이강기 2022. 3. 19. 11:45

強大な隣国ロシアの暴走に北朝鮮は何を思ったか【礒﨑敦仁のコリア・ウオッチング

Jiji.com

2022년 3月 19日

 

国際秩序を揺るがすウクライナ侵攻

 

 ロシアによるウクライナ侵攻は、核兵器を持つ大国がその気になれば他国に攻め入ることを誰も止めることはできない、という現実を見せつけた。冷戦後の国際秩序を大きく揺るがす今回の事態は、北東アジアに住むわれわれにとっても決して対岸の火事ではなく、北朝鮮情勢に与える影響も甚大である。

 

 

◇ロシアの立場を全面支持

 

 ロシアのウクライナ侵攻に対して北朝鮮が初めて反応を示したのは、侵攻開始2日後の2月26日のことであった。北朝鮮外務省のホームページに「米国は国際平和と安定の根幹を壊してはならない」と題する個人名義の論評を掲載し、ウクライナの事態は「ロシアの合法的な安全上の要求を無視して、世界覇権と軍事的優位だけを追求して一方的な制裁圧迫にだけ奔走してきた米国の強権と専横にその根源がある」として、ロシアの立場に全面的な賛意を表明した。

 

 この時は学者による個人名義の論評という形にとどめていたが、さらに2日後には外務省が同様のラインで公式にロシア擁護と対米非難を展開しはじめた。ロシアの主張は「合理的で正当な要求」であることを再確認したうえで、「イラク、アフガニスタン、リビアを廃墟にしてしまった米国と西欧が、今になって自ら触発した今回のウクライナ事態をめぐり『主権尊重』と『領土保全』を云々(うんぬん)することは全く理屈に合わない」と強調。「主権国家の平和と安全を脅かす」のはロシアではなく、米国の方だと断じた。

 

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 北朝鮮とウクライナは、ソ連崩壊直後から国交を維持してきた。しかし、2014年のロシアによるクリミア半島併合に対して北朝鮮が容認する態度をとったため関係が悪化。2016年にはウクライナ側が北朝鮮との査証(ビザ)免除協定を破棄した。当時のウクライナは北朝鮮にとって重要な小麦の調達先であり5番目の貿易相手国であったが、北朝鮮は国境を接する軍事大国であるロシアとの関係を優先する判断を下したのである。 ただ、ウクライナ侵攻について『労働新聞』は一切報じていない。金正恩政権が今回の事態を自国民にどう説明するのか、まだ模索中だということだ。

 

 ロシアのウクライナ侵攻を食い止めることができなかった国連は、その非力さを改めて露呈した。3月2日、国連総会の緊急特別会合で採決されたロシア非難決議には193カ国のうち141もの国々が賛成したが、北朝鮮はベラルーシ、シリア、エリトリアとともに反対票を投じた。ロシアと友好関係にある中国やキューバですら棄権したにもかかわらず、である。

 

 これまで北朝鮮は、米国によるアフガニスタン・タリバン政権、イラク・フセイン政権への武力攻撃、NATO(北大西洋条約機構)によるユーゴ空爆やリビアのカダフィ政権への介入などに対して「アメリカ帝国主義」への強い非難と警戒心を露(あら)わにしてきた。一方、経済制裁解除に向けて中国とともに協力してくれているロシアに「帝国主義」のレッテルを貼るわけにはいかない。

 

 北朝鮮は、安保理決議で禁止されていることには気にも留めず弾道ミサイル発射実験を何度も繰り返してきた。今回、国連は、単なるミサイル発射実験ではなく他国への主権と領土を踏みにじる明白な侵略すら止める術がなかったのである。今後北朝鮮が何らかの思い切った行為を決断するとして、拒否権を持つ安保理常任理事国の中ロいずれかを味方につけてさえおけば問題はない、と考えないとは限らない。

 

 「中ロいずれか」というところがポイントである。中国とロシア・旧ソ連は歴史的に必ずしも一枚岩ではなかった。冷戦期における中ソ論争のように中ロが対立する局面が生じても、北朝鮮は状況に応じて中国かロシアのどちらかを味方に引き付ければ問題ないということだ。

 

 北朝鮮は今回、棄権に回った中国とは異なり、明確にロシアに擦り寄る道を選んだ。それは中朝関係が長期にわたって盤石なものとは断言できない状況にあることをも意味している。2018年3月に金正恩氏が最高指導者として初訪中して以来、中朝関係は非常に良好ではあるものの、この訪中の前年までは『労働新聞』が中国を「大国主義」だと名指しで非難していたことを想起すべきである。

 

 北朝鮮は中国の「大国主義」的な態度に対し、しばしば強い反発と苛立ちを表明してきた。なぜ核保有国の中国が北朝鮮の核開発に反対して米国主導の経済制裁に同調するのか、と。両国は同盟関係にあるとはいえ完全に互いを信頼しきっている仲ではない。もちろん、金正恩政権は香港やウイグルの問題では習近平指導部の立場に寄り添っており、後ろ盾としての「中国カード」に見切りをつけたわけではない。将来、中朝関係が再び悪化する可能性も念頭に置きつつ、今はロシアとの関係も強化し、「保険」をかけていると見るべきであろう。

 

 

ICBM発射実験のモラトリアム解除

 金正恩国務委員長は、昨年9月29日の施政演説で初めて「新冷戦」という言葉を用いて、「米国の一方的で不公正な組分け式対外政策」を非難した。北朝鮮にとって北東アジアの構図は、「米日韓」対「中ロ朝」という冷戦期の思考に戻ってしまっている。そんな中で起きたのが今回のウクライナ侵攻である。今後、北朝鮮はなおいっそう核兵器に固執することになるというのが大方の見方だ。

 

 金正恩氏は、核兵器開発を放棄したリビアのカダフィ体制がNATOの軍事介入を経て崩壊したことに着目。2013年3月にはそれを「中東諸国の教訓」と名付けて核保有の必要性を明確に訴えるようになったが、今後そのような論調がさらに強まることは必至である。

 

 北朝鮮は既に核抑止力を一定程度具備しているが、ロシアのウクライナに対する進撃の様子を観察しつつ、今後はミサイル防衛システムの強化なども検討するだろう。ウクライナの事態がなくとも昨年1月の第8回朝鮮労働党大会で国防力強化の方針は明確にされており、核・ミサイル開発は着々と進んでいるが、北朝鮮としてはますますフリーハンドを得た感触があろう。

 

 わが国の防衛省によれば、2月27日と3月5日に発射した弾道ミサイルは、いずれもICBM(大陸間弾道ミサイル)級であったという。北朝鮮メディアは3月10日、金正恩氏が国家宇宙開発局を、翌11日には西海衛星発射場を現地指導して、「軍事偵察衛星をはじめとする多目的衛星を多様な運搬ロケットで発射できるよう」指示したことを報じている。平壌郊外の順安空港にコンクリート製の土台が設置されたことも衛星写真の分析で明らかになっており、3月16日にはこの一帯から飛翔(ひしょう)体が発射されたが、直後に失敗したとみられる。

 

 金正恩政権下の核・ミサイル開発は、これまでも「有言実行」であったし、金正恩氏が兵器関連施設を現地指導した後は実験を強行するのが常であった。1月19日に開催された第8期第6回政治局会議では、金正恩氏が「アメリカ帝国主義との長期的な対決」を見据え、「われわれが先決的に、主動的に講じた信頼構築措置を全面的に再考し、暫定的に中止していた全ての活動を再稼動させる問題を迅速に検討することに対する指示を当該部門に与えた」という。2018年に当時のトランプ米大統領と約束していたICBM発射のモラトリアム(猶予)を解除する方針が示されたということだ。

◇日朝関係に与える影響

 

 ウクライナでの事態は、ロシアのように、力ずくで現状変更する意思の強い国家に対しては、外交による解決が難しいことを世界が再確認することになった。拉致問題を抱える日本は北朝鮮に対して極度の不信感を募らせてきたが、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、「北朝鮮のような相手とは外交する意味がない」との論調がますます勢いづく可能性がある。

 

 しかし、北朝鮮がどんなに難しい相手であっても対話を成立させなければ諸懸案は未解決のまま推移し、核・ミサイル開発は進展する一方である。20年前の小泉訪朝によって「拉致は日本政府のでっち上げ」との主張を180度転換させ謝罪に追い込み、5人の拉致被害者を奪還することができた事実を忘れてはなるまい。これまでの経緯から北朝鮮と外交的に向き合うことに懐疑的な見方が出てくるのは仕方ないものの、外交力を高める努力は安全保障上の措置を強化することとともに肝要である。

 

【筆者紹介】

礒﨑 敦仁(いそざき・あつひと)

慶應義塾大学教授(北朝鮮政治)

1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員(北朝鮮担当)、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロウ・ウィルソンセンター客員研究員を歴任。著書に「北朝鮮と観光」、共著に「新版北朝鮮入門」など。

(2022年3月19日掲載)

 

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