論評, 社說, 談論, 主張, 인터뷰

韓国・前大統領が「北朝鮮スパイ」活躍の隙を与えた理由、元駐韓大使が解説

이강기 2023. 1. 28. 19:29

韓国・前大統領が「北朝鮮スパイ」活躍の隙を与えた理由、元駐韓大使が解説

Diamond Online, 2023.1.28 4:35
 
                                            写真はイメージです Photo:PIXTA

 

 

北朝鮮スパイの取り締まりを
放棄した前政権

 

 北朝鮮のスパイは文在寅(ムン・ジェイン)政権下においてのびのびと活動し、大きな成果を上げたが、その背景には同政権の政策と、韓国社会の特異な体質があった。それは次の4点である。

 

1.文在寅政権は事実上、スパイの取り締まりを放棄した。
2.韓国には左翼圏を支える人々がいまだに社会の中核にいる。そうした人々は北朝鮮の危険性、韓国の安全保障などに対し警戒感が薄い。
3.韓国社会の政治的分断が激しく、スパイに活動のスキを与えた。
4.日韓の歴史問題や在韓米軍の駐留に反対する人々がおり、日米と韓国の関係を引き離しやすくしている。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になり、全国民主労働組合総連盟(民主労総)と北朝鮮のスパイとの関係で家宅捜索を行ったことを契機に、北朝鮮スパイの韓国での活動に注目が集まっている。尹錫悦大統領にとって、北朝鮮スパイの摘発は、国会を支配する民主党に対抗して国内政治の主導権を回復し、また、日米韓の連携を強化した外交を行うためには不可欠なことであろう。

 

 北朝鮮スパイに活躍の場を与えた、文在寅政権下の韓国の状況について解説する。

 

北朝鮮との連絡窓口に
変えられた国家情報院

 文在寅政権は、本来北朝鮮のスパイや国内の反体制運動を取り締まるべき国家情報院の性格を、北朝鮮との連絡窓口に変貌させた。

 

 初代の国家情報院長となった徐薫(ソ・フン)氏は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で国家情報院の第3次長として北朝鮮との連絡役を果たしてきた人物であり、北朝鮮の金正日総書記が韓国の官僚の中で唯一顔と名前を知る人物といわれた。

 

 国家情報院は2017年、「忠北同志会」という組織が忠清北道清州市を中心に活動し、F35ステルス機導入反対運動を展開したのが北朝鮮の指令によるものであると把握しながら、徐院長の「南北関係は改善しているが、スパイ事件が起こされれば悪影響を及ぼすので保留しよう」の一言で裁可しなかったため、起訴できなかったという。

 次の院長となった朴智元(パク・チウォン)氏は金大中(キム・デジュン)元大統領の側近であり、同元大統領と金正日との首脳会談を仲介した人物であるが、その際5億ドル(約650億円)の秘密資金を渡したとして逮捕され、服役した人物である。同院長はスパイ活動など共産主義活動の捜査を行う対共捜査権を、経験豊富な国家情報院から警察に移管させ、対共捜査権を弱体化させるのに主導的な役割を果たした人物である。

 

 院長の関心事は国家情報院を北朝鮮との窓口にすることであったため、文政権下では北朝鮮スパイの活動は事実上黙認された。

 

 自由民主研究院のユ・ドンヨル院長によれば、2011年から17年までのスパイ摘発件数は26件であったが、文在寅政権(2017年~22年)での摘発件数は全体で3件だったという。しかもその3件は朴槿恵(パク・クネ)前政権時代に捜査中であった事件であるため、文在寅政権下での摘発は実質ゼロである。

 

 北朝鮮スパイに対する取り締まりがほぼなくなったことにより、彼らは韓国社会の中で大きく活動領域を広げたことであろう。

 

 

左翼活動家を民主主義信奉者と
誤解する韓国社会

 民主主義国家である韓国において、左翼主義者が大きな影響力を保持し続ける理由を、日本人は理解し難いであろう。それは韓国の戦後史と大きな関係がある。

 

 韓国では、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領による軍事政権が長く続いた。その間、市民による民主主義を求める活動に対し、政府は厳しく取り締まり、大学生など多くの若者たちが刑務所に送られた。彼らは拷問を受けるなど厳しい取り調べを受けたという。

 

 そうした学生の中に文在寅氏もいた。朴正煕大統領時代、ソウルにあった西大門刑務所に入れられた。また、全斗煥氏が光州事件を取り締まる際にも予防的に拘束され、司法試験の合格通知は拘置所の中で受け取ったという。

 

 全斗煥大統領によって拘束された学生活動家は現在60歳前後で、韓国社会では指導的立場にいる。そうした人々の中には、保守・反動は民主主義に反する「悪」、革新は民主主義を前進させる「善」であるとの感情をいまだ持ち続けている人が多い。

 

 また、金大中、盧武鉉元大統領の革新政権下では、革新を信奉し、軍事政権を否定する教育を行った。そうした教育を受けた人も、保守を「悪」、革新を「善」とする意識を持ち続けている。

 

 文在寅政権で青瓦台や「共に民主党」で中心的な役割を果たしてきたのは、こうした革新系の人々である。彼らは、保守への対抗意識を持って育ってきたため、団結力が強い。保守をたたき、革新を守ることに熱心である。揺るぎない結束が革新の強みである。

 

 そうした革新系の人々は、北朝鮮の核開発や挑発に対しては寛大である。北朝鮮は同胞であり、北朝鮮の核ミサイル開発は韓国に向けたものではないと思い込んで(あるいは自分に言い聞かせて)いる。また、金正恩政権の核開発が北朝鮮人民の窮乏を招いていることにも目をつむり、北朝鮮人民の窮乏を救うために協力しようとの姿勢である。

 

 このように韓国人が北朝鮮を性善説で見ることにより、北朝鮮スパイにとって、韓国社会での工作の余地が広がった。

 

 北朝鮮の核開発が戦略核から戦術核を中心としたものに代わり、韓国を明らかな標的とするものになった。さらに、北朝鮮の挑発も激しくなっている。このため、韓国の若者層では北朝鮮に対する見方が変わりつつある。しかし、いまだに50代以上の世代の多くは北朝鮮に寄り添っており、北朝鮮スパイの活動を軽視する風潮は続いている。

 

韓国社会の政治的分断が
北朝鮮スパイに隙を与える

 朝鮮日報は、新年の特別企画として、世論調査に基づく韓国社会の政治的分断状況について報じている。韓国国民の40%は「政治傾向の違う人とは食事もしたくない」と言い、20代の半数は「恋愛や結婚は支持政党の違う人とは難しい」という。また、韓国人の66%は「われわれは合理的で正しく、反対派は客観的事実を認めず偏向している」と主張するという。

 この数字が示すように、韓国国民の間の政治的分断はもはや修復、和解できないところまで来ており、対話が成り立たなくなっている。これが、北朝鮮スパイには格好の機会を与えている。

 文在寅氏は自らの政権について、朴槿恵政権を「ロウソク革命」で打倒してできた、民意が作った政権だという。しかし、そこに北朝鮮スパイの影響力があった可能性は否定できないかもしれない。

 

 朴槿恵元大統領が、友人の崔順実(チェ・スンシル)氏に機密情報を漏らし、国政において強い影響を受けていたとの暴露をきっかけに起きた、大規模デモ(ロウソクを持っていたことからロウソク集会と言う)を主導したのは、民主労総をはじめとする革新陣営である。朴槿恵大統領は、抗議活動の全国的な広がりで最終的には弾劾され、退陣した。

 今回の民主労総への国家情報院の捜査において、北朝鮮スパイと朴槿恵弾劾の関係についての言及はいまのところない。

 だが、民主労総の幹部が海外で北朝鮮のスパイとの折衝を始めたのが2016年(17年という説もある)、ローソクデモによる朴槿恵大統領弾劾が2017年である。この時系列からして、朴槿恵弾劾に北朝鮮スパイの関与があったと推定することは、行き過ぎだろうか。

 

 韓国・済州(チェジュ)の北朝鮮スパイ組織が尹錫悦氏の大統領当選直後となる昨年3月29日、「韓米合同軍事演習に反対する大衆闘争を集中展開し、就任を控えた尹錫悦はもちろん米国にも強力な圧迫攻勢をかけなければならない」という内容の指令を受け取ったことから見ても、朴槿恵大統領弾劾に一役買った可能性は否定できないだろう。

 

 それは韓国社会の分断を利用し「好ましくない大統領」を退任に追いやった、巧妙な政界工作の可能性がある。

 

 尹錫悦政権は北朝鮮に対する強硬な姿勢を取り続けている。

 

 また、「共に民主党」代表の李在明氏が城南市長時代に都市開発絡みで不正を働いた疑惑、サッカークラブ「城南FC」への寄付の見返りに企業に便宜を与えた疑惑なども追及している。

 

 さらに、尹錫悦政権は北朝鮮が韓国水産庁の職員を射殺したことに関連し、文在寅政権が真相をわい曲した疑惑を提起している。

 

 こうしたことからも、北朝鮮にとって尹錫悦大統領は邪魔な存在である。そこで、北朝鮮は保守・革新の対立・分断を利用し、韓国の国内政局を不安定化させ、あわよくば尹錫悦政権を退陣に追い込もうと考えていたとしても不思議ではない。

 

 韓国政界で対話が失われたことで、北朝鮮に利用される余地を生じさせている。

 

 

北朝鮮スパイ活動の標的は
日米と韓国の引き離し

 北朝鮮は、日米韓の結束を警戒しており、日米と韓国とを引き離すことを画策している。

 

 日韓の間では、慰安婦問題、徴用工問題などの歴史問題がある。慰安婦の自称「支援団体」である、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、旧挺対協)」の元理事長で現国会議員の尹美香(ユンミヒャン)氏の元補佐官・チョ・ジョンソク氏が北朝鮮のスパイだとも報じられている。同元補佐官は慰安婦問題と在日朝鮮学校支援運動にかかわってきたが、北朝鮮はチョ氏を通じ、慰安婦問題の状況報告を受け、その解決を妨害してきたのであろう。日韓を離間させることは北朝鮮の政治的な思惑に呼応している。

 尹美香議員自身も北朝鮮との関係から公安当局の監視対象になっており、夫の金三石(キム・サムソク)氏とその妹は、日本で北朝鮮の工作員と接触した容疑で1993年にスパイとして逮捕され、国家保安法違反で有罪が確定した。

 
 

 元徴用工についても訴訟代理人は元慰安婦と同様、民主社会のための弁護士会の所属であり、慰安婦と共通している。元徴用工の支援団体が韓国政府の解決案にかたくなに反対しているのも、日韓の引き離しを画策した動きかもしれない。

 民主労総の政治活動の主たるスローガンは在韓米軍撤退と米韓同盟反対である。北朝鮮スパイは、民主労総やさまざまな市民団体が主催する集会などで、こうしたスローガンを声高に主張することで、米国との関係を妨害している。

 

 北朝鮮スパイの政治活動は、日米韓の緊密な協力関係構築の障害となっている。尹錫悦政権にとって、こうした北朝鮮の活動を取り締まることが、日米韓関係強化の出発点である。

 

 韓国で左派思考の人が社会の中枢にいるのは今後10年以内であろう。その間に左派政権が誕生すれば、北朝鮮スパイの活動が再び活発化する可能性がある。尹錫悦政権には革新系の欺瞞(ぎまん)を大いに明らかにしてほしいものである。

 

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)

 

 

関連記事