日本, 韓.日 關係

「敵基地攻撃能力」「防衛費増額」に私が反対する三つの理由

이강기 2022. 12. 26. 18:08

 

「敵基地攻撃能力」「防衛費増額」に私が反対する三つの理由

 

日本を「世界第3位の軍事大国」にしてはならない

 

 

田中駿介 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

朝日新聞, 2022年12月26日

 
 
 

 いわゆる敵基地攻撃能力の保有や、防衛費の大幅増を明記改定改定安保3文書が閣議決定された。岸田首相は「防衛費倍増」を掲げ、そのための増税を行う方針だという。岸田首相自身、これは「戦後民主主義の大転換」だと称している。そもそも「敵基地攻撃能力」は憲法違反にあたり、それほど重大な決定なのであれば、なぜ国会の議論を尽くさぬまま閣議決定のみで決断を下すのか。民主主義を破壊する暴挙に他ならない。

 

 そもそも交戦権の否定を掲げる平和憲法を保有する日本が、他国を「敵国」とみなすこと自体、異様である。ただし危険なイメージの払拭を志してか、政府は「反撃能力」との言い換えを図ろうとしている。これに抗するため、本稿ではあえて「敵基地攻撃能力」という呼称を用いる。

 

                           訓練で地対艦ミサイルの発射装置を展開する陸自隊員=2022年2月、沖縄県宮古島市

 

 

【理由その1】 敵基地攻撃は憲法違反そのものだ

 政府はこれまで、「敵基地攻撃能力」の保持に関して「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、衆院内閣委、伊能繁次郎防衛庁長官=当時)との見解を示してきた。多くの反対の声を踏みにじり、集団的自衛権の行使を容認する「安保関連法」の採決を強行した安倍元首相ですら、「敵基地攻撃能力」は、憲法違反であるという答弁を行っている。

 

 外国に出かけていって空爆を行う、あるいは撃破するために地上軍を送って殲滅戦を行うことは、必要最小限度を超えるのは明確であり、一般に禁止されている海外派兵に当たる(2015年7月3日、衆院安保法制特別委)。

 

 したがって「敵基地攻撃能力」は、これまでの自民党政権下において明確に違憲であると位置づけられてきた。いかなる世界情勢の変化があったとしても、「相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土およびその周辺において防衛を行う」(1972年10月31日、衆院本会議、田中角栄首相=当時)とされた専守防衛の精神を、閣議決定だけでかなぐり捨てて解釈改憲を行うことは、憲法を踏みにじる暴挙であると言わざるをえない。

 

 
 

【理由その2】民主主義の手続きを踏んでいない

 

    国産初の長射程巡航ミサイルに改良される陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」=陸上自衛隊のホームページから

 

 

 そもそも、いったん「敵基地攻撃能力」や、防衛費増額の是非を置いておいたとしても、これは手続き論としてそもそも問題含みである。今年7月に投開票が行われた参院選において、「敵基地攻撃能力」や「防衛増税」は、公約に掲げられていなかった。

 

 加えて政府は、現在の国内総生産(GDP)1%水準の防衛費を、5年後には2%にまで増額する方針を打ち立てた。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の資料によると、昨年時点での防衛予算が最も多い国は米国(8010億ドル)で、中国(2930億ドル)、インド(766億ドル)などが続く。現在、世界第9位の日本(541億ドル)が5年後に防衛予算を2倍に増やすとなると1000億ドルを超える(ハンギョレ新聞2022年12月17日「軍事大国に進む日本……約70年ぶりに『敵基地攻撃能力』備える」)。日本は、米国、中国に続く世界第3位の「軍事大国」に君臨することになる。

 

 こうした重大な決定を、国会内においても、また世論においてもほとんど議論を経ずに閣議決定で決定してしまうことは、あまりにも民主主義を軽視していると言わざるを得ない。

 

 

【理由その3】「日米合同で戦える国」でよいのか

 

    岸田首相(左)は米国のバイデン大統領と日米首脳会談に臨んだ=2022年11月13日、プノンペン、内閣広報室提供
 
 

 「抑止力」理論のもと、無限の軍拡競争に突入していけば、平和構築はかえって遠のいてしまうことは明白である。米国・バイデン政権は軍事費を史上最大に引き上げるという方針である。ロイター通信の報道によると、軍事費は過去最高の8580億ドルで、バイデン大統領の要求額も上回った。

 

 軍拡に踏み切るアメリカに日本も追従すれば、それを脅威に感じる他国もまた軍拡に踏み切る恐れがある。このような軍事力の無限増殖にくさびを打たない限り、どこまでも軍拡は進みうるだろう。

 

 そもそも岸田首相は、この防衛費増額の「約束」も、市民に対してより先にバイデン大統領に取りつけているようである。なぜ、「日本には憲法9条があり、軍拡には応じられない」という従来の見解を、外交ルートに通じて粘り強く主張しないのだろうか。

 

 陸海空の3自衛隊の部隊運用を一元的に担う常設の「統合司令部」と作戦を指揮する「統合司令官」を新設し、米軍との一体性を強化する方針も報道されている(日本経済新聞2022年10月29日「自衛隊に統合司令部、米軍と一体運用強化 台湾有事念頭」)。このままでは、日米が合同で「戦える国」として、自衛隊は米軍のいわば「下請け」となるのではないだろうか。これは自衛隊員の安全と生命をも脅かす方針であり、また集団的自衛権の行使と同様、日本が戦争に巻き込まれる恐れが増すだろう。

 

首相の「協力要請」をきっぱり拒否すべきだ

 さて、「敵基地攻撃能力」と「軍拡増税」の方針を示したことについて改めて考えてみると、自民党政治との癒着が指摘されている旧統一協会=勝共連合の主張とされる内容と妙に符号する部分がみられることも指摘しておかねばならない。「共産主義国からのミサイル防衛のあり方を根本から検討し直さなければならない時を迎えている」「抑止をもってこそ外交が適切になされる」……。これらはすべて、国際勝共連合・渡辺芳雄常任顧問の街頭演説での発言である。

 

 もちろん、今回の「軍拡」政策の方針が直ちに旧統一協会の主張を反映させたものだと指摘することは早計だろう。とはいえ、いま岸田政権が行おうとしているのは、「生活水準を下げてでも軍事力を増強する必要だ」といった主張そのものである。

 

 実際、岸田首相は12月16日の記者会見において、財源の負担に関して、財源が必要であるとして以下のような「協力」の要請を行っている。

 

                                               記者会見する岸田首相=2022年12月16日、首相官邸、代表撮影
 

 「防衛力を未来に向かって維持・強化するための裏付けとなる財源は不可欠です。これは、未来の世代に対する私たち世代の責任でもあると考えています。(略)国民の皆様に、私たちの今の平和で豊かな暮らしを守るために、また、私たちの世代が未来の世代に責任を果たすために御協力いただきたいと考えています(「岸田内閣総理大臣記者会見」=首相官邸ホームページ)」

 

 こんな「協力要請」は、きっぱりと拒否していく必要がある。防衛費倍増のための増税と、なし崩しの解釈改憲は、将来世代にツケをまわすだけだ。ウクライナ戦争の趨勢に鑑みても、軍事動員は若者を中心に行われていくのは明白である。勢力均衡論に基づく軍拡競争を止めることこそが、将来の世代に対する我々の責任だ。閣議決定だけで、解釈改憲を伴う「戦争できる国」に転換させていいのか。

 

 岸田首相は、即刻「防衛費倍増」と「敵基地攻撃能力」を撤回しなければならない。さもなくば、即刻、国民に信を問うのが筋であろう。

筆者

田中駿介(たなかしゅんすけ) 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

1997年、北海道旭川市生まれ。かつて「土人部落」と呼ばれた地で中学時代を過ごし、社会問題に目覚める。高校時代、政治について考える勉強合宿を企画。専攻は政治学。慶大「小泉信三賞」、中央公論論文賞・優秀賞を受賞。twitter: @tanakashunsuk

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです