<産経コラム問題>韓国社会はどう見ているか?
- 辺真一「コリア・レポート」編集長
2014年12月10日(水)7時0分配信
[写真]セウォル号事件当日の朴槿惠大統領の動向について書いた前産経ソウル支局長のコラム問題。韓国では「起訴は当然」との見方が支配的だ(Lee Jae-Won/アフロ) [ 拡大 ]
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領に関するコラム問題で、10月に起訴された前産経ソウル支局長の初公判が先月27日ソウル中央地裁で開かれ、前代未聞の外国特派員による大統領への名誉棄損裁判がいよいよ始まりました。仮に有罪となれば、最高刑は懲役7年となります。
加藤支局長が起訴されたことに日本だけでなく、フランス最大の日刊紙、ル・モンドなど海外メディアも言論の自由の観点から韓国検察当局の対応を問題視しています。また、国際新聞編集者協会や国境なき記者団などからも批判の声が上がっています。
肝心の韓国でも「起訴はやりすぎだ」「大統領は大人げない」などと朴槿恵政権の対応を批判するメディアもあります。また韓国のネットをみると「国際的な恥さらしだ」「韓国が後進国家であることを露呈してしまった」と自国の対応を嘆くユーザーの声もあります。
しかし、異議を挟んでいるメディアはハンギョレ新聞など政権に批判的な一部メディアに限られ、ユーザーの声も含め大勢にはなっていません。むしろ「表現の自由が他人の名誉、権利を傷付けてもいいはずはない」と
「故意にうその情報を流すことは、言論の自由ではない」と起訴に関して「当然」「止むを得ない」との見方が支配的です。
例えば、韓国与党・セヌリ党の院内報道官は「虚偽報道行為が韓国で行われたのだから『治外法権』の対象になることはできない。我が国で法を犯したのなら、国内法が適用されることはあまりにも当然だ」との見解を出していますし、韓国の大手紙、中央日報は社説で「(検察は)外信の報道も治外法権の領域にはないことを明確にした」と書き、「止むを得ない」との論調を掲げていました。
政府与党と対立している最大野党の新政治民主連合は、大統領選挙で朴大統領に敗れた重鎮の文在寅国会議員が、起訴について「非常に大きな過ちだ。国際的に少し恥ずかしい」と批判したものの、朴政権を攻撃するための材料として産経の記事を問題にしているに過ぎません。韓国世論は総じて加藤局長に厳しいのが現実です。
日本では、同じ内容の「ゴシップ記事」を載せた韓国の大手紙、朝鮮日報を問題にせず、産経だけをやり玉に挙げたのは公平ではないとの声がありますが、これが韓国にはなかなか通じません。
韓国人は自国民が大統領を批判するのは問題ないが、外国人が批判するのは許さない風潮が従来からあります。韓国人であっても外国に行って、政権批判をするとなると、これまた話は別で、総じて眉を潜めます。朴槿恵大統領の父親・朴正煕大統領の時代に金大中氏をはじめ多くの要人や政府高官らが亡命先の米国から大統領、政権批判をしましたが、一般国民から多くの共感を得るには至りませんでした。
このように産経新聞特派員の起訴は言論の自由とは関係がないとの見方が一般的でしたが、裁判開始直後に韓国紙、世界日報が朴大統領の元側近による国政介入疑惑を報じたことに朴大統領が憤慨し、同紙の社長や記者ら6人を名誉棄損で告訴したことで韓国でも俄かに言論の自由の危機が叫ばれ始めました。「産経問題」も「世界日報問題」も「同根」で朴槿恵大統領の強権政治の「産物」との見方が急速に広がっております。
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