日本では大学卒業の経済価値は決して高いとはいえない、なぜか?
役に立たない大学と価値認めない社会
2022.06.12
日本では大学卒の平均賃金は、高校卒より3割程度高い。しかし、OECDのデータによると、欧米での数字はもっと高い。アメリカは、大学院卒がさらに高くなるという意味で、超学歴社会だ。日本では高等教育の成果が正当に評価されているとは思えない。
日本で大学卒の賃金価値はどのくらいか?
日本は、大学卒と高校卒の間に大きな賃金格差があるという意味で「学歴社会」だと言われることが多い。
「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)で学歴ごとの平均賃金をみると、つぎのとおりであり、確かに格差がある(2020年の計数,一般労働者、月あたり)。
男女計では、高校卒 271.5 千円、大学卒 359.5 千円、大学院卒 454.1 千円だ。男性では、高校卒 295.1 千円、大学卒 386.9 千円、大学院卒465.4 千円。高校卒から大学卒になると32.4%(男性では31.1%)増える。大学卒から大学院卒になると26.38%(男性では20.2%)増える。
学歴別に賃金がピークとなる年齢階級をみると、ほとんどの学歴について55~59 歳だ。この年齢階層で、高校卒は314.5千円(男性は351.8千円)、大学卒は485.1千円(男性は505.3千円)、大学院卒は657.1千円(男性は676.7千円)だ。
高校卒から大学卒になると54.2%(男性では43.6%)増える。大学卒から大学院卒になると35.5%(男性では33.9%)増える。
アメリカは学歴社会:大学卒で賃金が7割高くなる
OECD(経済協力開発機構)が、学歴による賃金格差を国別に公表している。これは、ISCED3=100の教育レベル(ほぼ高等学校に当たる)に対する、高等教育学歴保有者の賃金の比率だ。
日本については学士レベルの数字は得られず、「高等教育」の数字になっている。これは「3次レベル」、つまり大学のほか短大や専門学校などを含むレベルだ。
ここでは、25〜34歳の年齢層を対象とした「高等教育」の数字を見よう。
■図表1 学歴別の賃金(25-34歳:高校レベルを100とする指数)
図表1に見るように、日本は136だ。つまり、高等教育を受ければ、高校卒より36%だけ賃金が増える。これは、上で見た賃金構造基本統計調査のデータとほぼ同じような結果だ。
しかし、図表1に示すその他の国と比べると、日本の数字は高いとは言えない。日本は、OECD平均とほぼ同程度だが、アメリカ、ドイツ、イギリスに比べると、かなり低い。
高校卒と大学卒の賃金格差が大きいという意味で、アメリカやドイツ、イギリスのほうが、日本より学歴社会だと言える。(なお、アメリカ、イギリス、ドイツ、OECD平均で「高等教育」のほうが学士より高くなっているが、この理由は不明)。
大学院卒はどう扱われているか
次に、大学院での教育が賃金にどの程度の影響を与えるかを見よう。
OECDのデータは、学士、修士、博士の別になっておらず、図表1のような区別になっている。
アメリカでは、大学レベルの教育も評価されるが、大学院レベルの教育が非常に高く評価されるという意味で、世界でも特殊な社会になっていることが分かる。その意味で、「超学歴社会」だと言えるだろう。
6月5日公開の「日本は『高学歴』とは言えない国、何が問題でそうなってしまったのか 」で述べたように、学歴が生まれつきの社会階層を飛び越える強力な道具になっているのだ。とりわけ大学院が強力な道具になっていることが、このデータからもわかる。
なお、大学院レベルに関する日本の値は、OECDのデータベースでは、得られない。
前記の賃金構造基本統計調査では、かなりの賃金上昇効果がある。とくに、大学院卒は、60歳台でも600千円台の高水準を保っていることが注目される。この意味で、大学院卒が賃金の面でも評価されていると考えられるかもしれない。
しかし、大学院卒に関するこのデータを額面通りに受け取ってよいかどうかは、疑問なしとしない。
なぜなら、大学院卒者の数は極めて少ないからだ(70歳以上の労働者は、全体で34万人であるのに対して、大学院卒は2240人しかいない)。これは、全体からみれば、ごく一部の人々だ。その人たちのために、数字が高くなっている可能性がある。
仮に大学院卒の人数が増加した場合に、いまと同様の賃金上昇効果を保てるかどうかは疑問だ。
日本では学歴が正当に評価されていない。
大学が社会に役に立つ教育を行ない、それを社会が受け入れれば、原理的には、アメリカのように学歴が上がるに従って賃金が増加するはずだ。
日本やヨーロッパで、アメリカほどの賃金増加がないのは、大学など教育機関に問題があるか、あるいは、社会が大学教育の価値を認めていないかのいずれか(あるいは両方)のためだということになる。
日本でもヨーロッパでも、企業が大学卒業生の価値を積極的に認めず、そのために大学卒の賃金があまり上がらないということは、十分に考えられる。
日本では、新規採用時に大学名によるフィルタリングが行われるだけで、個人個人の実力に応じた賃金が支払われているわけではない。
そして、大学卒であれば、勤務年数が経てば管理職に昇進する可能性がある。このため、50歳台に高校卒と大学卒の賃金格差が拡大する。
それに対してアメリカでは、学歴を得るための努力と出費が、賃金の高さで報われる。
大学が社会で評価される教育をしているか?
また、大学が社会の求める教育を行っているかどうかという問題もある。とくに日本の大学院は、伝統的に研究者育成のための機関と考えられておリ、社会の要請に応えるという意識は低かった。
なお、一般に学歴社会と思われている韓国で、大卒の価値が低いのは、やや意外だ。高等教育進学率がほぼ100%という高さなので、高校卒との差別化ができないのかもしれない。つまり、大学卒は必要条件だが、それだけでは賃金は上がらないということかもしれない。
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