なぜ韓国の科学者はノーベル賞に手が届かないのか 〜日本との教育の違いに思う〜【崔さんの眼】
ジャーナリスト・崔 碩栄
時事ドットコムニュース
また日本からノーベル賞受賞者が誕生した。
リチウムイオン電池の開発に貢献した旭化成名誉フェローの吉野彰氏ら3人がノーベル化学賞を受賞。吉野氏は、昨年受賞した京都大学特別教授の本庶佑氏に続いて27人目の日本人受賞者となった。
近年、ノーベル賞の花形ともいわれる科学分野での日本人の受賞が相次ぎ、もはや「年中行事」になってしまったようにすら思われる。
日本でも初受賞の時は国中が熱狂していただろうに、今や「今年は彼か」という少し落ち着いたお祝いモードではないかと思う。
◆脱力感と嫉妬
しかし、毎年同じ時期に日本人受賞のニュースを見ている韓国の気持ちは複雑だ。
どの国よりも日本をライバル、敵、競争者として強い対抗意識を燃やしてきた韓国だ。BTS(防弾少年団)に代表される韓国文化の流行、そして、スポーツの日韓戦での勝利などで覚えた「勝利の快感」は、ノーベル賞の季節になれば、あまりにも無力に消えてしまうからだ。
その脱力感、嫉妬の気持ちは、韓国マスコミ自ら「ノーベル賞(欲しい)病」(中央日報2019年10月4日)、「ノーベル賞コンプレックス」(韓国経済18年10月10日)と呼ぶほどだ。
韓国が科学分野で良い成績を得られない原因について、これまで、いろいろな分析が行われてきた。
韓国内でその原因としてよく挙げられるのは(1)基礎科学への無関心(2)民・官の支援不足と研究環境の不備(3)過程より結果だけを重視する雰囲気――などがある。
どれも、うなずける耳の痛い話だ。しかし、私の経験から考えるに、根本的な原因は「教育」にあるように思う。
◆「文字」だけの化学実験
私は1980年代、ソウルで中学、高校に通った。今、振り返ってみると、学生時代に受けた教育は、ノーベル賞とはあまりに縁遠い気がしてならない。あのような教育を受けたら仕方ない、と思うからだ。
まず、理科の授業。私は中学1年から高校を卒業するまで、一度も理科学機材に触れたことがない。教科書にはアルコールランプ、試験管、顕微鏡など、いろいろな機材が登場したが、全て紙面の上での「イメージトレーニング」にとどまっていた。
使い方も含めた化学実験の方法などは、「体験」ではなく、全て「文字」としてだけ頭の中に蓄積されたのだ。
そして「国語」の時間。私は小学生の時、作文が好きだった。たまには先生に褒められたり、校内で賞をもらったりもした。
先生の激励と、賞というご褒美が、私にとって高いモチベーションになったことは言うまでもない。
◆高校は入試準備だけ
しかし、3年間の高校時代、国語や現代文学の時間には「作文」するチャンスがなかった。授業中、ただの一度も自分の意見や考えを文章として表現する機会がなかったのだ。
学校では大学入試のための準備、問題集ばかりやっていた。一方的な「入力」だけがあり、自分の意見、発想を披露する「出力」の機会が全くなかったのだ。
私は、日本で同世代の日本人に会うたびに、中高校時代の話を聞いてみた。すると、地域、学校による多少の差はあっても、ほとんどの人は多かれ少なかれ、実験、作文の機会はあったという。
正直、うらやましかった。普通の日本人は、そこに大きな意味があると思わないかもしれないが、そこに韓国と日本の大きな差があると思う。
学生時代に好奇心、興味、モチベーションを感じる経験の有無は、計り知れないほど大きいからだ。
◆今後に淡い期待
80年代の韓国では、残念ながら、大学入試という「目標」だけが優先され、机の前に座り、教科書と問題集だけに全てのエネルギーを費やした。
とはいえ、私と同じような教育を受けたのは、私と同じ世代か、もう一つ下の世代(今、いわゆる働き盛りといわれる世代だ)ぐらいまでだろう。
80年代のソウルの学校は、1クラス60人という過密な環境だったが、今は30人前後。そして、教育内容も改善され、音楽、芸術、体育も充実し、学生の個性を育てる教育を行っていると聞く。
彼らが大人になった時には、創造的な発想を持ち、個性的な研究を成し遂げることができるかもしれない、と淡い期待を抱いている。
(時事通信社「金融財政ビジネス」より)
【筆者紹介】
崔 碩栄(チェ・ソギョン) 1972年生まれ、韓国ソウル出身。高校時代から日本語を勉強し、大学で日本学を専攻。1999年来日し、国立大学の大学院で教育学修士号を取得。大学院修了後は劇団四季、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなど日本の企業に勤務。その後、フリーライターとして執筆活動を続ける。著書に「韓国人が書いた 韓国が『反日国家』である本当の理由」「韓国人が書いた 韓国で行われている『反日教育』の実態」(ともに彩図社)、「『反日モンスター』はこうして作られた」(講談社+α新書)、「韓国『反日フェイク』の病理学」(小学館新書)など。
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