中國, 韓.中關係

台湾有事の元凶、「一つの中国」という詭弁が生まれた歴史的背景

이강기 2022. 5. 25. 12:08

台湾有事の元凶、「一つの中国」という詭弁が生まれた歴史的背景

 

中国による「断交ドミノ」から台湾を守れ、日米は何をすべきか

 
 
樋口 譲次
JB Press, 2022.5.25(水)

 

                  中国を訪問し周恩来首相と会食するニクソン大統領(1972年2月25日、写真:AP/アフロ)

 

米国務省、台湾独立不支持の文言削除

 

 5月22~28日の間、スイス・ジュネーブで開催されている世界保健機関(WHO)総会にオブザーバーとしての参加資格を有する台湾を、中国が締め出している。なぜか――。

 

 米国務省は、「二国間関係ファクトシート」をウエブサイトに掲載している。

 

 その中の「米国と台湾との関係」で、従来、米国は「中国は一つしかないという中国(中華人民共和国)の立場と台湾は中国の一部である」ことを認め(acknowledge)、「台湾の独立を支持していない」と述べてきた。(括弧は筆者)

 それが、2022年5月5日付で、台湾の独立不支持と自国の一部との中国の見解を認める表記を削除して更新された。

 極めて重大な立場の変更である。

 

 これに対し、早速、中国外務省は5月10日、この変更を非難し、そのような政治的操作を行っても台湾海峡の現状を変えることはできないと主張した。

 

 米国務省のネッド・プライス報道官は、表現が一部変更されたかもしれないが「基本的な政策に変更はない」と説明し、次のように述べた。

 

「ファクトシートは定期的に更新している。台湾に関するファクトシートは、台湾との非公式の堅固な関係を反映している。中国に対し、責任ある行動を取り、台湾への圧力を強める口実を作らないよう求める」

 

 ジョー・バイデン政権は、2021年1月20日発足以来、台湾との関係を強化する各種の具体策を打ち出してきた。

 大統領就任式に、台湾と断交した1979年以降初めて、蕭美琴・駐米台北経済文化代表処代表を招待した。

 

 大統領就任式前後には、10機以上の中国軍機が2日連続で台湾南西空域に進入するなど、台湾海峡付近における中国軍の活動が活発化していた。

 

 それを受け、国務省はプレスリリースで、中国に対し「台湾への軍事的、外交的、経済的な圧力の停止を求める」との声明を出した。

 

 そして、バイデン政権が進める同盟国や友好国との協力に民主主義国家である台湾との関係が含まれることを明言すると同時に、ドナルド・トランプ前政権の強力な台湾への支援を引き継いでいく方針を表明した。

 

 2021年3月に公表された国家安全保障戦略(暫定版)では、台湾が「先進的な民主主義国であるだけでなく経済、安全保障における死活的なパートナー」との記述がなされている。

 

 4月に入り、国務省は台湾との政府間交流を奨励する指針を示した。

 

 トランプ政権末期にマイク・ポンペオ国務長官が、台湾政府関係者と米連邦職員との接触に関する取扱規程を廃止する旨公表したことを踏襲する内容だ。

 

 これを受けて、台湾に非公式代表団が派遣され、また台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が5月に駐日米国大使公邸を訪問、8月にはグリーン臨時代理大使が謝代表公を訪問した。これらは断交後初めてである。

 

 米国は、国際社会において、「一つの中国」政策と矛盾しない範囲で、台湾の正当な代表が認められるべきとの立場を取っており、WHOの意思決定組織であるWHO総会への参加を支持するとの立場を5月に表明した。

 

 4月16日の日本の菅義偉首相とバイデン大統領による日米首脳会談では、台湾海峡の平和と安定の重要性に鑑み、両岸問題の平和的解決を促すこと、および日米安保条約第5条が尖閣諸島へ適用されることに合意した。

 

 日米共同声明に台湾問題が書き込まれたのは、日米両国が中国を承認する以前の1969年の佐藤栄作首相とリチャード・ニクソン大統領の会談以来であった。

 バイデン大統領は4月30日、就任から100日を迎えるのを前に、上下両院の合同会議で初めての施政方針演説を行った。

 

 同演説では、習近平国家主席を名指しして専制主義者だと批判し、米国が再び世界を主導して中国やその他の国との競争に勝ち抜く決意を表明した。

 

「バイデンに見捨てられる」と不安の声も上がっていた台湾であったが、「民主主義と権威主義との戦い」の最前線に立っているという台湾の地政戦略的位置付けが改めてクローズアップされた。

 

 その後も、バイデン政権は、首脳会談や外交・国防トップ会談を含め、軍事面などにおいて台湾への圧力を停止するよう繰り返し中国に求める発言をしている。

 

 さらに、米艦艇による台湾海峡通過を実施するとともに、台湾への武器輸出を促進するなど、軍事面において台湾を支援する姿勢を鮮明にしている。

 

 同政権は、トランプ政権以上に踏み込んだ台湾政策を展開しているのである。

 

 さらに、米国では、政府のみならず、議会も与野党一致して「アジア再保証イニシアティブ法」(2018年12月)や「台湾同盟国際保護強化イニシアティブ法(TAIPEI法)」(2020年3月)などを成立させ、一貫して台湾に対する支援を強化する方針を示している。

 

 以上を背景に、ウクライナ戦争がインド太平洋に及ぼす影響への関心が高まる中で行われた今回の「米国と台湾との関係」ファクトシートの更新は、米政府及び議会で、台湾政策をドラスティックに変更する動きが日増しに大きくなっている表れと見ることができるのではないか。

 

 言い換えると、「台湾の独立不支持」と「台湾は中国の一部」との中国の主張、いわゆる「一つの中国」政策に沿った「自主規制」を大幅に見直す兆候であると捉えることが可能である。

 

 その延長線上には、しかるべき時期に台湾(中華民国)を独立主権国家として再承認する布石であるとも見ることができそうだ。

 

 

中国と台湾との2分化へ

 1894年、主として朝鮮半島の支配をめぐって日本と清朝が衝突し、日清戦争が勃発した。

 

 この戦争に勝利した日本は、1895(明治28)年4月の下関講和条約によって台湾および澎湖諸島の領有権を獲得した。

 

 1911年、清朝の軍隊の反乱をきっかけに辛亥革命が起きると、清朝は対処することができず、皇帝は退位した。

 翌年の1912年、孫文は中華民国の建国を宣言、アジア最初の共和国が誕生した。

 1919年、孫文は中国国民党を組織した。孫文の死後、国民党の指導者となったのが蒋介石であり、彼は国民革命軍を率いて北方の軍閥を打倒する「北伐」を開始した。

 

 その頃、中国東北地方には日露戦争で得た利権を守るために日本の軍隊が駐屯していた。

 

 日本軍は、満州事変を起こして満州国を成立させると、さらに勢力拡大を目指した。

 

 一方、ロシア革命(1917年)の影響を受けて結成された中国共産党は毛沢東が指導者となり、瑞金(中国東部の江西省の山間部)に中華ソヴィエト共和国臨時政府を樹立した。

 

 蒋介石は日本との全面衝突を避け、毛沢東率いる共産党との内戦を優先した。

 

 しかし1937年、北京郊外の盧溝橋事件をきっかけに、日本は宣戦布告をしないまま中国との全面戦争に突入する。

 

 それまで争っていた国民党と共産党は、日本に対抗するため「国共合作と呼ばれる協力体制をとった。

 

 その後、国民党は米国、共産党はソ連の支援を受けて日本と戦い続けた。

 

 米国は、日中戦争間、国民党の蒋介石率いる中華民国を一貫して支援した。日本の敗戦に伴い、1945年に連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの命令によって中華民国軍が台湾に進駐し接収した。

 

 戦時中、日本に対抗するため手を結んでいた国民党と共産党は、戦後政治における主導権と統治地域を争い、再び内戦に突入した。

 

 この国共内戦に敗れた蒋介石と国民党は台湾に逃れ、毛沢東は1949年、中華人民共和国の建国を宣言した。

 一方、中華民国国民政府(国府)は、台湾接収に続く台湾への撤退以降、台湾の実効支配を維持してきた。

 第2次世界大戦終戦後の1945年12月、ハリー・トルーマン大統領は、国府を「中国唯一の合法政府」として認める大統領声明を発表し、以後30年間、中国大陸の共産党政府とは国交を結ばなかった。

 

 国府・国民党は、清朝後から1949年まで中国大陸を統治し、終戦後の台湾を統治している。

 

 一方、共産党は、1949年以降、中国大陸を統治しているが、台湾を統治したことは一度もない。

 

 以上の経緯に従うと、この時点で、いわゆる中国は蒋介石を首班とする国民党率いる台湾の中華民国と、毛沢東を首班とする共産党率いる中国大陸の中華人民共和国(中国)とに2分化された、と見るのが最も実態に即しているのである。

 

 

米国はなぜ台湾と断交したのか

 しかし、米国は、前述の通り、「中国唯一の合法政府」として認めてきた中華民国(台湾)と1979年に断交し、中華人民共和国(中国)と国交を正常化させた。

 なぜか――。

 

 当時、中国は珍宝島(ダマンスキー島)における中ソ武力衝突(1969年3月)に見られるように、東西冷戦下において中ソ対立(東側の内部対立)が激化し、中国はソ連による中国包囲網の形成と世界的覇権拡大の動きに危機感を募らせていた。

 

 一方、米国は、中ソ対立を巧みに利用すれば、東側共産勢力を分断して東西冷戦を有利に導くことができると考えていた。

 また、当時、米国の最優先課題は、中ソの支援を得た北ベトナムとの戦争(ベトナム戦争、1960年12月~75年4月)の泥沼からの脱出を図ることであった。

 

 そのため、同戦争への中国からの軍事援助を中止させたい思惑も重なり、双方の利害が一致して、米中両国は「協調関係」あるいは「並行戦略」の必要性を認め、その方策を探し始めたのである。

 

 ヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の秘密交渉の成果を踏まえ、ニクソン大統領は1972年2月21日、中華人民共和国を電撃訪問した。

 

 2月27日、上海コミュニケ(「ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明」)が発表され、米中関係の正常化のための諸原則並びに台湾問題に関する双方の立場が確認された。

 

 上海コミュニケにおける米中双方の台湾問題に関する確認事項(要旨)は、以下の通りである。

 

 

中国側

 

①台湾問題は、中国と米国との間の関係正常化を阻害している要の問題である。

 

②中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府であり、台湾は中国の一省であり、夙に祖国に返還されており、台湾解放は、他のいかなる国も干渉の権利を有しない中国の国内問題である。

 

③米国のすべての軍隊および軍事施設は台湾から撤退ないし撤去されなければならない。

 

④中国政府は、「一つの中国、一つの台湾」、「一つの中国、二つの政府」、「二つの中国」および「台湾独立」を作り上げることを目的とし、あるいは「台湾の地位は未確定である」と唱えるいかなる活動にも断固として反対する。

 

 

米国側

 

①米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論を唱えない。

 

②米国政府は、中国人自らによる台湾問題の平和的解決についての米国政府の関心を再確認する。

 

③かかる展望を念頭におき、米国政府は、台湾からすべての米国軍隊と軍事施設を撤退ないし撤去するという最終目標を確認する。

 

④当面、米国政府は、この地域の緊張が緩和するにしたがい、台湾の米国軍隊と軍事施設を漸進的に減少させるであろう。

 ニクソン大統領とその後任のジェラルド・フォード大統領は、台湾に安全保障上の何らかの支援を続けるとともに、台湾問題が平和的に解決されるかどうかについて米国が懸念している旨を強調するとの方針を示した。

 

 続くジミー・カーター大統領は、「ニクソン、フォード両大統領が受け入れた原則を確認する」、「米国が、平和的な変革を望む立場を強調する声明を出す」、「米国による台湾へのある程度の武器売却を中国が黙認する」(キッシンジャー著「中国(下)」、岩波書店、2012年、P387 )との新たな指針を提示した。

 

 そして、中国の柴沢駐米大使との会談で、米国が台湾に武器を売却しなければ、台湾は核兵器の開発に走らざるを得なくなるとの考えを表明して、台湾への武器売却の必要性を強調した。

 

 カーター大統領によってワシントンに招かれた鄧小平国家副主席は、米国の立場を容認し、米中関係の正常化が実現した。

 

 両国は、1978年12月15日、「米中外交関係の樹立に関する共同コミュニケ」を発表し、1979年1月1日に国交を樹立した。共同コミュニケの翌日(16日)、「米台相互防衛条約」は破棄された。

 

 その後、米国は、1979年3月に上下両院で採決した「台湾関係法」を、同年1月1日に遡って発効させた。

 

 米国は、東西冷戦を有利に導くとともに、ベトナム戦争の泥沼からの脱出を図るためチャイナカードを切り、中国は、中ソ対立の激化を好転させるためにアメリカカードを切ったのである。

 

 その際、米国は「中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府」であり、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」、すなわち「一つの中国」との主張に対し、それを容認したわけではないが、一定の認識を示さざるを得なかった。

 

他方、日本は1972年9月、田中角栄総理大臣が訪中して「一つの中国」の主張を理解し尊重することを表明して中国との国交正常化を果たした。

 

 それに伴い、台湾と断交し、「日華平和条約」は存続の意義を失ったとして破棄された。

 

 その後、中国の「一つの中国」原則は、列国が中国の報復を恐れる中で、あたかも否定できない事実であるかのように独り歩きするのである。

 

 大国の米国と日本が、自国の国益追求のため、小国の台湾の立場を軽視あるいは犠牲にしたことは否めない事実である。

 しかし、米国は少なくとも「台湾関係法」によって事後の政治的・公的な関係の維持に配慮したが、日本は台湾との外交関係に一方的に終止符を打ってしまった。

 

 その大局観・戦略眼のなさが、今日になっては大いに悔やまれるところであり、その重い責任に報いる課題が残されている。

 

 こうして、現実には、中華人民共和国(中国)と中華民国(台湾)とが2分化し政治体制を異にした国家として併存している。

 

 そして、特に中国が「一つの中国」の原則に固執してきたため、台湾問題は単に中国民族の統一という内政上の課題というよりも、国際政治上の重大イシューとして大きな問題を投げかけている。

 

 特に、米中対立が激化する中、本問題の行方は、当事国のみならず、インド太平洋地域、さらには世界の平和と安全を脅かす火薬庫として深刻な懸念材料となっている。

 

 この問題には、米国と日本が、中国の圧力に妥協して、国交正常化の際に取った台湾政策にも原因があり、そのため、両国には台湾海峡の平和と安定に向けた特段の努力が求められるのである。

 

 

台湾は正真正銘の独立主権国家

 台湾は、国際社会では「地域」として扱われることが多いが、正真正銘の「国家」である。

 

 国際法から見た国家とは、明確な領土領域、永久的住民および統治機関が備わっている有機的な組織体をいう。

 

 近代国家の統治機関は、一般的に、立法、行政および司法の三機関から成り立っている。

 

 すなわち、民主主義国においては、領土領域の住民である国民が、主権者として法律を制定し、法律に基づいて住民に対する行政が行われ、法律違反の疑いがあれば司法機関によって有無罪の判断が下される仕組みを整えた組織体を国家という。

 その上で、国際法上の人格をもつ主権国家は外交能力を備えていなければならない。

 

 言い換えると、単なる国家が主権国家となるためには他の主権国家からの承認(国家承認)が必要である。

 

(例えば、米国の場合、各州(State)は国家に、その上位の連合組織であるアメリカ合衆国(The United States of America)が主権国家にそれぞれ該当する)

 

 そして、主権国家となることで、国際機関などへの参加が可能になる。

 

 現在、台湾を国家として承認し外交関係がある国は、14か国である。以上述べたいずれの項目に照らしても、台湾は十二分に条件を満たしており、主権国家と定義することに異論をはさむ余地はない。

 

 しかしながら中国は、「台湾は中国の一部であって、台湾問題は中国の国内問題である」との基本原則を主張して曲げず、「一つの中国」の原則は中台間の議論の前提であり、基礎であるとしている。

 

 そして、中国は、その圧力で台湾と外交関係のある国々を断交に追いやり、また台湾を国際機関から締め出している。

 

 その狙いは、主権国家の条件である外交能力を剥奪することによって、中国が主張する「一つの中国」「台湾は中国の一部」原則の受け入れを台湾に強要し、国際社会に認めさせることにほかならない。

 

 中国の圧力によって、台湾と外交関係のある国々が次々と断交に追いやられる「断交ドミノ」が急速に進んでいる。

 

 蔡英文政権発足当初、台湾の国交国は22か国あったが、西アフリカのサントメ・プリンシペとブルキナファソ、中南米のパナマ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、ニカラグアそして大洋州のソロモン諸島とキリバスの8か国が台湾と国交を断絶し中国と国交を樹立したため、現在、14か国に減少している。

 

 現在、世界の国の数は196か国(うち、国連加盟国数:193か国、日本の国家承認国数:195か国)であり、そのうち台湾を国家承認している国は約7%に過ぎない。

 

 しかも、いずれの国も大国の利害に影響を及ぼさない小国であり、台湾の国際的悲哀を象徴している。

 

 他方、中国は、台湾の国際的空間を閉塞させようと、ありとあらゆる手段を駆使している。

 

 2003年に中国を発端とする重症急性呼吸器症候群(SARS)が近隣各国や北米にも伝播するという事件が起き、台湾でもSARSの流行が深刻な社会的混乱を招いた。

 

 これを契機として、台湾をWHO(世界保健機関)から排除することが、台湾だけではなく他国への脅威になりうることを国際社会に認識させた。

 

 紆余曲折はあったが、台湾は、ようやく2009年からWHO総会へのオブザーバー参加が認められるようになった。

 しかし、中国は、「一つの中国」原則の受け入れを拒んでいる民主進歩党(民進党)の蔡英文政権が発足した2016年5月前後から、国際社会に圧力を掛けたため、2017年以降、WHO総会へのオブザーバー参加が認められていない。

 

 そこで、バイデン大統領は今年5月、「WHOにおける台湾のオブザーバーとしての地位を回復する戦略を練る」よう国務省に指示する法案に署名した。日本など加盟13か国も台湾の参加を提案した。

 

 しかし、5月22~28日開催の第75回WHO総会への台湾の参加についても、中国が断固阻止している。

 

 そればかりではない。経済協力開発機構(OECD)の鉄鋼委員会、国連食糧農業機関(FAO)漁業委員会、国際民間航空機関(ICAO)総会、国際刑事警察機構(ICPO)総会、東アジア・ユース・ゲームズなど、ありとあらゆる国際組織や会議、競技への台湾不招待やボイコットを執拗に働き掛け、台湾の国際空間を閉塞させようとしている。

 

 最近では、中国が外国の民間航空会社に台湾を中国の一部として表記するよう強制したことも記憶に新しい。

 

 このままでは、台湾は「中国による台湾の国際的空間を圧縮する行為が、やがて外交関係をゼロにする」との危機感を強めざるを得ない。

 

 また、現在、辛くもWTO加盟(2002年)とWHO総会オブザーバー参加の地位を維持しているものの、今後中国による国際機関などからの締め出し圧力が一段と強まって、台湾の孤立・弱体化が進み、再び国民党政権時代のように中国の影響下に組み込まれる恐れが大いに懸念されるのである。

 

 

台湾が中国の一部だったことはない

 以上、中国が主張する「一つの中国」原則を、歴史や米中・日中関係を中心とした国際関係、そして国際法などの面から概観した。

 

 その結果、台湾が中華人民共和国(中国)の一部だったことは一度もないことは明らかである。

 

 また、台湾と中国が体制の異なる2つの国に分かれたこと、そして、台湾が正真正銘の独立主権国家であることもまた明らかである。

 

 つまり、中国の「一つの中国」原則は、一方的な政治的主張に過ぎないのである。

 しかし、台湾がおかれた現状は、中国の政治・外交的、経済的、軍事的、あるいは情報戦・プロパガンダなどの圧力・工作によって、主権国家としての地位が脅かされ、国際的空間から締め出されようとしている。

 

 さらに、中国は、台湾の武力統一の態勢を強化し、その時期が切迫しつつあることが懸念されている。

 

 この台湾問題に、大きな責任を有する米国と日本は、まず、切迫する台湾の武力統一の脅威に対し、これを抑止するため、クアッド(Quad)やオーカス(AUKUS)を背景に、当事国である日米台3か国による安全保障・防衛の連携メカニズムの構築を急がなければならない。

 

 その前に、わが国には、日本版「台湾関係法」を制定して台湾に対する協力体制を整備する当然の責務がある。

 

 同時に、中国による「断交ドミノ」「国際空間からの締め出し」に対し、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が連携し、それを阻止するだけではなく、台湾の国家承認国や国際機関への参加増大について、国際社会に向けた積極的な働き掛けを行わなければならない。

 

 そして、万一、中国の台湾侵攻の脅威が切迫する事態になれば、ウクライナ戦争で見せたように、日米を中心に西側民主主義国が結束し、台湾への政治・外交的、経済的、軍事的、あるいは情報など物心両面の支援協力を行うことはもとより、これをドラスティックな政策変更の適時と捉え、こぞってかつ一挙に「台湾の国家承認」に踏み切るよう周到に計画準備をしておくことが肝要である。

 

 

あわせてお読みください