日本, 韓.日 關係

韓国の情緒の研究

이강기 2015. 9. 11. 11:51
韓国の情緒の研究

 

鈴置 高史 日本經濟新聞 編集委員

 

(2007/6/4 )
 

軍事境界線を越えて韓国のチェジン駅に着き、歓迎を受ける北朝鮮からの直通列車(5月17日、ロイター・共同)
 「韓国では外交も気分次第なのか」。こんな質問を受けた。前回の「韓国の反米気分」(2007年5月9日付参照)を読んだ人からだ。それに対しては「納得しにくいだろうが、事実そうなのだ」と答えるしかない。
 

対米FTAでは焼身、「EU」は無関心

 ここ一月ほどでも、「情緒が韓国の外交を左右する」具体的事例をいくつか観測できた。まずは対米。4月初めに米国とのFTA交渉に合意した後、韓国政府は直ちにEUとのFTA交渉に入った。興味深いことに「EU」に関しては反対運動は一切起きていない。対米交渉への反対が、実は感情的な反米運動の一環に過ぎなかったことがこれで分かる。

 米国との交渉では当初から激しい反対デモが繰り広げられ、火炎瓶が飛び交い、抗議の焼身自殺者まで出た。合意後の今も「批准しない」と宣言し、反対の姿勢を貫く大物議員が多数いる。

 一方、米国とのFTA以上に韓国経済には影響が大きいとされるのに、EUの場合は反対の声を上げる議員も農民団体も自称「市民団体」も、あるいは映画監督ら文化人もいない。「FTA反対」で盛り上がった多くの韓国人にとって反対運動は、経済的利益を守る運動というよりも「米国への反感を公開の席で叫べるチャンス」だったのだろう。

 反対運動の背後で、北朝鮮の影響下にある親北団体が糸を引いていた、という人もいる。それが正しいなら、北朝鮮は韓国人の情緒的な行動原理を利用しつくした、といえる。

 結果として米韓はかろうじてFTAの合意にこぎつけた。その意味では「情緒的行動」はとりあえず「外交の結果」に反映されずに済んだ。しかし、これだけ「米国とのFTAは気分が悪い」というムードが国民に広がった以上、国会ですんなりと批准されるかは分からない。反対票を投じた方が次の選挙に有利になると考える国会議員も多い。仮に批准できたとしても、非生産的な反米感情が、批准を契機により深まるだろう。

 

盛り上がった南北直通列車

 もうひとつは対北朝鮮。5月17日に韓国と北朝鮮の間で、朝鮮戦争以後初めて軍事境界線を超える直通列車が運行された。もっとも、ソウルと平壌が結ばれたわけではなく、東西の2路線の短い区間で、一回に限って試験的に運行された。これで何かが変わるわけではない。「南北関係改善」イメージを作りたい韓国政府と、援助が欲しい北朝鮮の政権が政治ショーを合作したに過ぎない。

 普通の国民の多くもこれを見抜いている。だが、韓国のメディアは保守系新聞でさえ、社説や解説記事では問題点も指摘しながらも、本記や雑感記事では「統一へ一歩」、「アジア大陸横断鉄道へ」といった事実に立脚しない見出しをつけ、大いに盛り上げた。

 冷戦期に韓国政府は軍事境界線沿いの最終駅に「鉄馬は走りたい」との看板を掲げた。南北直通列車の中断を「北の侵略」や「共産国家の無法ぶり」の象徴として世界に喧伝するのが目的だった。一方、この宣伝により国民にとって「鉄路分断」は「民族の悲劇」の象徴に昇華した。このためメディアの間には「一回でも、ほんの10キロでも直通列車が運行されれば、悲劇の解消や統一への前進と書かざるを得ない」空気が生まれた。

 国民が「直通列車」の胡散臭さを感じていても、いったん「直通列車実現こそが南北関係の改善」という空気がメディアによって固定されれば、韓国はますます北朝鮮の術中にはまることになるだろう。北朝鮮は今後、「直通列車」を新たな交渉カードとして使えるようになったからだ。

 韓国の次期政権をコントロールしたい時、北はいったん直通列車の運行に同意しておき、直前になって「南の大統領が我が方に敵対的だから運行許可は取り消す」といえばいい。それに呼応し、韓国内には「盧武鉉政権下では実現できたのに」という親北派の批判があふれるだろう。

「気分が悪い」

 どの国でも、民主国家である限り、外交が国民感情に左右されるのは普通だ。だが、これほどまでに「情緒外交」を展開する国はやはり特異だ。

 外国を知りそれらと比較できる韓国の知識人が、まず教えてくれる「特異である理由」は「外交に限らず、そもそも韓国では論理よりも情緒で物事が決まるから」。確かに、韓国人同士が議論するのを横で聞いていても、しばしば「気分」が優先されることに気がつく。

 韓国語で多用される言い方のひとつに、日本語に直訳すれば「気分が悪い」という言い方がある。日本語でも同じ言い方はあるが、韓国では議論の過程でこの言葉が主張の理由として使われ、かつ決定打となることが多い。

 それを外国にも適用し、韓国の政治家や外交官もごく当たり前のように国際交渉の場で「わが国民の情緒が納得しない」という「論理」を展開する。何人かの韓国人から「わが国には憲法よりも上位に、国民の情緒に合わないものは排除できるという『国民情緒法』なるものがある」と嘆くのを聞いた。

 ちなみに、この冗談を日本人に受け売りしたら「韓国に、そんな法体系が存在するとは知らなかった。勉強不足だった」と本気にされてしまったことがある。それほどに、韓国人は情緒的に見られているのだろう。

 

高まる自信

 「韓国は昔以上に、ますます感情的外交に走るように見える。なぜか」。こんな質問も読者から寄せられた。この問いに対して韓国人に聞けば、彼らは「独裁政治が終わり、国民が多様な声をあげられるようになったから」という理屈で説明することが多い。

 が、それだけでは、現在の情緒外交への急傾斜をすべて説明することはできない。独裁政治が終わったのは1987年、つまり20年前だ。が、民主化後の初めの15年間は「対日」を除けば、国益を論理的に考えた上での冷静な外交政策がおおむね実行されていた。だから、「民主化」だけが情緒的外交や、外交の迷走の要因と決め付けるのは無理がある。

 これに対しては「盧武鉉大統領のポピュリズムのせい」と現政権の能力のなさを追加の理由としてあげる韓国人も多い。確かに、現大統領の個性による問題も大きいだろう。が、「すべて盧武鉉大統領が悪い」と言い切り、国民の側の事情を無視するのはおかしい。

 見落とされがちだが、韓国人はここ4、5年の間、急速に自信を深めている。その自信が国民の対外的な声を大きくしていることに注目すべきだろう。自信向上は偶然のことながら、2003年の盧武鉉政権スタート(大統領選挙は2002年末)とほぼ同時に始まっている。

 その前の金大中政権の5年間、韓国1997年に発生した経済危機の処理に追われた。2002年ごろからようやく改革効果が出始め、韓国経済は一気に浮揚、規模で世界10位をうかがうほどになった。一方、長らくベンチマークだった日本の停滞に関しては、そのころから韓国でも認識された。「日本など大したことはない」と主張する本が相次いで出版されたのも2002年ごろだ。

 経済以外でも2002年のワールドカップでは世界4位となり、同じころから韓国の映画やテレビドラマがアジアで一気に人気になるなど、国力の伸張を実感させる出来事が相次いだ。外交面では、2006年に潘基文外交通商部長官が国連事務総長に決まった。軍事面では「世界最強のイージス艦」(韓国政府発表による)が2008年に就役する。

 大国に挟まれ、建国以来、常に遠慮しながら生きてきた韓国人。「ここまで大きくなったのだから、今まで従ってきた米国に対しても言いたいことを言ってもいいはずだ」。韓国人と話すと、心の底にこんな思いが浮かんでいるのが実によく見て取れる。

 

「出たとこ勝負さ」

 ただ、「韓国人が自信を深めているから、外交が情緒的になる」という説明には、なおも納得できない向きもあるだろう。「国際的な発言力を高めたから、これを背景に反米や新たな反日に動く」という論理にはやや飛躍があるからだ。いくら国力が伸張したからと言って、アジアの地政学的構造が大きく変わろうとする今、感情に身を委ねての行動は国を誤る、とまともな人なら考えるものだ。韓国の現状を説明するには、さらに何らかの補助線が必要だ。

 それは、韓国が外交的な位置取りを決めかねていることにこそ起因するのではないか。「韓国のあり方」に関し確固とした国民的合意が作られていないため、その時その時の気分で外交政策が揺れる――。この見方こそが、これまで並べてきた様々の理屈の隙間を埋める、一番うまい説明であるように思われる。

 現政権は今年、同盟廃棄につながりかねない「米韓合同司令部の解体」に乗り出すことで米国と合意した。この際、賛成派も反対派も、米韓同盟のあるべき姿や将来の国防の基本方針を国民の前に示さなかった。賛成派は韓国人の米国からの独立希求を掻き立てることに終始し「これで自主国防が実現する」とたたえるだけだった。一方、反対派は「北が核を持ちかけている時だけに早まるべきではない」と、短期的かつ狭い領域での「問題点」だけを指摘した。

 長期的戦略に関する国民的合意がない以上、外交政策は雰囲気や当面の課題に沿って決められることになる。これは北朝鮮や日本、あるいは中国に対する政策でも同様だ。

 韓国の揺れは日本の外交と比べると理解しやすい。台頭する中国と、「世界一極支配」に息切れし始めたかに見える米国。米中両国は潜在的ではあるが対立の度を深める。その間で、日本はこの10年の間に「中国との対立は極力避けるが、基本的には米国側に立つ」という国民的合意を、静かにじっくりと固めてきた。

 一方、韓国は米中の間でどういう外交的スタンスをとるか決めかねている。というか、むしろ悩みを深めている。

 韓国の生存を保障してきた米国との軍事同盟。しかし、南北間の戦力バランスが大きく南に傾いたため、対北通常兵力に関する限りは不要と考えられ始めた。むしろ、この同盟によって米国が朝鮮半島で新たに起こす戦争に巻き込まれるかもしれない、との思いが韓国では深まっている。

 さらにこの同盟によって、台湾海峡で起きるかもしれない米中間の争いに巻き込まれかねない、との懸念も韓国は深める。日本には海洋国家意識が濃いが、韓国ではこれが薄く台湾海峡への関心の薄さもそれに比例する。

 ただ、米国との同盟が邪魔になり始めたからと言って、韓国人は中国に全面的に身を寄せる決意もつかない。

 韓国の知識人に「米中間でどう立ち振舞うのか」と聞いても、明確な答えが返って来ることはまずない。一番多い答えが「今から考えてもしようがない」だ。日本語に直訳するとこうなるのだが、意訳すれば「米中対立が顕在化した時は、出たとこ勝負するさ」ということだろう。

 

大統領選が合意形成の場?

 さすがに一部の韓国人は迷走の度を深める外交や、その底にある国家の位置取りに関する合意の不在に大きな懸念を持ち始めた。「いくらなんでも国の将来がかかる外交で『出たとこ勝負』では危ない」と思い始めたのだろう。

 年末の大統領選挙戦を国民的な合意形成の場にできないかと期待する知識人もいる。が、そうなるかは分からない。「米国との関係維持」を訴えるだけで候補者は「親米」のレッテルを貼られ大いに不利になると考えられているからだ。「外交」を真正面から、論理的に議論できる雰囲気は韓国にはまだない。