「在日2世」だった私が、北朝鮮に騙されて行かされて「地獄の数十年」…“脱北者”が明かす「苦悩」と「悲しい現実」
数十年間、北朝鮮で生きてきた…
韓国では文在寅政権下で、脱北漁民が北朝鮮に強制送還された当時のDMZ板門店での引き渡し写真や映像が明るみに出て、人権派弁護士だった文在寅元大統領と文政権への批判が高まっている。
と同時に、いま再び「脱北者」への注目も集まっている。
7月18日、私は韓国で行われた「在日同胞 北朝鮮帰国者の記憶を記録する意味」という会にゲストとして招かれて、話す機会に恵まれた。
この会は日本のジャーナリスト・石丸次郎氏ほか、日本で帰国事業によって脱北した在日を支援する数名が渡韓して、支援活動の説明や韓国在住の脱北した在日の方から話を聞く会であった。
私は日本で生まれ、帰還事業で家族とともに北へ送還されてから数十年間、北朝鮮で生きてきた。いまは韓国に定着して生きている。
私は以前から、帰還事業で日本から北朝鮮に渡り、その後に脱北した身として「脱北帰国者」と呼ばれることに違和感を覚えてきた。果たして、私は「帰国者」なんだろうか、と――。
私は「誘引抑留者」である
北朝鮮と日本では、63年間、誰もが私たちのことを「帰国者」と呼んできた。日本へ行ったら、「私は(北朝鮮へ渡った)帰国者です」と言わなければ、「北へ送還された在日同胞」の脱北者であるということを、わかってもらえないのだ。
帰国者とは、辞書によれば、外国から母国に帰った人のことだ。
北朝鮮が故郷である在日同胞は、2%ほどだった。韓国が故郷である在日同胞は、98%だ。
その点、たしかに簡単にいえば北朝鮮に行った2%は「帰国者」と言えるだろうが、98%の「北へ送還された在日同胞」は、韓国から日本という他の国に行き、その後また北朝鮮という他の国に移動した、移民に過ぎない。
いや、「誘引抑留者」と呼ぶのが、もっとも相応しいだろう。
世界最大級の独裁者であった金日成(キム・イルソン)は、「過小評価と蔑視のなかで差別を受けている、在日同胞を、祖国の懐に受け入れる」という嘘で、私たちを誘引した。
そして、当時、在日同胞の日本での差別や生活苦という困難を利用して、北朝鮮は「地上の楽園」であり、「無償治療」や「無料教育」とまで謳って、誰でも幸せに暮らせる国だと見せかけ、93,339人の在日同胞を北朝鮮に誘引したのだった。
北朝鮮という「巨大監獄」
この世のあらゆる物には、名前がある。
飛行機は空を飛ぶもの、船は海上を行きかうもの、自動車は路上を走り、物を運ぶもの。
すべての名前は、その用途に伴う内容を含んでいる。
「帰国」とは、「帰った」ということであり、「北への送還」は、「送った」ということだ。
「帰国」という言葉のニュアンスは、自ら旅立ち、懐かしい故郷へ戻ったというイメージである。
ゆえに、戻った後に待ち受けていた、独裁と弾圧、監視と差別も、「自発的にすべて、君たちが故郷へ帰ったので、君たちのせい」と言われてしまうのだ。
「北への送還」なら、嘘と欺瞞で、他人によって他の国に送られたというニュアンスを抱かせることができる。
私は、脱北して韓国に定住しているが、つねに、「私は『帰国者』ではない。紆余曲折の人生のなか、かなりの長い期間にわたり、北朝鮮という巨大監獄で人生を無駄にした、『北へ送還された在日同胞』だ」と話している。
「騙されたほうが悪い」だって…?
このように話す私に、息子の年齢ともいえるような若い「北へ送還された在日同胞」2世の脱北者の牧師は、このように話した。
「騙したほうより、騙されたほうが悪いですね。今ごろになって、北への送還事業に対する真実を明らかにして、どうしようというのですか」
この話を聞いた時、私は真っ暗な夜、乾いた空に稲光が走るかの如く、目の前に閃光が走った。
私たちの両親は、つねに自分自身を、「騙されたほうがバカ」と、胸をかきむしって後悔していた。これは、身動きが取れずに、踏みつけられた虫けらのような人生を恨むとき、自分自身に対していう言葉だ。
北へ送還された当事者は、みな、息をすることもできない苦痛のなかで、北朝鮮をどれくらい恨みつづけたと思うのか。
泥棒に入られたほうが悪いということか? 被害者が悪いと? 彼の話を聞いた「北へ送還された在日同胞」の脱北者全員が、憤慨した。
浅ましい本質
「奴は、本当に『北へ送還された在日同胞』の子供なのか?」、「『北へ送還された』真実糾明の公開席上で、あんな話をするのは、『北へ送還された在日同胞』を無視するとんでもない野郎だ」、「これが、『北へ送還された在日同胞』1世と2世の差異なのか」など、異口同音に罵声を浴びせた。
韓国で、市民団体の経済正義実践市民連合や、脱北者支援団体「忘れな草」をはじめとする、様々な行事において、「北への送還」問題で集いを持つときには、つねに「北へ送還された」被害事実を中心にして、討論した。
私は、ただの一度も、自分を「帰国者」とは表現しなかったが、日本では「帰国者」と話さなければ、理解されなかった。
ゆえに日本ではいつも、「帰国者(北へ送還された在日同胞)」と、表記していた。
北朝鮮と日本において、「帰国実現」、「帰国者」、「帰国同胞」という表現は、北朝鮮という社会主義祖国への移動であり、人道主義的な立場での、自発的な「帰国事業」を正当化しようとする、浅ましい本質が隠されているように思えてならない。
日本が「母国」
「北への送還」は、現象だけみれば、自発的で人道主義的といえるが、その結果は、まったく自由ではなかった。
「善きサマリア人の法」(窮地の人間を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗しても結果責任を問われない)を、ご存知だろうか。
川に飛び込むのをただ見ているだけで、助けないことは、犯罪と同じである。
私の両親は、韓国が故郷であり、私は日本が「母国」である。
「帰国者」ではなく、「北へ送還された在日同胞」として、北朝鮮の途方もない嘘によって「誘引抑留」されて、40年あまりを虫けらのように生きて来た、その事実を、天下に知らしめたいのだ。
在日同胞が北朝鮮に移住することになったのは、「帰国」でなく「北への送還」であり、その本質は「誘引抑留」であることをわかってもらいたいのだ。
後編記事『北朝鮮「元住民」が明かす…金正恩“ミサイル発射”で、北朝鮮国民が直面する「ヤバい現実」』では、そんな私が北朝鮮で見てきた真実について紹介しよう。
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