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赤字ローカル線の厳しすぎる実態から見えた、人口激減ニッポンの「不都合な真実」

이강기 2022. 8. 25. 11:16

赤字ローカル線の厳しすぎる実態から見えた、人口激減ニッポンの「不都合な真実」

 

人口流出などより大きな問題がある

 

                                                                                          ( 他山之石삼아 읽기)

 

 

少子高齢化と人口減少が加速し、衰退する日本社会はどこに向かうのか? 『未来の年表』シリーズの著者・河合雅司氏が、人口減少ニッポンでビジネスの世界に起こることをデータから描き出す――。

 

 

                                                                              〔PHOTO〕iStock
 
 
 

赤字ローカル線の「衝撃実態」

国土交通省の有識者会議がまとめた提言をきっかけとして、JRの赤字ローカル線の廃止に向けた流れが急速に強まりそうだ。

提言の内容は、輸送密度(1キロメートルあたりの1日平均利用者数)が1000人未満かつ、ピーク時の乗客数が1時間あたり500人未満である場合などを目安に、沿線自治体と鉄道会社に国も加えた協議会を設置して3年以内に結論を出すよう求めるものだ。

 

この提言に合わせてJR西日本とJR東日本が相次いで区間ごとの赤字額を初公表したが、JR西日本は17路線30区間で248億円(2017~19年度の平均)、JR東日本は35路線66区間で693億円(2019年度)であった。

 

JR東日本の場合、赤字が最大だったのは羽越本線の村上駅-鶴岡駅間の49億900万円。100円の運賃収入を得るためにいくらの費用を要するかを示す「営業係数」では、久留里線久留里駅-上総亀山駅間では1万5546円もかかっていることが明らかになった。

 

両社はこれまで大都市圏や新幹線の利益を「内部補助」として回すことで、何とかローカル線を存続させてきたが、コロナ禍の影響で「採算度外視」の大盤振る舞いは続けられなくなったということだ。

 

大都市圏の運賃収入のみならず「ドル箱」だった新幹線の収益までが落ち込んだためである。しかも、今後は都市圏でも人口が減っていくため、コロナ禍が終息してもこれらの収入は長期的な縮小傾向が予想される。「内部補助」という手法そのものが破綻しそうなのである。

 

 

問われる「生活インフラ全体の持続可能性」

これに対して、地方側は警戒感を強めている。廃線が引き金となって沿線人口の流出が加速するのではないかとの懸念があるためだ。

 

高校生の通学や高齢者の通院や買い物の足となっていたり、観光資源となっていたりして、知事や沿線自治体の首長などからは存続を求める声が上がっている。

 

このため、提言も路線バスへの転換を促すだけでなく、地方自治体などが鉄道事業者に代わって施設や車両を保有する「上下分離方式」なども選択肢として掲げた。

 

国鉄分割民営化以来の大きな節目を迎えているわけだが、国鉄民営化の当時は人口が増えていた時代だ。大都市圏までが人口減少に悩む現在とでは日本社会を取り巻く環境はあまりに違い過ぎる。

 

こうした点を考慮せず、赤字ローカル線を単なる鉄道事業者の経営問題に矮小化して考えたのではことの本質を見誤る。問われているのは、地方における公共交通機関の在り方ではなく、需要が急速に縮小していく人口激減地域における民間サービスを含めた生活インフラ全体の持続可能性なのである。

 

ローカル線が赤字を積み重ねてきた大きな要因は、マイカー所有者が増えて利用者が減ったことだ。利用者減に伴って運行本数が減り、運賃が値上げされていく。そうして使い勝手が悪くなるとさら利用者が減って行くという悪循環である。

 

高齢化と人口減少による大打撃

だが、将来を展望すると、今後はむしろ高齢化と人口減少による影響のほうが大きくなる。

 

高齢化が進めば、自動車運転免許を自主返納する人も増える。こうした点をとらえて「これからはマイカーから鉄道利用に切り替える人が増える」という見立てもあるが、ローカル線の沿線エリアにはすでに高齢者までもが減り始めている地域が少なくなく、こうした利用者も先細りとなる。ましてや住民全部が駅を囲むように住んでいるわけでない。加齢に伴い駅まで行くことが難しくなる人の増加も予想される。

 

税金を投入して「上下分離方式」などの対策を講じればローカル線の収支は一時的に改善するかもしれないが、その多くは時間稼ぎに終わるだろう。

 

それは路線バスへの転換についても同じことが言える。地方においてバス路線も廃止の動きも広がっている。

 

国土交通省の「交通政策白書」によれば、2020年度は乗合バス事業者の99.6%が赤字であった。路線バスの廃止キロ数は2010年度から2020年度までの累計で1万3845キロに及んでいる。

 

鉄道であるか、路線バスであるかにかかわらず、観光客を含めたその地域の商圏人口(周辺人口)が、運行事業者が存続し得る必要数に届かなくなければ経営は続けられなくなる。

 

 

公共サービスに「上乗せ料金」が発生する日

政府の地方創生の議論においては「地方」とひとくくりにしがちだが、過疎集落ほど人口の減るスピードは速い。

 

総務省の「過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査最終報告」(2019年度)によれば、2015年の前回調査と比べて、集落数は0.6%(349集落)減った。人口にすると6.9%(72万5590人)減だ。このうち139の集落は無人化した。住民の過半数が65歳以上という集落は22.1%から32.2%へと増加しており、2744集落はいずれ消滅すると見られている。

 

先に「人口激減地域における生活インフラ全体の持続可能性」が問題の本質であると述べたが、赤字ローカル線というのは明日の水道や電気の姿だ。

 

こうした公共サービスは人口が減ったからと言ってただちに撤退したり、値上がりしたりするわけではないが、利用者が減れば経営はダメージを受ける。

 

しかも、利用者が少なくなっても水道管や送電線などの点検や修繕は続けなければならず、商圏人口の縮小に合わせて事業規模を縮めるわけにはいかない。コスト削減に制約があるのに利用者が減り続ければ、一軒あたりに要するコストは膨らんでいく。

 

民間事業者はもっとシビアだ。経営維持に必要な利用者がいなくなれば撤退が始まる。日用品を扱うスーパーマーケットや商店はもとより、診療所や介護サービス事業所などが無くなれば不便を通り越して生活を続けることが難しくなる。すでに、ガソリンを給油するために遠方のガソリンスタンドまで行かなければならない地域は広がっている。

 

民間事業者が立地できる商圏規模を失っても事業を継続しようとするならば、最終的には価格の大幅引き上げをするしかなくなるだろう。

 

もちろん、多角経営で人口密度にかかわらず全国均一料金で提供できる経営体力を持つ事業者はあるだろうし、JRのように「内部補助」といった手法をとることのできる事業者もあるだろうが、すべてがこうした奥の手を使えるわけではない。

 

「内部補助」だって限度はある。人口集積地の利用者にしてみれば本来負担すべき額よりも多く支払っているわけで、許容度を超す不公平を強いれば不満が出かねない。

 

そうなれば、当然ながら「受益者負担」を求める声が強くなる。現在でも海上輸送のコストがかかる離島などでは日用品などが割高となっているが、これからは「人口密度の低い地区も、離島と同じく上乗せ料金を支払うべき」という声が強まらないとも限らない。そうした声は、いつ公共サービスに向くか分からない。

 

 

人口減少社会の「不都合な真実」

人口減少社会では、地域偏在が大きくなりやすい。それは地域ごとの費用対効果がこれまで以上にシビアに問われるようになるということだ。

 

需要が急速に縮小していく人口激減地域での暮らしは、住宅費こそ安価で済むかもしれないが、それ以外の暮らしに関わるコストは総じて高くなることを覚悟する必要がある。今回浮上した赤字ローカル線の存廃問題は、人口減少社会における「不都合な真実」の一面を教えている。

 

人口減少が深刻化する地方の持続可能性を少しでも高めるためには、地域内で人口集積を図ることが不可欠となる。多くの民間サービスが存続し得る10万人程度の商圏を可能な限り維持し、その中で公共交通機関の在り方をはじめさまざまな生活サービスをどう維持するかを考えることである。

 

しかしながら、政府や地方自治体の政策はこれに逆行している。その最たるものが、東京圏からの地方移住の推進だ。

 

どこに住むかは個々の判断であり移住政策そのものを否定するつもりはないが、問題はやみくもに移住者を拡散している点だ。自治体の中には過疎地域の空き家の家賃を大胆に補助するところも多く、「地域内での人口集約」とは逆行する取り組みが目立つ。

 

高齢者ばかりの集落に移住した人が集落の中で飛びぬけて若い住民となることは珍しくないが、そうした集落では移住してきた人が最後まで残ることになりかねない。これでは、将来に向けて極端に人口が少ない集落が点在する状況をあえて作り出しているようなものだ。こうした自治体は年々行政サービスや公共サービスの維持コストが膨らみ、地方財政に重くのしかかることだろう。政府や自治体が誘導する地方移住は「地域内の人口集約」政策とセットで推し進めるべきであり、移住先がどこでもいいわけではない。人口減少下で「多極分散社会」を追い求めるのは、極めて危ういことなのである。

 

赤字ローカル線の存廃問題が問いかける人口減少社会のリアルから目を背け続けるならば、沿線地域だけでなく日本全体に勝者はいなくなる。