「稼げる国」の一方で失踪者も――外国人労働者受け入れで先行する韓国の現実
澤田晃宏
Yahoo Japan
8/27(火) 7:14 配信
日本で、外国人労働者の受け入れ拡大が4月から始まった。新たな在留資格「特定技能」が創設され、単純労働への就労者が増えることになる。お隣の国、韓国では先行して外国人労働者を積極的に受け入れてきた。2004年に導入された「雇用許可制」では、政府の直接関与で悪質なブローカーを排除し、外国人労働者の待遇改善で成果もあった。一方、雇用主によっては劣悪な労働条件も残り、失踪者も多くいるという。韓国の外国人労働者の現状を追った。(文・写真:澤田晃宏/Yahoo!ニュース 特集編集部)
妹は9200ドル払って日本に行った
ソウル中心部からバスに乗って約1時間。ソウルの南方約50キロに位置する華城(ファソン)市に入る。高層ビルが立ち並ぶソウル市内とは風景が一変し、コンビニやコーヒーショップさえ見当たらない。代わりに目に入るのが、食料品店やレストランの看板に書かれた東南アジアの国々の国旗だ。華城市には自動車や電子部品などの工場が林立し、多くの外国人が勤める。週末になると周辺で働く外国人労働者が市の中心部に集まってくるという。
そんな町の一角にあるベトナム料理専門のレストランで、ベトナム北中部クアンビン省出身のレ・コン・ルックさん(26)に出会った。ルックさんは2018年12月から華城市内の自動車部品工場で働いている。ルックさんが渡航を考えた時期は、技能実習生として日本に来るベトナム人も多かった。日本で働くことは考えなかったのか。ルックさんはこう話した。
「日本は手数料が高いし、給料も安い。妹は9200ドル(約100万円)の手数料を払って日本に行きましたが、ほとんど貯金はできない。日本にいる妹を韓国に呼びたい」
ルックさんが韓国で働くために払った手数料は約630ドル(約7万円)だという。なぜ、こんなに大きな差があるのか。移民政策に詳しい薛東勲(ソル・ドンフン)全北大学教授が解説する。
「韓国は1991年に日本の技能実習制度をモデルに『産業技術研修生制度』を導入し、単純労働分野の外国人の受け入れを始めました。しかし、研修とは名ばかりで、実態は『労働者』でした。人権侵害や悪質なブローカーによる中間搾取、不法滞在者の増加が問題となり、韓国は2004年に単純労働分野の外国人を労働者として受け入れる『雇用許可制』(EPS)を導入しました。透明性が確保されているとして、国際労働機関(ILO)からも高く評価されています」
雇用許可制は、韓国政府が協定を結ぶ16カ国から、一定の枠内で外国人の非熟練労働者を受け入れる仕組みだ。製造、建設、農畜産、漁業など5業種で、ここ最近は年間5万~6万人を受け入れている。
自国民の仕事が奪われないよう、まずは韓国人を対象に求人を出し、2週間経っても採用できない場合に限って、外国人が採用できる。最低賃金など韓国国民と同等の労働関係法が適用され、退職金や賞与もある。現在、この制度で約27万5千人の外国人が働いている。
採用はすべて国と国の機関同士で行われるため、企業は海外まで行く必要はない。政府が提示した名簿から労働者を選ぶ。あっせん業者やブローカーが入り込むことはできず、ピンハネもなくなり、労働者の負担は軽くなった。
雇用許可制なら約10年働ける
ルックさんが持参した給与明細を見せてくれた。働き始めて半年のルックさんの手取り給与は約15万円だった。最低賃金に近い金額だが、納得しているという。寮と食事が無償で提供されているからだ。
日本では寮などが準備されていても、住居費として給与から天引きされるケースが多い。住居費を引いた技能実習生の手取り賃金は多くが10万円前後だろう。それと比べると、ルックさんの待遇は良い。多額の借金をして日本に行った妹と違い、借金もない。
華城市のもち工場で働くベトナム・ホーチミン出身のマイ・ティ・ゴ・ヅルさん(29)は、韓国で通算9年6カ月働いている。当初、韓国の雇用許可制の在留期間は3年だったが、段階的に延長され、現在は最大4年10カ月だ。継続して5年以上住むことが韓国の国籍取得の条件の一つになっているため、一時的な出国が求められる。ただ、条件が合えば、再び4年10カ月、最大9年8カ月働くことができるのだ。
ヅルさんはそのほぼ全期間を働いたことになる。どれだけ稼いだかを聞いてみた。
日本で、外国人労働者の受け入れ拡大が4月から始まった。新たな在留資格「特定技能」が創設され、単純労働への就労者が増えることになる。お隣の国、韓国では先行して外国人労働者を積極的に受け入れてきた。2004年に導入された「雇用許可制」では、政府の直接関与で悪質なブローカーを排除し、外国人労働者の待遇改善で成果もあった。一方、雇用主によっては劣悪な労働条件も残り、失踪者も多くいるという。韓国の外国人労働者の現状を追った。(文・写真:澤田晃宏/Yahoo!ニュース 特集編集部)
妹は9200ドル払って日本に行った
ソウル中心部からバスに乗って約1時間。ソウルの南方約50キロに位置する華城(ファソン)市に入る。高層ビルが立ち並ぶソウル市内とは風景が一変し、コンビニやコーヒーショップさえ見当たらない。代わりに目に入るのが、食料品店やレストランの看板に書かれた東南アジアの国々の国旗だ。華城市には自動車や電子部品などの工場が林立し、多くの外国人が勤める。週末になると周辺で働く外国人労働者が市の中心部に集まってくるという。
そんな町の一角にあるベトナム料理専門のレストランで、ベトナム北中部クアンビン省出身のレ・コン・ルックさん(26)に出会った。ルックさんは2018年12月から華城市内の自動車部品工場で働いている。ルックさんが渡航を考えた時期は、技能実習生として日本に来るベトナム人も多かった。日本で働くことは考えなかったのか。ルックさんはこう話した。
「日本は手数料が高いし、給料も安い。妹は9200ドル(約100万円)の手数料を払って日本に行きましたが、ほとんど貯金はできない。日本にいる妹を韓国に呼びたい」
ルックさんが韓国で働くために払った手数料は約630ドル(約7万円)だという。なぜ、こんなに大きな差があるのか。移民政策に詳しい薛東勲(ソル・ドンフン)全北大学教授が解説する。
「韓国は1991年に日本の技能実習制度をモデルに『産業技術研修生制度』を導入し、単純労働分野の外国人の受け入れを始めました。しかし、研修とは名ばかりで、実態は『労働者』でした。人権侵害や悪質なブローカーによる中間搾取、不法滞在者の増加が問題となり、韓国は2004年に単純労働分野の外国人を労働者として受け入れる『雇用許可制』(EPS)を導入しました。透明性が確保されているとして、国際労働機関(ILO)からも高く評価されています」
雇用許可制は、韓国政府が協定を結ぶ16カ国から、一定の枠内で外国人の非熟練労働者を受け入れる仕組みだ。製造、建設、農畜産、漁業など5業種で、ここ最近は年間5万~6万人を受け入れている。
自国民の仕事が奪われないよう、まずは韓国人を対象に求人を出し、2週間経っても採用できない場合に限って、外国人が採用できる。最低賃金など韓国国民と同等の労働関係法が適用され、退職金や賞与もある。現在、この制度で約27万5千人の外国人が働いている。
採用はすべて国と国の機関同士で行われるため、企業は海外まで行く必要はない。政府が提示した名簿から労働者を選ぶ。あっせん業者やブローカーが入り込むことはできず、ピンハネもなくなり、労働者の負担は軽くなった。
雇用許可制なら約10年働ける
ルックさんが持参した給与明細を見せてくれた。働き始めて半年のルックさんの手取り給与は約15万円だった。最低賃金に近い金額だが、納得しているという。寮と食事が無償で提供されているからだ。
日本では寮などが準備されていても、住居費として給与から天引きされるケースが多い。住居費を引いた技能実習生の手取り賃金は多くが10万円前後だろう。それと比べると、ルックさんの待遇は良い。多額の借金をして日本に行った妹と違い、借金もない。
華城市のもち工場で働くベトナム・ホーチミン出身のマイ・ティ・ゴ・ヅルさん(29)は、韓国で通算9年6カ月働いている。当初、韓国の雇用許可制の在留期間は3年だったが、段階的に延長され、現在は最大4年10カ月だ。継続して5年以上住むことが韓国の国籍取得の条件の一つになっているため、一時的な出国が求められる。ただ、条件が合えば、再び4年10カ月、最大9年8カ月働くことができるのだ。
ヅルさんはそのほぼ全期間を働いたことになる。どれだけ稼いだかを聞いてみた。
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