週刊現代, 2022.11.16
在韓日本大使館前の「陣取り合戦」
現在、韓国の日本大使館前では「陣取り合戦」が激しく繰り広げられている。
日本大使館前の慰安婦像といえば、2011年12月14日に「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」によって、韓国ソウル市内の在韓国日本大使館前の路上に元慰安婦を象徴するいわゆる「慰安婦像」が不法に設置されたのが始まりだ。
それ以降、続く水曜集会は時間が経つにつれて「聖域」となり、誰も意を唱えることのできない日韓問題の“核”のひとつとなってきた。
その後、水曜会主催の市民団体、挺対協は正義連(日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)と名を変え現在も水曜集会は続けられている。
そのため、これまで聖域とされていた慰安婦像前で、今年9月11日午後10時頃から約4時間に及ぶ保守派と正義連の諍いが勃発したことは驚きをもって受け止められる事態であった。
「在日3世」の一言
2020年6月24日以降の日本大使館前の慰安婦像周りの陣取りは保守派が抑えており、現在、慰安婦像を囲んでいる学生連(正義連の下部組織)は“不法”に陣取っている形になる。
ただここに法の抜け穴があり学生連は当初、数名で不法的に陣取っていたことを指摘されると一人で居座るデモを行った。
一時期、日本でも話題になった「ユニクロ前の一人不買デモ」も同じパターンである。
現在、慰安婦像の真横で一人用の小屋の様な、雨、風が凌げる物を作り、学生連のメンバーが入れ替わりデモを行っていることに痺れを切らした保守派市民団体が起こした行動だったわけだ。
今でこそ保守派団体が日本大使館前での慰安婦像を取り囲める様になったが、そのきっかけは保守派ネットニュース記者に疑問を投げかけた在日3世の一言だった。
イ・ウヨンさんの「すごい活動」
2019年7月10日、韓国でショッキングな書籍が発刊された。それが日本でも有名な「反日種族主義」である。
この本はイ・スンマン研究所所長の李栄薫(イ・ヨンフン)氏を初めとする金洛年(キム・ナクニョン)氏、金容三(キム・ヨンサン)氏、朱益鐘(チュ・イクチョン)氏、鄭安基(チョン・アンギ)氏、李宇衍(イ・ウヨン)氏の6名で著述した書籍である。
日本の朝鮮統治時代に対する韓国人の通念を真っ向から否定している、韓国社会では到底認めようのない内容となっていた。
私は一人デモを行う李宇衍氏とは以前から面識があり、一人デモを行なってると聞き何度かその場に訪ねて行ったのが2019年11月末から12月初頭だったと覚えている。
左派団体の「正体」
最初は本当に一人デモを行っていたが、日が経つにつれ賛同者も増え15人、20人規模の集会へとなって行ったのだ。
最初、一人で立ち上がった時には大使館前の慰安婦像を守る左派団体に多くの嫌がらせを受けていたが、挫けず今も立ち続ける李宇衍氏は本当に立派なものである。
その嫌がらせがピークだった頃は、左派団体の一方的な言い争いに警察が間に入って制御する場面や、左派団体が李宇衍氏めがけて生卵を投げつける行為もあり、普段、「言論の自由、女性権利、人権」と叫んでいる左派団体の正体が垣間見え始める瞬間だった。
そんな左派団体と保守団体の過激化するいざこざが出始めた頃から韓国メディアの注目も集めて行った。
それも「反日種族主義」を書いた著者の一人がデモを行っているのだからこれ以上のネタはない。
私の親しい在日3世の後輩がその水曜集会で一人の若い記者に出会ったと話す。
「ある疑問」から始まった
若い記者も「在日3世」というところに興味を持ち、何度か話す機会があった。
そんな中で後輩は記者に対して「以前から感じていましたがなぜ、慰安婦像の前って正義連しかデモを行い得ないのか考えたことはありますか?」と問いかけた。
それまでそんな疑問も持たなかった若い記者もその疑問に興味を示して、調査し始めたのだ。
その後、記者は警察、行政、日本大使館を徹底的に調べ、なぜ正義連しか慰安婦周りでデモが出来ないかを突き止めたのだ。
記者がまず大使館前のデモを管轄する鐘路(チョンロ)警察官に現地で聞いてみたところ、警察官から「正義連の集会は日本大使館が承認したもの」という驚きの返事が返ってきた。
彼はすぐ日本大使館にこの件の質問文を送ったが返事は無かったと話す.
重い口を開いた「警察」
この時も我々との話で「日本大使館が承認するわけがない」という結論に至ったが、次に彼は警察官がなぜそのような話をしたかを確認するために鐘路警察署に出向き事情を聞く。
この事情を聞くまで彼は日本でいう警察庁、行政機関、管轄警察、その隣の警察署まで、正義連のデモ申請の情報開示など、あらゆる手を尽くし調べて行ったのだが、ある警察官がやっと重い口を開いてくれたと話す。
その話では警察も数年に一度、人事があり変わる度に先輩から引き継ぐ話の一つがデモの対応で、その中の一つが「日本大使館も承認している」という都市伝説の様な話が受け継がれていたことが発覚したというのだ。
幸いにも警察と正義連の癒着は無かったが、韓国で歪んだ聖域は警察の中でも歪められそれが約30年も引き継がれている事に驚くばかりだったのだ。
この記事は特ダネとして扱われ、小さな保守派ネットニュースから大手メディアに広がり、その記事で勇気を貰った保守団体が正義連より早く慰安婦像の場所取り申請をし、現在も本来は保守派市民団体がデモをすべき場所になっている。
最近の正義連の水曜集会は元の慰安婦像の場所からどんどん引き離され、今は慰安婦像から80メーターほど離れている場所で水曜集会を行なっているが、慰安婦像では学生連の一人デモは続いている。
もともとこの学生連は安倍元首相の土下座像が話題になった時、「安倍首相に謝罪を求める」として集まった者たちで構成されていると言われるが、そこに肝心の学生が見受けられず「そんなものが本当に学生連なのか」と指摘もされている。
それに保守派団体がこれほどの勢力になる前には、水曜会の慰安婦像の集会が終わるとこの学生連という若者たちがそこから徒歩5分の場所にあるアメリカ大使館前での反米運動をジャンパーだけ着替えてしていることは正義連の水曜会ウォッチャーの中では有名な話だ。
やっと韓国での慰安婦に関し自称慰安婦被害者のイ・ヨンスク氏の正義連使途不明金の暴露によって聖域と化した問題が崩れた。
良くも悪くもイ・ヨンスク氏の暴露が無ければ現在の保守派団体の活動も支持されなかったかもしれないが、現在は多くの韓国民が正義連という団体に多くの疑問を持ち、今までの様な正義連が叫んだ「反日正義」は通用しなくなっている。
さらに連載記事『韓国が「日本より暮らしやすい国」だって…? 「在日3世」の私が久しぶりの“日本帰国”でわかった「おかしな韓国」のヤバい現実』では、私が韓国と日本を比べて感じた“違和感”についてレポートしよう。
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